ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

文字の大きさ
9 / 68

第9話 全裸おしくらまんじゅう・イン・ザ・ベッド

しおりを挟む
 風邪を引いた時に見るような、意味の分からん悪夢にさいなまれて、飛び起きた。

「え」

 しかし、現実もまた、地獄じごくだった。
 見た瞬間、全身に鳥肌が立った。
 キングサイズベッドの上には、俺の他に全裸の男達が横たわっている。

「全裸おしくらまんじゅう」の原因は、コイツらか。

 慌てて自分の格好を確認すると、俺だけは服を着ていた。
 ほっとひと息吐いて、薄暗い中、目を凝らして周りを確認する。
 椿つばきと田中は、いないようだ。
 いくらキングサイズとはいえ、デカいヤツら(椿と田中)は入らなかったらしい。

 俺の左隣で足をからませてくるのが、桜庭さくらば
 右隣から俺の腕にしがみついているのが、桔梗ききょう。 
 桔梗を背中から抱き枕にしているのが、たちばな
 川の字には、ひとり多い。

 みんなこの状況を、何かおかしいとだと思わないのか?
 俺の足に、野郎の股間が両側から押し当てられているんだぞ?
 なんで、そんな安らかな顔して寝ていられるんだ?

 まさか、これもミッチェルの趣味なのか?
 毎晩、野郎達と乱交らんこうパーティーだったのか?
 あのご老体ろうたいで、精力有り余ってたのかよ、おい。
 若い男とくんずほぐれつ、夜のぶつかり稽古げいこで、元気百倍か。

 だから、あんなに精力的せいりょくてきだったのか? 
 元気のみなもとは、こんなところにあったのかよ。
 人は見かけによらないとは、よく言ったもんだぜ。
 そんなこと、正直知りたくなかったわ。

 残念ながら、俺はホモじゃない。
 ノンケ(Nonノン=その気がない=ホモじゃない)だ。
 頼むから、ミッチェルお前の趣味を俺に押し付けるのは勘弁かんべんしてくれ。
 全裸執事に挟まれて、眠れぬ夜を過ごした。


「おはようございます、ご主人様。昨晩さくばんは、良くお休みになられましたか?」

 ピロートークのようなシチュエーションで、桜庭は優しく微笑んだ。
 これで俺が女だったら、ときめいたんだろうけどな。
 残念ながらだ、俺は男だ。
 ときめくどころか、背筋に寒気が走った。

 皮肉たっぷりに、言ってやる。

「おかげで、バッチリ悪夢を見せられて、寝不足なんですけど?」
「どうしてでしょう? 気持ち好くお休みになられるように、温めて差し上げたのに!」

 朝からハツラツ元気野郎の橘が、困ったように首を傾げた。
 桔梗が、まだ眠そうに目を擦る。

「おかしいですね。人肌で温めるのが、一番のはずなんですけど……」
「いやいや、ここは雪山じゃないからね! 人肌で温め合う必要はないからっ!」

 俺が全力でツッコむと、三人は真面目な顔をして、口々にうったえる。

「もし、ご主人様がお体を冷やされて、風邪でもお召しになられては大変です」
「ご主人様の体調を管理するのも、ぼくたちの使命です」

 うん、真面目なんだね、君達。
 体調を心配してくれる、その気持ちは嬉しいよ?
 でも、温める方法は他にあるよね?
 暖房とか、湯たんぽとか。

 気遣きづかいが、ななめ上の方向行っちゃってるよ。
 言いたいことは山ほどあるが、真剣そのものな彼らにされて物が言えない。
 顔を引きつらせつつ小さくうなって、俺は彼らに問う。

「うん、あー……えーっと、その、それって、ミッチェルさんの指示で?」
「いえ、私の意思です」

 にっこりと橘に笑顔で返されて、俺はちょっと意外で驚く。

「え? ミッチェルさんに、やらされてたんじゃなくて?」
「ミッチェル様が寒そうにしていらした時、橘さんが『人肌で温めて差しあげてはどうか』と、おっしゃったんですよ」

 にこにこ笑いながら、桔梗が振り向いて橘に視線を送る。
 褒められた橘は、桔梗と顔を見合わせて微笑み合う。

「ご主人様の健康を守ることは、執事として当然のことですっ!」
「いつも橘さんの細やかな心遣こころづかいには、頭が下がります」

 そうかそうか。
「全裸おしくらまんじゅう・イン・ザ・ベッド」は、橘の発案か。
 どうやらこのハツラツ野郎は、天然でもあるらしい。
 見た目と性格は良いのに、残念なヤツだな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

処理中です...