ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

文字の大きさ
50 / 68

第50話 新番組の売り込み

しおりを挟む
 小さく「ふーむ」とうなると、加藤先生は腕を組み、目を閉じて考え込む。

新番組しんばんぐみは、製作会社せいさくがいしゃやスポンサーにとって、大きなけです。成功すれば天国、失敗すれば地獄……」

 さすがは、弁護士先生。
 社会のしくみに、詳しくていらっしゃる。
 まずメディアが、この話に乗ってくれるか。
 最初の一歩でコケたら、何も始まらない。

 いや、待てよ?
 今の俺は名ばかりとはいえ、総合そうごうメディア企業きぎょう専務せんむ
 金なら、有り余るほどある。
 金と権力けんりょくを使えば、特撮番組のひとつくらい作れるんじゃないか?
 金と権力に頼るって、あんま好きじゃないんだけど。
 使える手は、いくらでも使う。

「加藤先生! 『やらない後悔こうかいより、やった後悔』です。俺の手で『ブレイカータイガー』の特撮番組とくさつばんぐみを作りますっ!」
「そうですね。楽しみにしていますので、頑張ってください。応援しています」
「はいっ!」

 ☆

 昼休みの終わりを告げるチャイムと共に、俺は部長の執務室しつむしつを訪ねた。

「はい」
「お忙しいところをすみません、川崎かわさきです」

 俺が答えると、かたい声が猫撫ねこなで声に早代はやがわりする。

「ああ、川崎君? どうぞどうぞ、入って」
「失礼します」

 俺と桜庭がドアをくぐると、ニコニコ笑う部長が、いそいそと来客用らいきゃくようのカップを準備し始める。

「どうしたの? 川崎君。君の方から出向でむいてくるなんて、めずらしいじゃない」
「実は、今日は大事な相談に参りまして」
「相談?」

 俺が神妙しんみょう面持おももちで言うと、部長は不思議そうな顔をした。
 すぐ笑顔に戻り、俺らに応接セットへ座るようにうながしてくる。

「まぁまぁ、座りなさい。飲み物は、コーヒー? それとも、紅茶?」
「えーっと、じゃあ、コーヒーで」

 どうも、部長のこの態度たいどれないなぁ。
 もう、下心したごころが見え見えなんだよね。
 権力けんりょくを持っている人間や金のある人間に、ヘコヘコするタイプ。
 典型的てんけいてきなゴマすり中間管理職ちゅうかんかんりしょくなんだよ、この人。
 ややあって、コーヒーが入ったカップが俺と桜庭の前に置かれた。

「はい、コーヒー。ミルクと砂糖も、良かったらどうぞ」
「どうも」

 俺は礼を言って、コーヒーに砂糖を入れた。
 部長も自分のカップにコーヒーを作って、俺の向かいのソファに腰掛ける。

「で? 相談というのは、何かな?」
「部長は、『ブレイカータイガー』をご存知ぞんじですか?」

 俺が探りを入れるように聞くと、部長は大きく頷く。

「もちろん、知っているに決まっているじゃない。近頃、メディアを賑わす、正義のヒーローでしょ」
「その『ブレイカータイガー』が、俺だって言ったら、信じます?」
「えぇっ?」

 イタズラが成功した子供みたいに笑って見せると、部長は一瞬驚いた顔をしたが、楽しげに笑い出す。

「そうかそうか、あれは川崎君だったのか。そうだよねぇ、莫大ばくだい遺産いさんいだんだもんね。あらゆる児童養護施設じどうようごしせつに、寄付金きふきんとプレゼントを贈ったんだって? さらに、支援団体しえんだんたい弱小企業じゃくしょうきぎょうや被災地にも義捐金ぎえんきんを贈ったそうだね。いやぁ、実に、君らしいよ」

「いえ、元を正せばピート・ミッチェルさんのお金で、俺の金じゃないですから。正直、どう使えばいいか持てあま気味ぎみで」

 俺は「ははは……」と、乾いた声で笑った。
 部長は拍手して、俺をたたえる。

「いやいや、偉いよ。普通り上がりなら、金に物を言わせて豪遊ごうゆうするもんでしょ」
「そんな金があっても、俺、小心者しょうしんものなんで豪遊なんて……」

 められれない俺は、れ笑いをして手を大きく横に振った。
 おっと、世間話せけんばなしをしにきたんじゃなかった。
 本題ほんだいを、忘れるところだったぜ。
 俺はゆるんだ顔を引き締めると、部長に提案ていあんする。

「その『ブレイカータイガー』の知名度ちめいどをもっと高めたいんですけど、協力してくれませんか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

泣き虫だったはずの幼なじみが再会したら僕を守るために完璧超人になっていた話。

ネギマ
BL
気弱で泣き虫な高校生、日比野千明は、昔からいじめられっ子体質だった。 高校生になればマシになるかと期待したが状況は変わらず、クラスメイトから雑用を押し付けられる毎日を送っていた。 そんなある日、いつものように雑用を押し付けられそうになっている千明を助けたのは、学校中が恐れる“完璧超人”の男子生徒、山吹史郎だった。 文武両道、眉目秀麗、近寄りがたい雰囲気を纏う一匹狼の生徒だったが、実は二人は、幼い頃に離れ離れになった幼なじみだった――。

処理中です...