ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話

橋元 宏平

文字の大きさ
79 / 129

第79話 雷恐怖症

しおりを挟む
 チリチリになってしまった毛は、冬毛に生え替わるまで待つしかない。
 毛は良いとして、ひげが短くなっちゃったのは困ったなぁ。

 猫の髭は毛と同じで、半年に1回くらいの周期しゅうきで生え替わる。
 猫の髭は神経しんけいつながっていて、周りの情報を集めるセンサーのような役割やくわりをしている。

 猫の視力しりょくは0.1~0.3しかないから、髭で視力をおぎなっている。
 耳では聞き取れないかすかな音の振動しんどうも、髭で感じ取れる。
 髭があるおかげで、猫は安全に動き回ることが出来るんだ。

 感情かんじょうによっても、髭は動くんだよ。
 普通の時の髭は、下にれている。
 怒っている時は、横になる。
 嬉しい時は、前に向かってピンと立つ。

 髭がなくなったり切ったりすると、強いストレスを感じて病気になっちゃうことがあるんだ。
 猫にとって髭は、物凄ものすごく大切な物なんだ。
 だから、猫の髭は引っ張って抜いたり切ったりしちゃ絶対ダメ。
 ちなみに自然に抜け落ちた髭は、お守りとして取っておくと良いことがあるらしいよ。

 ぼくの髭も、早く生え替わると良いなぁ。
 火を使う時は毛や髭が燃えてしまわないように、気を付けないといけないな。 
 それに夏の暑い時に、余計に暑くなる火は使いたくない。
 次に火を使うのは、寒くなってからかな。

 🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾

 ぼくたちは、アグチ先生の集落しゅうらくの猫たちのお世話をした。
 3日もすれば、サルモネラ腸炎ちょうえんで苦しむ猫はいなくなった。
 病気でかなり体力を消耗しょうもうしているから、あとは安静あんせいにするだけだ。
 ぼくたちも看病疲かんびょうづかれをいやす為に、しばらく集落でお世話になることにした。

 ゆっくり過ごして疲れが取れたところで、集落から旅立つことにした。
 旅立ちの日、集落の猫たち全員がお見送りに来てくれた。
 おさが、にっこり笑って握手あくしゅを求めてくる。

「シロちゃん、たくさんお世話になったナァ。ありがとうナァ」
「これ、あたしが作った干しキノコにゃ~。良かったら、お土産みやげに持って行ってにゃ~」

 やさしく微笑ほほえむアグチ先生が、植物のつるんで作ったかごをくれた。
 籠の中には、たくさんの干しキノコが入っていた。
 ぼくはありがたく、干しキノコの詰め合わせを受け取った。

「こちらこそ、お世話になりましたミャ。アグチ先生、干しキノコを下さって、ありがとうございますミャ。おふたりも集落の皆さんも、どうかお元気でミャ」
「シロちゃんも、元気でナァ」
「シロちゃん、本当にありがとうにゃ~。さようならにゃ~」

 ぼくたちは猫たちに見送られて、アグチ先生の集落を後にした。

 🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾

 集落を出ると、グレイさんがしっぽをブンブン振りながらおすわりをして待っていた。

『シロちゃん、待っていたぞ。また一緒に、旅が出来るんだな。嬉しいぞ』
「行こうミャ」

 グレイさんは、ぼくが抱えている籠を見て首をかしげる。

『シロちゃん、それはなんだ?』
「これは、アグチ先生がくれた干しキノコミャ」
『キノコ? あの時、シロちゃんがくれた美味おいしいキノコか!』

 グレイさんは焼きキノコの味を思い出したのか、舌なめずりをする。

「これは干しキノコだから、食べられないミャ」 
『なんだ、食べられないキノコなのか……』

 食べられないと聞いて、グレイさんは分かりやすくガッカリした。
 色んなキノコが入っているけど、何があるんだろう?
 教えて、『走査そうさ

対象たいしょう椎茸しいたけ占地しめじ舞茸まいたけ榎茸えのきたけ滑子なめこ木耳きくらげ

 どれも人間だった時から知っている、食用キノコばかりだ。
 意外いがいに思うかもしれないけど、実は猫はキノコが好きなんだよ。
 猫も、キノコの「旨味うまみ」を感じることが出来る動物だから。
 個体差こたいさがあるから、キノコがきらいな猫もいるけど。

 猫はキノコをたくさん食べると、消化不良しょうかふりょうを起こす。
 猫にキノコをあたえる時は柔らかくなるまででて、細かくきざんだものを少しだけ与えてね。

 アグチ先生の集落から旅立ったぼくたちは、イチモツの集落へ帰ることにした。
 なんで急に、イチモツの集落へ帰ることになったのかというと。
 ぼくが無性むしょうに、イチモツの集落がこいしくなったから。

 ぼくが「イチモツの集落へ帰りたい」と言ったら、
 お父さんとお母さんは「私たちも帰りたいと思っていた」とで受け入れてくれた。
 グレイさんも「オレとシロちゃんは離れられない運命だ」と、うなづいてくれた。
 3匹には、いつもぼくのワガママに付き合わせてしまって申し訳なく思う。

 イチモツの集落へ帰りたくなった理由は、いくつかある。
 一番大きな理由は、Argentavisアルゲンタヴィス(巨大なたか)に襲われたこと。
「もう死ぬ!」と思ったら、イチモツの集落の猫たちに会いたくなった。

 それからここ最近、ふたつの集落で新しい発見があった。
 アオキ先生からは、ハーブティーを教えてもらった。
 アグチ先生からは、干しキノコを教えてもらった。
 まだまだ学ぶべきことがたくさんあると、あらためて気付かされた。

 ハーブもキノコも、お日様に干すとビタミンやミネラルが増える。
 紫外線しがいせん殺菌さっきんされると、保存ほぞんくようになる。
 ハーブティーも干しキノコも、作るのにめちゃくちゃ時間が掛かるんだけどね。

 お日様に干して、乾燥させるのに数日。
 水にひたして戻すのに、数時間。
 干しキノコは水で戻したあと、焼かないと食べられない。

 手間暇掛てまひまかかる干しキノコは、旅の間は食べられない。
 干しキノコは、イチモツの集落へのお土産にするしかなかった。
 イチモツの集落へ帰ったら、茶トラ先生にもハーブティーや干しキノコの作り方を教えたい。

 だけどぼくはこれからも今まで通り、生の薬草を使い続けると思う。
 やっぱり、薬草が一番手軽に使えるんだよね。
 ケガも病気も、待ってくれない。
 症状しょうじょうによっては、自然治癒する勝手に治るものもあるけど。
 どんなケガも病気も早期発見そうきはっけん早期治療そうきちりょうが、もっと重要じゅうようなんだ。

 🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾

 そんなこんなで、イチモツの集落へ向かって歩いていると。
 空がだんだんと黒い雲におおわれていき、ゴロゴロと低い音が鳴り始めた。
 マズい、かみなりだ!
 きっともうすぐ、激しい雨もり始めるはず。
 せっかく、アグチ先生からもらった干しキノコがれてしまう。

「みんな! 雷と雨がしのげる場所を探してミャっ!」
『よしっ、オレに任せろ! お父さんとお母さんは、オレについて来てくれっ!』

 グレイさんはぼくの首根くびねっこをくわえて、どこかへ向かって走り出した。
 周囲のにおいをぐと、雨の匂いが近付いているのを感じた。
 ゴロゴロと、雷が鳴り続けている。
 まだ落雷はしていないけど、黒い雲の中が時々白い光をはなっている。

 雷が近付いてくると、なんだかとても胸騒むなさわぎがする。
 どうしてこんなに、不安と恐怖を感じるんだろう。
 早くどこか安全な場所に避難ひなんしなければと、気ばかりがあせる。

 まもなく、ぽつりぽつりと、雨が降り始めた。
 干しキノコの籠が少しでもれないように、ぎゅっと胸に抱える。
 ぼくの首根っこを咥えたグレイさんは、丘の上まで走ってきた。
 グレイさんはキョロキョロとあたりを見回した後、ぼくを地面に下ろす。

『シロちゃん、すぐにオレたちの愛の巣穴すあなるからちょっと待っててくれ』

 ニッコリと笑ったグレイさんは、丘に横穴よこあなを掘り始めた。
 雨が降っているから、少しでも早い方が良い。
 本格的に雷が鳴り出したら、危険だ。

「ぼくも手伝うミャ!」
『ありがとう。では、ふたりの共同作業きょうどうさぎょうで、オレたちの愛のを作ろうっ!』
「シロちゃん、巣穴を掘るニャー?」
「私たちも、手伝うニャ」

 ぼくとグレイさんが巣穴を掘っていると、お父さんとお母さんも手伝ってくれた。
 4匹で急いで掘って、やっと4匹入れる巣穴が出来た。

「早く入るミャ!」

 ぼくたちは出来たばかりの巣穴に入り、身を寄せ合う。
 しばらくすると雨が強くなり、雷雲かみなりぐもも近付いてきたのかゴロゴロという音が大きくなってきた。
 そしてついに「ガラガラドカーンッ!」という爆発音ばくはつおんのような恐ろしい音が、あたりにひびわたった。

 出来るだけ雷の音を聞きたくなくて、グレイさんにしがみつく。
 お父さんとお母さんも両前足で耳をふさいで、グレイさんの下に隠れた。
 グレイさんも怖いらしく、せの状態でぼくをぎゅっと抱き締めている。

 犬猫は耳が良いから、大きな音が苦手。
 急に、ピカッと光るのも怖い。
 雷が落ちた時の衝撃しょうげきや、地面と空気の振動しんどうも怖い。

 雷が鳴るとパニックになる、「雷恐怖症かみなりきょうふしょう」の犬猫もいる。
 恐怖によるストレスで、攻撃的になったり、ごはんが食べられなくなったり、おなかをゴロゴロ壊してしまピーちゃんになったり、過呼吸かこきゅうになったりすることがある。

 ぼくは人間だった頃から雷が苦手だったし、今も苦手。
 たまに「雷大好き♡」と言う人がいるけど、信じられない。
 なんで、あんな恐ろしいものが好きなんだ?

『シロちゃん、怖いか? オレも怖いぞ。でも、側にいるから大丈夫だ』

 おびえるぼくを、グレイさんがめてなぐさめてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&
ファンタジー
その日、魔法学園女子寮に新しい寮母さんが就任しました、彼女は二人の養女を連れており、学園講師と共に女子寮を訪れます、その日からかしましい新たな女子寮の日常が紡がれ始めました。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

スケルトンなボクは君にテイムされたい!

うなぎ358
ファンタジー
~もふもふじゃなくても可愛いと言ってくれた君をボクは守ると決めた~ 七十七階層あるダンジョンの最下層。ここには猫スケルトンのニャーと、ドラゴンスケルトンの爺ちゃんが二人だけで住んでいる。 ニャーは人間と地上に興味深々で、いつも爺ちゃんに外の世界の話をせがんだ。 そんなある日、いつかダンジョンの外に行ってみたいと言っていたニャーの願いを、爺ちゃんは叶えることにした。 ついに外の世界へ飛び出したニャーは盲目の少女サアヤと出会う。 毎週金曜日お昼ごろ更新。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件

fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。 実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。 追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。 そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。 これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。

処理中です...