ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

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第61話 遺産相続者に選ばれた理由

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 言葉を詰まらせた俺を見て、ボスが口元を吊り上げる。

「ご理解、頂けましたでしょうか? もちろん、出資して頂いたあなたに損はさせませんよ。あなたの身は我々が責任持ってお守りしますし、さまざまなサービスもさせて頂きますよ」
「サービス?」

 聞き返すと、ボスは嬉しそうに頷く。

「例えば、あらゆる情報収集や手回し、あだなす(害を与える)者は上手く消しますし、政界せいかいを裏から操ることも可能です」
「そんなこと、俺は望んでないっ!」
「それに、組織に加入して頂ければ、今後一切こんごいっさい、『Great Old Onesグレートオールドワン』があなたの命を狙うこともありません。命よりも高いものは、ありませんからね」

 ボスは猫撫ねこなで声で、あの手この手で誘ってくる。
 でも、俺がそれに、心が動かされることはない。
 必要悪が、なんだってんだ。
 悪は悪だ。

 コイツらのやっていることは、爆破ばくはテロや政界せいかいを裏からあやつるなんて卑怯極ひきょうきわまりない。
 許されない犯罪の数々。
 法のあみたくみにすり抜けて、君臨くんりんし続ける犯罪組織。
 そんなヤツらと手を組もうだなんて、絶対に思うもんかっ!

「断る! 俺が、お前らの仲間になる気はさらさらないっ!」
「やれやれ、交渉決裂こうしょうけつれつですか」

 ボスは、苦笑しながら続ける。

「ミッチェル氏は、人選じんせんあやまりましたねぇ」
「ミッチェル……!」

 そうだ、全てはミッチェルのせいだ。
 莫大ばくだいな遺産を押し付け、今まで平穏無事へいおんぶじだった俺の人生を、まるっと変えた。
 もし俺が遺産相続いさんそうぞく拒否きょひした場合、「Great Old Onesグレートオールドワン」に全額受け渡すと相続書そうぞくしょにあった。

 つまり、ミッチェルも「Great Old Onesグレートオールドワン」に加担かたんしていた……?
 不動ふどうの地位をきずいたのが、「Great Old Onesグレートオールドワン」の手によるものだとしたら?
 俺は血の気が引いていく音を、聞いた気がした。

「おや、お気付きではありませんでしたか? ミッチェル氏が、我々のメンバーであったことを」

 ボスが楽しげに、ふくみ笑いで言った。
 俺は口の中が急激きゅうげきかわいていくのを、感じていた。
 声が震えるのを、おさえることが出来ない。

「知らな、かった……」

 いや、どこかで関わりがあるかもしれないとは思っていた。 
 でなければ、全財産ぜんざいさんゆずり渡すだなんて、言うはずがない。
 たぶん、最悪の結果を認めたくなかったんだ。

 考えてみれば、おかしいもんな。
 ビジネス界における世紀の大富豪だいふごうにして、「シュブニグラス・エンターテインメント」の最高責任者。
 責任者としての胆力たんりょくやリーダーシップが高く、メディアをかいして市政しせいにも、影響を与える重要人物。
 どんなやり手だとしても、なんの後ろだて(後ろから支えてくれる何か)もなしに、一代いちだいであそこまでの権力や地位を手に入れるなんて、そう出来ることじゃない。

 つまり、ミッチェルの裏で糸を引いていたのは「Great Old Onesグレートオールドワン」だったんだ。
 世界の隅々すみずみまで「Great Old Onesグレートオールドワン」の手がおよんでいて、使える手はどんな汚い手でも使ったに違いない。
 それこそ、ミッチェルを引きり下ろそうとした人物も、消されただろう。

 俺は、何も知らなかった。
 ミッチェルの表の顔しか、見ていなかった。
 絶対的なカリスマを持つ、表の顔。
 その裏に隠された、暗くよどんだ悪の顔。

 コイツは、俺のことを「人選じんせんあやまった」と言った。
 俺はミッチェルの後任として、選ばれたってことなのか?
 弁護士先生の話では、全従業員の中から適当にクジで選んだ的な話だったけど。
 いずれ、「Great Old Onesグレートオールドワン」と手を組んで、社会をおびやかす存在になれると。

 でも、俺はそんな人間じゃない。
 みんなが笑顔で暮らせるような、幸せな世界を作りたい。
 確かに、ミッチェルの遺産や権力を使って、俺は今の地位を手に入れた。

 俺が正義のヒーローを演じることによって、メディアは盛り上がった。
 街は活性化かっせいかし、犯罪も減少傾向げんしょうけいこうが見られ始めた。
 もしそれも、「Great Old Onesグレートオールドワン」によって、作られたものだったとしたら?
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