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第60話 犯罪組織の勧誘
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「さぁ、中へどうぞ」
中年男によって、立派な屋敷へ案内された。
俺のホワイトハウス並みの超豪邸と比べたら、かなり見劣りするけど。
男達に囲まれて、豪華な応接室へ通される。
座るように指示されて、素直に革張りのソファに腰掛けた。
重厚なテーブルを挟んで、中年男が向かいに座った。
恐らくこの男が、この支部のボスだろう。
黒服のひとりが、ケーキと湯気が立ち上るカップを乗せた、銀の盆を持って現れた。
カップには、香しい匂いを漂わせる紅茶が入っていた。
ケーキは、カットフルーツが綺麗に並べられた、目にも鮮やかなフルーツケーキ。
ティーセット一式を、俺とボスの前に置くと、黒服は一礼して去った。
ボスが愛想良く作り笑いをしながら、ケーキを勧めてくる。
「遠慮なさらずに、どうぞお召し上がり下さい」
「……まさか、毒なんて盛ってませんよね?」
疑いの眼差しを向けると、ボスは苦笑する。
「おやおや、疑り深いお人だ。我々は、そんな無粋なマネはしませんよ」
「以前、そちらの組織の誰かさんに、毒で殺されかけましてね。慎重にもなろうってもんですよ」
俺がおどけて答えると、ボスは形だけの謝罪を口にする。
「それは、お恥ずかしい。うちの組織でも、末端の輩ですな。どうにも組織が大きくなると、躾のなってない者もいるもので。私が代わって謝罪します、どうかお許しを」
「その末端の輩は、うちの執事達がぶっ倒したそうですから、おあいこですよ」
「ほぉ。お宅の番犬さんは、ずいぶん血気盛んなようですな」
お互い、腹の探り合いのような話が続いた。
緊張の糸がピンと張り詰めたような、雰囲気が漂っている。
ややあって、焦れた俺が話を切り出す。
「それで? 俺に何の用があって、呼び出したんです? まさか、『正義のヒーローに会いかった』ってだけじゃないでしょう?」
「ふふふ……。さすがは、ブレイカータイガー。察しが良い」
悪い笑みを浮かべたまま、ボスは続ける。
「どうです? 我々の組織に、加入しませんか?」
「ふざけんなっ! 誰が、てめぇらみたいな犯罪組織の仲間になるかっ!」
思わぬ誘いに、自分の耳を疑った。
怒りに任せて、テーブルに握り締めた拳を叩きつけた。
テーブルに置かれていたカップとソーサーが、耳障りな音を立てた。
カップから紅茶が零れて、下のソーサーとテーブルを濡らした。
しかし、ボスはさして驚くでもなく、意味深長な薄笑いを浮かべる。
「まぁ、落ち着いてお聞き下さい。我々の組織に加入して頂いた後も、あなたは今まで通りブレイカータイガーとして、活躍して頂いて結構です。その代わり、スポンサーとして我々に出資して頂きたいのです。それなら、あなた自身は犯罪に手を汚さずに済むでしょう?」
「金を出した時点で、犯罪に手を貸しているのと同じじゃないかっ!」
吐き捨ててソファから立ち上がると、俺の後ろに立っていた黒服ふたりが、銃口を突き付けてきた。
俺はふたりの黒服を睨んで、挑発する。
「やるならやれよ! お前らの仲間になるくらいなら、死んだ方がマシだっ!」
「いけませんねぇ、命を粗末にするような発言は。それに我々『Great Old Ones』は、世界において必要悪なのですよ?」
いさめるように、ボスが穏やかな口調で言った。
聞きなれない言葉に、俺は首を傾げる。
「必要悪?」
「それ自体は悪と見なされるものでも、社会の存続の為には必要な手段として行われるものですよ」
「そんなもん、必要なもんかっ!」
怒声を張ると、ボスは楽しげに笑う。
「タイガーはまだお若いから、ご存じありませんか? 例えば、警察による極悪犯の射殺。裁判の判決によって、処される死刑。公営のギャンブルとかですかね」
それを聞いて、俺は黙り込んだ。
どんな人間にだって、生きる権利がある。
本当は、殺されて良い人間なんていないはずなんだ。
でも、極悪な犯罪者における射殺や死刑は、公的に行われている。
法律で認められていると言われれば、それまでだ。
中年男によって、立派な屋敷へ案内された。
俺のホワイトハウス並みの超豪邸と比べたら、かなり見劣りするけど。
男達に囲まれて、豪華な応接室へ通される。
座るように指示されて、素直に革張りのソファに腰掛けた。
重厚なテーブルを挟んで、中年男が向かいに座った。
恐らくこの男が、この支部のボスだろう。
黒服のひとりが、ケーキと湯気が立ち上るカップを乗せた、銀の盆を持って現れた。
カップには、香しい匂いを漂わせる紅茶が入っていた。
ケーキは、カットフルーツが綺麗に並べられた、目にも鮮やかなフルーツケーキ。
ティーセット一式を、俺とボスの前に置くと、黒服は一礼して去った。
ボスが愛想良く作り笑いをしながら、ケーキを勧めてくる。
「遠慮なさらずに、どうぞお召し上がり下さい」
「……まさか、毒なんて盛ってませんよね?」
疑いの眼差しを向けると、ボスは苦笑する。
「おやおや、疑り深いお人だ。我々は、そんな無粋なマネはしませんよ」
「以前、そちらの組織の誰かさんに、毒で殺されかけましてね。慎重にもなろうってもんですよ」
俺がおどけて答えると、ボスは形だけの謝罪を口にする。
「それは、お恥ずかしい。うちの組織でも、末端の輩ですな。どうにも組織が大きくなると、躾のなってない者もいるもので。私が代わって謝罪します、どうかお許しを」
「その末端の輩は、うちの執事達がぶっ倒したそうですから、おあいこですよ」
「ほぉ。お宅の番犬さんは、ずいぶん血気盛んなようですな」
お互い、腹の探り合いのような話が続いた。
緊張の糸がピンと張り詰めたような、雰囲気が漂っている。
ややあって、焦れた俺が話を切り出す。
「それで? 俺に何の用があって、呼び出したんです? まさか、『正義のヒーローに会いかった』ってだけじゃないでしょう?」
「ふふふ……。さすがは、ブレイカータイガー。察しが良い」
悪い笑みを浮かべたまま、ボスは続ける。
「どうです? 我々の組織に、加入しませんか?」
「ふざけんなっ! 誰が、てめぇらみたいな犯罪組織の仲間になるかっ!」
思わぬ誘いに、自分の耳を疑った。
怒りに任せて、テーブルに握り締めた拳を叩きつけた。
テーブルに置かれていたカップとソーサーが、耳障りな音を立てた。
カップから紅茶が零れて、下のソーサーとテーブルを濡らした。
しかし、ボスはさして驚くでもなく、意味深長な薄笑いを浮かべる。
「まぁ、落ち着いてお聞き下さい。我々の組織に加入して頂いた後も、あなたは今まで通りブレイカータイガーとして、活躍して頂いて結構です。その代わり、スポンサーとして我々に出資して頂きたいのです。それなら、あなた自身は犯罪に手を汚さずに済むでしょう?」
「金を出した時点で、犯罪に手を貸しているのと同じじゃないかっ!」
吐き捨ててソファから立ち上がると、俺の後ろに立っていた黒服ふたりが、銃口を突き付けてきた。
俺はふたりの黒服を睨んで、挑発する。
「やるならやれよ! お前らの仲間になるくらいなら、死んだ方がマシだっ!」
「いけませんねぇ、命を粗末にするような発言は。それに我々『Great Old Ones』は、世界において必要悪なのですよ?」
いさめるように、ボスが穏やかな口調で言った。
聞きなれない言葉に、俺は首を傾げる。
「必要悪?」
「それ自体は悪と見なされるものでも、社会の存続の為には必要な手段として行われるものですよ」
「そんなもん、必要なもんかっ!」
怒声を張ると、ボスは楽しげに笑う。
「タイガーはまだお若いから、ご存じありませんか? 例えば、警察による極悪犯の射殺。裁判の判決によって、処される死刑。公営のギャンブルとかですかね」
それを聞いて、俺は黙り込んだ。
どんな人間にだって、生きる権利がある。
本当は、殺されて良い人間なんていないはずなんだ。
でも、極悪な犯罪者における射殺や死刑は、公的に行われている。
法律で認められていると言われれば、それまでだ。
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