ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話

橋元 宏平

文字の大きさ
113 / 129

第113話 戦力外通知

しおりを挟む
 そんなこんなで、サバシロお兄さんに薬草の見分みわけ方と薬の作り方を教えることになった。
 このあたりには白詰草シロツメクサ紫詰草ムラサキツメクサ酢漿草カタバミがたくさん生えているので、手始てはじめにこの3つから教えよう。

「これがシロツメクサで、それがムラサキツメクサで、あれがカタバミミャ。シロツメクサとムラサキツメクサは食べられるけど、カタバミは食べられないミャ」
「う~ん、どれも同じに見えるにゃ~……」

 この3つは一見いっけん同じに見えるけど、良く見ると全然違う。
 シロツメクサの葉は丸くて、葉の真ん中には白い横線が1本入っている。
 ムラサキツメクサの葉はちょっととがった楕円形だえんけいで、白い▽の模様もようが入っている。
 カタバミの葉は♡型をしていて、白い線は入っていない。

 一番見分みわけやすいのは、花かな。
 シロツメクサとムラサキツメクサの開花時季かいかじきは、5月~8月。
 シロツメクサは、猫のつめみたいなちっちゃい花弁はなびらが集まってボールみたいにまんまるくなった白い花が咲く。
 ムラサキツメクサは、シロツメクサと同じ形で色が違うだけ。
 カタバミは3月~11月の間、5枚の花弁の黄色い花が咲く。
 特徴とくちょうさえおぼえれば、簡単に見分みわけられるようになるよ。

 カタバミには、水溶性すいようせいシュウ酸塩さんえんふくまれる。 
 同じ水溶性シュウ酸塩が含まれる有名な野菜は、ほうれんそう。
 人間は食べられるけど、猫には毒。
 人間も食べすぎるとおなかを壊したり、尿路結石症にょうろけっせきしょうになったりしちゃうから要注意ようちゅうい

 シロツメクサは猫も食べられる薬草で、傷薬きずぐすり風邪薬かぜぐすりになる。

 ムラサキツメクサは、レッドクローバーハーブティーとして有名。
 肌荒はだあれ、かゆめなどの抗炎症作用こうえんしょうさようがある。
 せきのどの痛みなど、呼吸器系こきゅうきけい感染症かんせんしょうにも効果がある。
 女性ホルモンと似た働きをするisoflavoneイソフラボンという物質が含まれるので、女性特有の病気に効果がある。
 もちろん、花も食べられる。

 さっそく、シロツメクサとムラサキツメクサの葉でフレッシュハーブティーをれてみた。
 草原にいるようなさわやかな香りで、とても美味しい。
 集落しゅうらくの猫たちにも、ハーブティーを飲ませた。

 呼吸器系こきゅうきけい感染症かんせんしょうである、猫ウイルス性鼻気管炎せいびきかんえんにも効く。
 ハーブティーはカフェインが入っていないし、リラックス効果もあるから良く眠れるよ。
 ハーブティーを毎日飲むと、健康けんこう維持いじされる。
 美味しくて元気になれるハーブティーって、最高だよね。

 🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾

 サバシロお兄さんはいくら教えても、ちっとも薬草をおぼえられなかった。
 人間でも、薬草と毒草を見分けるのはとても難しいからね。
 素人しろうと判断で山菜採さんさいとりをして食中毒になった事件は、ニュースで何度も見たことがある。

 猫の記憶力は、人間よりもすぐれている。
 しかし、興味のないことは覚える気がないしすぐ忘れてしまう。
 サバシロお兄さんは、そもそも覚える気がない。
 覚える気がないものは、仕方がないとあきらめよう。

 他にもお手伝いが必要なことはたくさんあるから、そっちで頑張ってくれればいい。
 薬作りは、薬草を石で叩いてつぶすだけだから誰でも出来る。
 火を起こしてかまどを作ったり、水汲みずくみをしたり、病気の猫たちに薬をくばったりするお手伝いもある。

 誰だって、得意なことや苦手なことがあるのは当たり前。
 サバシロお兄さんにだってきっと、何か得意なことがあるはずなんだ。
 やってみないと分からないし、やってみたら楽しいと思うかもしれない。
 まずはいろんなことをためしてもらって、サバシロお兄さんの得意なことを見つけるところから始めよう。

 🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾

 結論けつろんから言うと、サバシロお兄さんは何も出来なかった。
 サバシロお兄さんは、とっても面倒めんどうくさがり屋さんだったんだ。 

 猫は基本的に、気分屋きぶんやさんで面倒くさがり屋さん。
 猫が面倒くさがり屋さんなのは、体力を温存おんぞんする生存本能せいぞんほんのうといわれている。
 体力の限界まで働き続けてしまうぼくの方が、猫らしくないんだ。

 猫が気分が乗らない時は、明らかに面倒くさそうな態度たいどを取る。
 しっぽで返事をしたり、耳だけこっちに向けたり、あくびをしたり、寝ころんだまま無視したりする。
 面倒くさがっている猫は、放っておくに限る。
 無理にかまおうとすると、ウザがられて嫌われちゃうぞ。

 働かないサバシロお兄さんを見て、お父さんとお母さんは怒っている。

「サバシロくんは、本当に何もしないニャーッ!」
「サバシロくんは、ここに置いて行きましょうニャッ!」

 ぼくもこれ以上、サバシロお兄さんを旅へ連れていくことは出来ないと思っている。
 だって、サバシロお兄さんがいるとみんなギクシャクしてしまうから。
 お父さんとお母さんはピリピリしているし、グレイさんにも気をつかわせてしまう。
 そんな状況だから、ぼくも気を遣いすぎて気疲きづかれしている。
 全員が、ストレスをめている状況は良くない。

 サバシロお兄さんがこの集落に馴染なじめそうだったら、申し訳ないけどここに置いて行こうと思う。
 とはいえ、ぼくが勝手に決めて良い問題ではない。
 しっかり話し合って、サバシロお兄さんがどうしたいか確認しないと。

「サバシロお兄さん、大切なお話しがありますミャ」

 寝ころんでいるサバシロお兄さんに声を掛けると、耳がこちらを向いてしっぽの先がパタパタと動いた。
 これは「はいはい、ちゃんと聞こえていますよ」という、猫なりの返事。
 聞こえているなら、話を続けよう。

「サバシロお兄さんを、この集落に置いて行きますミャ」
「にゃんだってっ? このおれを置いて行くって、どういうことにゃっ?」

 サバシロお兄さんはいきおいよく起き上がり、ぼくにめ寄った。 
 動揺どうようしているサバシロお兄さんに、確認する。

「サバシロお兄さんは、この集落は好きですミャ?」
「そうだにゃ、ここの猫たちは優しくて居心地いごこちがいいにゃ」
「でしたら、このままここにめばいいですミャ。無理して、ぼくたちについて来る必要はないですミャ。ぼくたちと旅をするより、ずっと安全ですミャ」
「それもそうだにゃ。本当は、旅なんてしたくなかったにゃ。あの集落さえ出られれば、なんでも良かったにゃ。トマークトゥスのグレイも、お前も大嫌いにゃ。おれは、ここに棲むにゃ」

 サバシロお兄さんは開き直ったように、本音ほんねをぶちまけた。
 面倒くさいって態度たいどに出ていたから、そんなことだろうと思っていた。
 分かっていても、めんと向かってハッキリ「大嫌い」と言われるととても悲しい。

「そうですかミャ……。短い間ですが、今までありがとうございましたミャ」

 悲しみをこらえながらお別れを言うと、サバシロお兄さんはまた面倒くさそうにしっぽだけで返事をした。

🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾

「大嫌い」と言われた日から、サバシロお兄さんとは話していない。
 サバシロお兄さんにはもう、何も期待しない。
 サバシロお兄さんは無視して、猫ウイルス性鼻気管炎にかかった猫たちの看病かんびょうを続けた。

 2週間くらいつ頃には、猫たちはすっかり快復かいふくした。
 元気になった猫たちに、薬草の見分け方とハーブティーの作り方を教えた。
 やることを終えたぼくは、集落のおさのフジにお別れの挨拶あいさつをする。

「ぼくとお父さんとお母さんは、そろそろ旅立ちますミャ。今までありがとうございましたミャ」
「いえいえ、こちらこそ大変お世話になりまして、ありがとうございましたニィ~」
「サバシロお兄さんはこの集落が気に入ったらしいので、残るそうですミャ」
「それは、とってもありがたいですニィ~。お医者さんがいて下されば、この集落も安心ですニィ~」

 フジは嬉しそうに、ニコニコと笑った。
 サバシロお兄さんは、お医者さんじゃない。
 そのうちバレるだろうけど、ぼくは知らないからね。

「ところで、この集落の名前はなんていうんですミャ?」
「カタバミですニィ~」

 春から秋まで、次々と黄色い花を咲かせ続けるカタバミ。
 これから、カタバミを見るたびにサバシロお兄さんを思い出すだろう。
 猫たちに見送られて、カタバミの集落を旅立つ。

 サバシロお兄さんはぼくをじ~っと見つめながら、しっぽを力強く振って地面に叩き付けていた。
 猫がしっぽを地面に叩き付けて時は、イライラしている。
 大嫌いなぼくに、早く立ち去って欲しいんだ。

 言われなくても、もう行くよ。
 さようなら、サバシロお兄さん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&
ファンタジー
その日、魔法学園女子寮に新しい寮母さんが就任しました、彼女は二人の養女を連れており、学園講師と共に女子寮を訪れます、その日からかしましい新たな女子寮の日常が紡がれ始めました。

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

スケルトンなボクは君にテイムされたい!

うなぎ358
ファンタジー
~もふもふじゃなくても可愛いと言ってくれた君をボクは守ると決めた~ 七十七階層あるダンジョンの最下層。ここには猫スケルトンのニャーと、ドラゴンスケルトンの爺ちゃんが二人だけで住んでいる。 ニャーは人間と地上に興味深々で、いつも爺ちゃんに外の世界の話をせがんだ。 そんなある日、いつかダンジョンの外に行ってみたいと言っていたニャーの願いを、爺ちゃんは叶えることにした。 ついに外の世界へ飛び出したニャーは盲目の少女サアヤと出会う。 毎週金曜日お昼ごろ更新。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...