ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

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第51話 新番組制作始動

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「ああ、もちろん良いとも」

 部長は、いともあっさりとうなづいた。
 俺の発案はつあんをふたつ返事で了承りょうしょうしてくれた部長は、にこにこしながら口を開く。

「そうと決まれば、君に会ってもらわなきゃいけない人がいるよ」
「会ってもらわなきゃいけない人?」

 俺が聞き返すと、部長は立ち上がって、デスクへ近付いていった。
 デスクの引き出しを開けると、部長は何やら探し出す。

「確か、このへんに……あぁ、あったあった」

 部長は応接セットのテーブルの上に、何かを置いて、俺の前にスッと移動させた。
 それは、一枚の名刺だった。
 俺はそれを手に取り、書かれている文字を読む。

「えーっと……『テレビプロデューサー五十嵐麗華いがらしれいか』?」
「そう。彼女は有名な凄腕すごうでProducer製作責任者でね。付いたあだ名は『プロデュースの女帝じょてい』彼女なら『ブレイカータイガー』を、有名にしてくれるに違いないよ」
「女帝……ですか」
「とにかく、一度会ってみたら良いよ」
「そっすね」
「私から、appointmentアポは取っておくから」
「あ、どうも」

 そんなこんなで、部長の紹介で五十嵐さんとやらに会いに行くことになった。

 ☆

 指定していされた撮影さつえいスタジオへ向かうと、スタッフに声を掛ける。

五十嵐いがらしさんというプロデューサーさんは、どちらに?」
「プロデューサーなら、そちらにいますよ」

 スタッフが指差ゆびさした先には、髪の長い女が背を向けていた。
 後ろ姿からでも分かる、驚くほどのスタイルの良さ。
 あれが、凄腕すごうでプロデューサーの五十嵐さんか。
 俺は恐る恐る、背中から話し掛ける。

「あのぉ……お忙しいところをすみません、五十嵐さんですか?」

 振り返った女性は、気が強そうな印象いんしょうだが、なかなかの美人さんだ。 
 年齢ねんれいは三十代くらいだと思うけど、女は見た目じゃ分からない。 

「どちらさま?」
「あ、初めまして。俺、いや、僕は川崎虎河かわさきたいがと申します。それでそのぉ……部長から、話が行ってる、と思うんですけど……」

 俺がしどろもどろで答えると、五十嵐さんはパッと顔を明るくする。
 赤いくちびるに笑みを浮かべて、握手あくしゅを求めてくる。

「失礼しました。初めまして、川崎専務かわさきせんむ。おうわさは、かねがね。私は、五十嵐いがらし麗華れいかと申しますの。気軽に『麗華れいか』と、お呼び下さいな」
「こちらこそ、よろしくお願いします、五十嵐……いえ、麗華さん」

 ハキハキと喋る麗華さんに気圧けおされて、俺はぎこちなく握手した。
 俺の手を離すと、麗華さんは俺の横に立っている桜庭に視線を移す。

「そちらは?」
「私は執事兼秘書しつじけんひしょ桜庭春樹さくらばはるきと、申します」

 桜庭が綺麗にお辞儀じぎをして、自己紹介をした。

「そう、執事さんなのね」

 麗華さんはニマニマと、何かをたくらんでいるような顔で笑う。

「ふ~ん……ふたりとも、なかなか良いわね。川崎専務は地味じみでパッとしないけど、純朴じゅんぼくそうな好青年こうせいねんって感じ。これは、みがけば光るタイプね。春樹はるきは、超絶美形ちょうぜつびけいで文句の付けようがない。これなら、セットでも、バラでも、人気出そう……」

 何やらブツブツと呟きながら、麗華さんは俺と桜庭をジロジロと無遠慮ぶえんりょに見た。
 桜庭と見比みくらべられると、どうにも居心地いごこちが悪い。
 だって俺、平々凡々へいへいぼんぼんだもん。

 それに比べて桜庭は、文句もんくの付けようもない超絶美形だよね。
 顔が良いって、ただそれだけで、生まれた瞬間しゅんかんから人生勝ち組でうらやましいよ。
 俺は引きつった笑いで、麗華さんに忠告ちゅうこくする。

「あ、あの……何か勘違かんちがいされているようですが。俺は番組を作りたいだけで、出たい訳では……」
「良いでしょうっ! 私が責任を持って、おふたりをプロデュースしますっ! ご安心下さい! 何としても、あなたがたを有名にして差し上げましょうっ!」

 麗華さんは良い笑顔で、たからかに宣言せんげんした。
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