ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話

橋元 宏平

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第99話 ブレンドハーブティー

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 鍋代わりの木の皮って、どんな木が良いんだろう?
 木から剥がして使うのかな?
 でも、上手く剥がせそうにない。

 う~ん、木の皮を使うのは難しいから考え方を改めよう。
 熱が伝わりやすくて燃えにくい素材そざいなら、大きな葉っぱは使える?

『生の葉は水分が多くふくまれ、燃焼ねんしょうしにくい素材そざいの為、代用可能だいようかのう

 だったら、大きな葉っぱで鍋を作ろう。
 この季節、葉っぱだったらどこでも生えている。
 軽くて使いやすいし、使い捨て出来る。
 緑色の大きな葉っぱを川で洗い、鍋の形にして水をんだ。

 続いて、イチョウ茶の茶葉作り。
 イチョウの葉っぱを採って、川で綺麗きれいに洗う。
 枯れ葉や枯れ木を集めて、弓ぎり式で火を起こす。
 火の周りに石をんで、石のかまどを作る。

 かまどの上に水を入れた鍋を置いて、お湯をかす。
 かまどの周りにイチョウの葉を広げて置き、火の熱で乾燥させる。
 イチョウの葉が乾いたら、手でんで細かくする。
 お湯が沸いたら鍋を火から下ろし、イチョウの茶葉を入れる。
 大きな葉っぱで鍋にふたをして、めるまで待てばイチョウ茶の完成だ。

 味見あじみしてみると、枯れ葉みたいなにおいがして苦い。
 なんだか漢方薬かんぽうやくみたいな味で、全然美味おいしくない。
 グレイさん飲んでもらおうと思ったら、かなり水で薄めないと無理だな。
 他の茶葉ちゃばを混ぜて、ブレンドハーブティーにしたら美味しくなるかも。
 とりあえず、いろいろためしてみよう。

 イチョウ茶を作ってみて、いろんなことが分かった。
 今までハーブティーは時間が掛かるから、不便だと思っていたけど。
 火で乾燥させれば、すぐに茶葉が出来る。
 水出しだと何時間も掛かるけど、お湯出しならすぐ飲める。

 あれこれためしてみないと分からないことって、たくさんある。
 新しいことに挑戦して、いろいろ作ることはとても楽しい。
 成功したらうれしいし、失敗したら失敗したで「次はこうしてみよう」と工夫することも面白い。
 1回で成功した時より、何度も失敗してから成功した時の方が喜びは大きい。

走査そうさ』によると、さっき作ったイチョウ茶は失敗作だったらしい。
 有害物質ゆうがいぶっしつのギンコールさんがたくさん入っているから、飲んじゃダメなんだって。
 そういうことは、飲む前に言ってよ。
 味見で、ちょっと飲んじゃったじゃん。
 グレイさんに、失敗作を飲ませる訳にはいかない。
走査そうさ』が教えてくれた通りに作ったのに、何がダメだったんだろう?

 そういえば、おばあちゃんが「お茶は茶葉によってれ方が違う」と言っていた。
 例えば、紅茶だったら100℃の熱湯をそそぐ。
 緑茶は1度沸騰ふっとうさせたお湯を、70℃くらいまで冷ましてから注ぐ。

 蓋をして、らす時間も重要らしい。
 紅茶は3分くらい蒸らす必要があるけど、緑茶は30秒くらいで良いんだって。
 茶葉の量が多すぎたり蒸らしすぎたりすると、しぶくなってしまうそうだ。

 どんなに良いお茶だって、淹れ方を間違えたら美味しくなくなる。
 ポイントは、温度、量、時間。
 う~む、お茶の世界は奥が深い。

 失敗した原因は、ぼくの作り方が間違っていたんだ。
 お湯の温度も茶葉とお湯の量も蒸らし時間も、全部適当てきとうすぎた。
 正しい淹れ方を教えて、『走査そうさ

『イチョウ茶の淹れ方:①水を100℃まで沸騰させる』

『②湯量ゆりょう120ccに対し、茶葉を2g入れる』

『③蓋をして3分ほど蒸らした後、湯飲ゆのみに注ぐ』

注釈ちゅうしゃく:蒸らし時間が3分程度であれば、有害物質ギンコール酸はほとんど溶け出ない』

 うん、やっぱりそうだ。
 お湯が冷めるまで茶葉を入れっぱなしにしていたから、有害物質がたくさん出ちゃったんだ。 
 次こそは、美味しく淹れられるように頑張がんばるぞ。

走査そうさ』の指示しじしたがって、正しい淹れ方でイチョウ茶を淹れ直す。
 茶葉の量と湯量と蒸らし時間は、『走査そうさ』がはかってくれた。

 薄茶色うすちゃいろのお茶が出来たので、もう一度味見してみる。
 正しく淹れても枯れ草臭いし、美味しくもない。
 失敗作とくらべると飲みやすくなったってくらいで、飲みたいと思う味じゃない。
 イチョウ茶はもともと、こんな味なのかもしれない。

 臭いや味をごまかせる、香りの良いハーブを混ぜた方がよさそう。
 何か良いハーブはないかな? 『走査そうさ

対象たいしょう:シソ科イヌハッカ属イヌハッカ』

 なるほど、イヌハッカならいいかも。
 イヌハッカは、猫がぐとゴロニャンになっちゃう猫が大好きな草。
「キャットミント」や「西洋マタタビ」とも呼ばれる。

 抗菌作用こうきんさようこうウィルス作用、鎮静作用リラックス解熱熱さまし、不眠症、風邪などにも効果がある優秀な薬草でもあるんだよ。
 もちろん、犬も食べられる。

 以前、アオキ先生が作った水出しハーブティーを飲んだことがある。
 嗅いでみると、レモンみたいなさわやかな香りがする。
 お湯で淹れる時は、どうすればいいの?

『フレッシュハーブティーの淹れ方:①ハーブを水で洗う』

『②水を100℃まで沸騰させる』

『③湯量200ccに対し、ハーブを9g入れる』

『④蓋をして3分ほど蒸らした後、湯飲みに注ぐ』

 フレッシュハーブティーって何?

みたての新鮮なハーブを、湯に入れるだけで出来るハーブティー』

 乾燥させないで、生のまま使うってこと?
 ハーブティーは、ハーブを乾燥させないといけないと思っていたんだけど。
 生のまま使うことは、考え付かなかったな。

 淹れ方は、イチョウ茶とほとんど同じだね。
 お湯とハーブの量が、違うくらいか。

 試しに、イヌハッカのフレッシュハーブティーを淹れてみよう。
 教えてもらった通りに、沸騰させたお湯の中にイヌハッカを入れる。
 途端とたんに、イヌハッカの良い匂いが広がった。
 イヌハッカの匂いにられて、お父さんとお母さんがって来てゴロニャンになる。

「ふにゃあ~ん、とっても良い匂いニャー」
「シロちゃん、何を作っているニャ?」
「イヌハッカのお茶ミャ。出来たら、お父さんとお母さんも飲んでミャ」
「イヌハッカのお茶ニャー?」
「ぜひとも飲んでみたいニャ」

 ふたりとも興味津々きょうみしんしんで、待ちきれない様子だ。
 そこへ、グレイさんも不思議そうに首をかしげながら近付いて来る。
 花粉症でくしゃみと鼻水と目のかゆみが止まらなくて、つらそうな顔をしている。

『シロちゃん、さっきからずっと、何をしているんだ?』 
「グレイさんの病気を治す為に、お薬を作っているミャ。ちょっと待っててミャ」
『オレの為に、お薬を作ってくれていたのか! ありがとうっ!』

 グレイさんはうれしそうに笑って、ぼくをギュッと抱き締めた。
 それと同時に、大きなくしゃみをした。
 グレイさん、きちゃない。

 何はともあれ、イヌハッカのフレッシュハーブティーが出来た。
 透明とうめい黄緑色きみどりのお茶を、冷まして味見してみる。
 レモンみたいな匂いがして、ミントのスッキリとした味わい。
 癖もなくて、さっぱりと飲みやすくて美味しい。
 お父さんとお母さんは花粉症じゃないから、このまま飲ませよう。

 グレイさんの分だけイチョウ茶を混ぜてみようと思うけど、どのくらい入れたら良いかな?
 試しに1対1で混ぜてみて、もう一度味見。
 イヌハッカの匂いが強いから、イチョウ茶の臭さがやわらいだ感じがする。
 ミント味でイチョウ茶の癖がごまかされて、飲みやすくなった。

 だいぶマシになったけど、まだイチョウ茶の癖が鼻に付くかな?
 イヌハッカ茶2に対し、イチョウ茶1の割合わりあいにしてみる。
 うん、これなら良さそう。

 お父さんとお母さんには、イヌハッカのフレッシュハーブティー。
 グレイさんだけ、イヌハッカとイチョウのブレンドハーブティー。
 それぞれ、2枚のお皿にぎ分ける。

「お茶が出来たミャ」
「待ってましたニャー!」
「いただきますニャ」
『ありがとう。さっそくいただこう』

 お父さんとお母さんは、「うみゃいうみゃい」と大喜びで飲んでいる。
 一方のグレイさんは、なんだか微妙びみょうな顔をしている。
 以前、ハーブティーを作った時は美味しそうに飲んでくれたのに。
 やっぱり、イチョウ茶は美味しくなかったのかな?

 オオカミの嗅覚きゅうかくは、人間よりも100万倍くらい良いと言われている。
 ところが、味覚みかくは人間の1/5くらい感じないらしい。
 特に、甘味あまみを一番強く感じるそうだ。
 逆に、苦味にがみは感じにくいんだって。
 だから犬科の動物は、甘い物が好き。

 トマークトゥスのグレイさんは猫のぼくよりも嗅覚がすぐれているから、イチョウの臭いを強く感じたのかもしれない。

「グレイさん、美味しくなかったミャ?」
『いや、美味しい美味しくない以前の問題だ。鼻づまりで、味がほとんど分からん。せっかくシロちゃんが作ってくれたのに、すまない……』

 グレイさんは耳としっぽをらして、しょぼんとしている。
 あ、そうか。
 花粉症で、嗅覚と味覚がにぶっているのか。
 だったらブレンドティーにしなくても、イチョウ茶だけで良かったのかも。

「とにかく、お薬だからちゃんと飲んでミャ。飲んだら少しは、少しは病気はマシになると思うミャ」
『もちろん、愛するシロちゃんがオレの為に作ってくれたお薬だ。ちゃんと全部飲むよ、ありがとう』

 グレイさんはしょんぼりしながらも、ブレンドティーを飲んでくれた。

―――――――――――――――――――――――――――
【イチョウ茶は、自分で作れるの?】
 作ること自体は、簡単。
 ただし、手作りのイチョウ茶にはginkgolicギンコール acidと呼ばれる有害物質が多く含まれるから、とっても危険。

 市販のイチョウ茶は、ギンコール酸の量が少ないので安全。
 市販品でも、アレルギー体質の人は飲まない方が良い。
 はちみつやレモンを加えると、苦味や臭いが和らいで飲みやすくなる。
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