ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話

橋元 宏平

文字の大きさ
115 / 129

第115話 オリーブは猫のおやつ

しおりを挟む
 それから5日ほど旅を続けると、ふんわりと甘い花の香りがただってきた。
 いでいると心が安らぐ、爽やかなにおい。
 金木犀きんもくせいに似ているけど、あそこまで強くない。
 その匂いをぐと、急にお父さんとお母さんがゴロニャンになってしまった。

「ふにゃぁ~ん、良い匂いニャー……」
「なんだか、とっても気持ちがいいニャ……」

 ゴロニャンになったふたりを見て、グレイさんが驚いている。

『なんだ? どうしたんだ?』

 これ、何の匂い? 『走査そうさ

対象たいしょう:モクセイ科オリーブ属阿利襪オリーブ

薬効やっこう血圧降下けつあつこうか血糖値低下けっとうちていか、コレステロール降下、殺菌作用さっきんさよう抗酸作用こうさんかさよう抗炎症作用こうえんしょうさよう老化防止アンチエイジングこうガン作用、美肌効果、便秘、心臓病、利尿りにょう骨粗鬆症こつそしょうしょう、抗バクテリア作用、抗ウイルス作用、毛球症もうきゅうしょう

概要がいよう:マタタビと同じ効果がある。地中海地方ちちゅうかいちほうでは、オリーブの実は猫のおやつ』

 オリーブにマタタビと同じ効果があるのは、知らなかったな。

「どうやらこの匂いを嗅ぐと、猫はゴロニャンになっちゃうみたいミャ」
『シロちゃんは、ゴロニャンにはならないのか?』
「ぼくはこういうのは効かないから、ゴロニャンにならないミャ」
『なんだ、ならないのか。ゴロニャンになったシロちゃんを、見たかったのに……』

 グレイさんは残念そうに、耳としっぽを下げてションボリした。
 ぼくだってなれるものなら、ゴロニャンになってみたかったよ。
 集落しゅうらくの前でグレイさんと別れて、匂いを辿たどっていった。

 い緑色の細長い葉っぱがたくさんついた木に、白い小さな花がいっぱい咲いていた。
 オリーブの木の周りには、たくさんの猫たちがゴロニャンになっていた。
 猫たちはオリーブの木を舐めたり、オリーブの葉っぱを食べたりしている。
 みんなうっとりとした表情でゴロニャンしていて、とても幸せそうだ。

 オリーブはマタタビの効果もあるし、天然の抗生物質だから猫の体にも良い。
 幸せいっぱい、猫いっぱい。
 まさにここは、ねこねこ天国パラダイスじゃないか。 
 そう思って猫たちをながめていると、『走査そうさ』が発動した。   

対象たいしょう食肉目しょくにくもくネコ科ネコ属リビアヤマネコ』

『病名:肥満症ひまんしょう、および下痢』

『原因:オリーブの過食食べすぎ

処置しょち食事療法しょくじりょうほう運動療法うんどうりょうほう行動療法こうどうりょうほう薬物療法やくぶつりょうほう外科療法げかりょうほう水分補給すいぶんほきゅう

薬物療法やくぶつりょうほう肥満治療薬ひまんちりょうやく食欲抑制剤しょくよくよくせいざい、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬じゅようたいさどうやく防風通聖散ぼうふうつうしょうさんなどの投与とうよ止瀉薬げりどめ投与飲む

 確かにオリーブの木の周りにいる猫は、デブニャンが多い。
 たぶん、オリーブの実の食べすぎで太っちゃったんだ。
 オリーブの実はほとんど脂質あぶらだから、カロリーが高い。
 いくら体に良いからって、食べすぎは良くない。

 でも、猫に「体に悪いから食べちゃダメッ!」って言ったって分からないよね。
 飼い猫だったら、ごはんをダイエットフードに替えるとか、たくさん遊んで運動させるとかいろいろやりようがあるけど。
 野生の猫は、そうもいかないからなぁ。

 肥満治療薬って、どんなもの?

膵臓すいぞうβベータ細胞上に存在するGLP-1受容体じゅようたいを選択的に結合けつごうし、ATP(アデノシン三リン酸)からcAMP(環状アデノシン一リン酸)の産生さんせい促進そくしんする薬』

『あるいは、増加したcAMPをかいしてinsulinインスリン分泌ぶんぴつうながすとともに、glucagonグルカゴン分泌ぶんぴ抑制よくせいする薬』

『これらを総称そうしょうして、肥満治療薬と呼ばれる』

 いや、全然分からなかったんだけど。
 もっと、分かりやすく説明してもらえる?

血糖値けっとうちが上がるのをおさえる』

『または、胃に入った食べ物を腸に送る時間を遅らせる』

『あるいは、脳の満腹中枢まんぷくちゅうすうに働きかけて、過食食べすぎおさえるなどの効果がある』

 そんな便利な薬があるなんて、現代医療って本当にスゴい。
 しかし、そんなものは手に入らないのである。

 防風通聖散は、名前からして漢方薬かんぽうやくだよね?
 漢方薬は、薬草やキノコなどを乾燥させて混ぜ合わせた薬のはず。
 薬草やキノコの種類が分かれば、漢方薬が作れるかもしれない。 

 防風通聖散には、どんな薬草が使われているのか教えて。

『防風通聖散の成分:防風ボウフウ荊芥ケイガイ麻黄マオウ生姜ショウキョウ連翹レンギョウ薄荷ハッカ黄芩オウゴン大黄ダイオウ芒硝ボウショウ石膏セッコウ白朮ビャクジュツ川芎センキュウ当帰トウキ甘草カンゾウ

『これらの成分は体を温め、エネルギー消費を高め、脂肪の分解や燃焼を促進する効果がある』

 ……うん、無理。
「漢方薬を作れるかも」なんて生意気なまいきなことを言ってしまって、すみませんでした。

 見たことも聞いたこともない薬草(?)ばっかりで、とても作れそうにない。
 漢方薬が、こんなに複雑なものだったなんて知らなかった。
 漢方薬剤師さんは、よっぽど頭が良い人しかなれないんだろうな。

 そもそも簡単にせられるなら、誰もダイエットに苦労なんてしない。
 数日で急に痩せたとしたら、間違いなく病気だ。
 肥満治療っていうくらいだから、めちゃくちゃ効くんだろうけど。
 作れないものは、どうしようもない。

 仮に作れたとしても、何ヶ月も飲ませ続けなければならない。
 この集落に、そんなに長い間いるつもりもない。
 それに調合ちょうごうが難しい薬を教えても、猫たちが覚えられるとは思えない。
 何か、別の方法を考えるべきだ。

 そういえば、ダイエット効果のある薬草があったはず。
 猫のダイエットフードに入っている薬草といえば、オオバコ。
 オオバコには、整腸作用せいちょうさよう止瀉作用げりどめ抗炎症作用こうえんしょうさよう、ダイエット効果がある。
 猫草ねこくさとしても食べられるし、ハーブティーにも出来る。

 葉っぱは食べると苦味にがみがあるけど、ハーブティーにすると緑茶のようなさわやかな味がする。
 オオバコは雑草ざっそうだからどこにでもえているし、あたたかい場所なら一年中えている。

 さっそく、オオバコのフレッシュハーブティーを作ろう。
 今日は肌寒はだざむいから、あったかいハーブティーを飲むにはちょうどいい。
 おなかを壊しているぽんぽんぺいんの時は水分補給すいぶんほきゅうが大切だし、おなかもあっためないとね。

 猫たちが大好きなオリーブの葉も一緒に入れて、ブレンドハーブティーにしよう。
走査そうさ』によると、オリーブの花芽はなめを使った花芽茶はなめちゃというお茶もあるらしい。
 花芽というのは花の第1段階で、花芽→つぼみ→花になる。
 今はもう、花が咲いてしまったから無理だけどね。

 フレッシュハーブティーをれていると、匂いにられて猫たちが集まってくる。

「なんだか、とっても良い匂いがするニャオ。それは、なんニャオ?」
「これは、オオバコとオリーブのお茶ですミャ。どうぞ、飲んでみてくださいミャ」

 ハーブティーを差し出すと、猫たちは大喜びで飲み始めた。
 これでおなかも治るしダイエットも出来て、一石二鳥いっせきにちょうだね。
 オリーブには、食べすぎなければ体に良いんだよ。

 オリーブの実も欲しかったけど、今はまだ花の時季じきだ。
 オリーブは、いつになったら実がるの?

『オリーブの実の収穫時期しゅうかくじきは、9月から2月頃』

 じゃあ、秋になったらまた来よう。
 せっかくだから、オリーブの葉っぱをたくさんんでいこう。

 🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾 

  ぼくたちが来た次の日に、オリーブの花はあっという間に散ってしまった。
走査そうさ』によると、オリーブの花の命はとても短いらしい。
 それからぼくたちはオリーブの木がたくさん生えている集落で、しばらくお世話になることなった。

 というのも、お父さんとお母さんがオリーブの木をすっかり気に入ってしまったからだ。
 マタタビもオリーブも、中毒性ちゅうどくせいはないとされているけど。
 ふたりが、ここから離れられなくなっちゃったら困るなぁ。

 とりあえず、この集落の猫たちの健康診断けんこうしんだんおこなった。
 オリーブの葉っぱをよく食べているからか、肥満とおなかを壊しているぽんぽんぺいん以外は健康そのもの。
 やっぱり、オリーブの食べすぎによる肥満が原因なんだよね。

―――――――――――――――――――――――――
【オリーブの葉は食べられるの?】
 猫はオリーブの葉を食べるけど、人間は苦味にがみ渋味しぶみが強くて食べられない。
 人間がオリーブの葉をるなら、ハーブティーやサプリメントに加工されたものを飲むと良い。

漢方薬かんぽうやく民間薬みんかんやくの違いとは?】
 漢方薬は漢方医学かんぽういがくもとづいて、生薬しょうやく産地さんち製法せいほう用法ようほう用量ほうりょうなどが細かく決まっている。
 漢方薬を調合ちょうごうしたり販売したりするには、薬剤師免許が必要。
 民間薬は誰でも作れるし決まりごともないけど、何があっても自己責任。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&
ファンタジー
その日、魔法学園女子寮に新しい寮母さんが就任しました、彼女は二人の養女を連れており、学園講師と共に女子寮を訪れます、その日からかしましい新たな女子寮の日常が紡がれ始めました。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

スケルトンなボクは君にテイムされたい!

うなぎ358
ファンタジー
~もふもふじゃなくても可愛いと言ってくれた君をボクは守ると決めた~ 七十七階層あるダンジョンの最下層。ここには猫スケルトンのニャーと、ドラゴンスケルトンの爺ちゃんが二人だけで住んでいる。 ニャーは人間と地上に興味深々で、いつも爺ちゃんに外の世界の話をせがんだ。 そんなある日、いつかダンジョンの外に行ってみたいと言っていたニャーの願いを、爺ちゃんは叶えることにした。 ついに外の世界へ飛び出したニャーは盲目の少女サアヤと出会う。 毎週金曜日お昼ごろ更新。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件

fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。 実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。 追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。 そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。 これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。

処理中です...