ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

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第29話 クリスマスの喜劇

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 今日は、楽しいクリスマス。
 食堂はクリスマス仕様に、赤と緑の飾り付けがされている。
 銀の蜀台しょくだいが立てられ、小さな炎が揺れている。

 目の前には美味そうな、定番のクリスマスディナーが並んでいる。
 こんがり焼かれて照りが付いた、グリル焼きチキン。
 厚切りのローストビーフ。
 具だくさんなミネストローネスープ。
 色とりどりの温野菜。
 ふわふわパンの盛り合わせ。
 いちごと生クリームでデコレーションされた、王道のクリスマスケーキ。
 どれも美味そうな匂いをただよわせていて、今すぐ喰い付きたいほどだ。

 俺の左手には、シャンパングラスに注がれた、細かな泡が弾ける高級シャンパン。
 弾ける炭酸と程好いアルコール、蜂蜜はちみつのような優しい甘さが喉を通ると、気分も最高。
 全てがクリスマスらしい、楽しい雰囲気を演出している。

「メリークリスマース!」
「クリスマスおめでとうございます、ご主人様っ」

 執事達も楽しそうに、一斉いっせいにクラッカーを鳴らす。
 でもな、執事達の格好がいただけねぇ。
 クリスマスでも全裸なのか、お前ら。

 いや、正しく言えば

 頭には、赤い帽子に白いフワフワがふちどられたサンタ帽。
 足元は、サンタの茶色いブーツ。
 そして、顔に付けられたサンタの白いヒゲ。

 5人の執事が全員、その格好なんだぜ?
 おかしいよね?
 それ、絶対おかしいよね?
 隠すべきところは、顔じゃなくて股間でしょ?
 全員、不快なくらい似合ってないぞ。
 そんな部分コスプレするくらいなら、全裸の方がマシなんだけど。

 特に、椿つばきと田中の似合わなさは、犯罪級だ。
 揃えるんだったら、ちゃんとサンタ服もセットで買って来いよ。
 なんでそんな中途半端なパーツのみ、買って来ちゃったんだよ?

 その格好で、外歩いてみ?
 クリスマスで浮かれたアホと勘違いされて、警察に連行されるぞ。
 そんで翌日、ネットニュースでさらされるんだ。

「クリスマスの喜劇きげき! 露出狂ろしゅつきょうサンタ現るっ!」ってな。

 🎄

 クリスマスの翌朝。
 俺の朝は、全裸執事に挟まれた状態から始まる。
 なんで、毎朝、最悪な気分で目覚めなければならないのか。

「おはようございます、ご主人様」
「おはよう、桜庭さくらば……ってか、足をからめてくるな、足をっ」

 起きて早々、足をジタバタと動かす。
 左隣を陣取じんどっている桜庭は、いつも俺が寝ている間に足を絡めてくるんだ。

「これは、失礼致しました」

 律儀りちぎに謝ってくるけど、コイツ、かたちだけなんだよ。
 本当に反省してたら、二度と足絡めてこないはずだからな。
 ただの寝相ねぞうだとしても、足を絡められるこっちはひたすら気持ち悪い。
 一方、右隣の桔梗ききょうは俺の右腕を枕代わりにしてて、右腕がしびれて重い。
 これも、いつものこととなりつつある。

 しかし、いつもと違うところがひとつあった。
 いつもなら、桔梗を抱き枕にしているたちばなの姿が見えない。

「おはようございます! ご主人様っ!  やや? こんなところにサンタさんから、クリスマスプレゼントが届いていますよ?」

 橘がワザとらしいオーバーアクションで、声を張り上げた。
 見ているこっちが、恥ずかしくなるレベルの棒演技ぼうえんぎ

 ヘタクソか。

 ベッドの近くに立っている橘の横には、クリスマス仕様の包装紙ほうそうしに包まれた箱が置かれていた。

「なんだ? クリスマスプレゼント?」

 俺が起き上がると、横にいた桜庭と桔梗も起き上がる。

「良かったですね、ご主人様。サンタクロースからの、プレゼントですよ」
「ご主人様が、良いことをたくさんなさったから、サンタさんからのご褒美ほうびですよ、きっとっ」

 桜庭と桔梗が嬉しそうに、ニコニコしている。
 お前ら、演技ヘタすぎんか。
 誰が考えたんだ、この茶番劇ちゃばんげき(やりたいことが全部けて見える下手な芝居しばい)。

 はっはぁ~ん、分かったぞ。
 これは「サンタ」と銘打めいうった、執事たちからのプレゼントだな?
 そういうことなら、乗ってやらないこともない。

「へぇ~、大人になっても、良いことしたらサンタさんが来てくれるんだなぁ~っ」

 俺は出来る限り明るい声を出して、プレゼントを手に取る。
 人のこと言えない棒演技だけど、今はこれが精一杯せいいっぱい
 起きて早々、この茶番にノッてやってるだけ、ありがたいと思え。

「これ、俺が開けて良いのかな?」
「「「「もちろんですっ!」」」」

 全裸執事達が声を揃えて、大きく頷いた。
「早く開けて欲しいっ!」と、顔に書いてある。
 可愛いヤツらめ。
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