ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

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第36話 俺に出来ること

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「俺に出来ることは、なんでしょうか?」

 俺は頭を悩ませ、アゴに手を当てて呟いた。
 加藤先生は、俺にも分かるように優しい声で良く分かるように、教えてくれる。

「ひとりで、抱え込まないで下さい。あなたはもっと、人に助けを求めるべきだ」
「そうです! ご主人様には、私がいるではありませんかっ!」

 横から桜庭さくらばが訴えてきた。
 ふたりの優しさが、とても嬉しい。
 そうだよ、俺はひとりじゃない。
 俺はいつでも、自分ひとりでなんでもやろうとしていた。
 助けを求めようとしなかった。
 でも、ひとりで出来ることには限界がある。

 加藤先生と桜庭は、俺よりずっと賢い。
 俺の足りない頭なんかより、きっと良い案を考えてくれるはずだ。
 俺は加藤先生と桜庭を、交互に見て笑う。

「ありがとうございます、加藤先生。それに桜庭も、ありがとう。だったら、手を貸して下さい。俺を助けて下さい」
「この僕に助けを求めて下さるなんて、感激ですっ! きっと、良案りょうあんみ出してみせますっ!」
「期待してるぜ、桜庭」
「はいっ!」

 俺と桜庭のやりとりを華麗にスルーしていた加藤先生が、意味深長な笑みで俺に問い掛ける。

「川崎さん。何故、治安ちあんが悪くなると思われますか?」
「んー、そうですね……やっぱ、『お金がないから』ですか?」

 首を傾げつつ、俺は考え考え答えた。
 加藤先生は、「ふむ」と小さく呟くと、さらに質問を重ねる。

「お金。まぁ、それもありますが。では、何故、お金がないのでしょう?」
「『何故、お金がないか』? う~ん、そうだなぁ……」

 腕組みをして、あーでもないこーでもないと、うなりながら考える。
 金がないのは、どうしてか?
 金は、どうしたら手に入る?
 働いて、賃金ちんぎんをもらえば手に入る。

「そうか! 働いてないから金がないんだっ」

 俺が答えを見つけ出すと、加藤先生が軽くうなづく。 

雇用こようがないと、お金は手に入りませんよね。景気が悪いと、賃金を支払えない。賃金が支払えないと、人もやとえない。それにより雇用が減り、少ない人数で仕事を回さなければならなくなります」
「それじゃ、働いてる人間が可哀想じゃないですか」

 就職活動しゅうしょくかつどうしても、なかなか採用さいようされないって話を良く聞く。
 採用されたかと思えば、社畜しゃちくのように、過剰労働かじゅうろうどうさせられる。
 残業のしすぎで、過労死かろうしやうつ病になったなんてニュースが、報じられている。
 会社に人を雇う金があれば、みんなで仕事を分け合うことが出来るのに。

 やっぱり、金なのか。

「景気が悪いのが、原因ですよね」
「では、景気はどうしたら回復すると、思われますか?」

 質問にぐ質問で、全く出口でぐちと回答が出てこない。
 加藤先生は、本当に回りくどい。
 考えすぎで、ちょっと頭痛がしてきたぞ。

「景気回復させるには……させるには……」

 俺がブツブツ呟きながら考えていると、優しげな声で桜庭が助け舟を出す。

需要じゅよう供給きょうきゅうのバランスが良くなれば、景気は回復しますよ」
「それだっ!」

 それを聞いて、俺はパッと顔を明るくした。
「欲しい」と思わせる商品がなければ、人は物を買わない。
 買ってもらわなければ、会社は金が手に入らない。

「金は天下の回り物」とは、良くいったものだ。
 金はつね循環じゅんかんしていかなければ、景気は回復しない。
 消費者しょうひしゃに「欲しい」と思わせる良い物を提供出来ていきょうできれば、買ってもらえる。

 その「良い物」とは?
 それもまた、悩みどころだな。
 課題は、山積みだ。
 でも、加藤先生のおかげで、自分を見直すことが出来て良かった。
 変わりに、課題も出来てしまったが。
 まぁ、それは追々おいおい考えていこう。

 急いで結論を出そうとしても、良い物を生み出せなければ意味がない。
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