ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

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第62話 ブレイカータイガーの最期

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 何も知らずに踊らされていた俺は、なんて滑稽こっけい(カッコ悪くて面白おかしい)だったのだろう。
 そんな俺をあざ笑うかのように、ボスはのどの奥で笑う。

「非常に惜しい人材ですが、拒否されてしまったものは仕方がありません。あなたには、消えて頂きます。ああ、もちろん、死後は『悲劇のヒーロー』として華々はなばなしく祭り上げてあげますから、何の心配もいりませんよ」
「ふざけるなっ!」

 最悪、俺は死んでも良い。
 ただ、コイツらのいいようにされるのが、気に食わない。
 俺が死んだら、ミッチェルの遺産は全てコイツらの手に渡る。
 ありあまる金を手に入れたら、いったい何をしでかすつもりなのだろう。

 ここはひとまず、戦術的撤退せんじゅつてきてったいはかろう。

「お前らのいいようになんか、させるかよっ!」

 精一杯の怒声どせいを張り、出口へ向かって全力で走り出す。
 しかし、銃の前では人は無力だ。
 耳をつんざく銃声と共に、左肩と右腹と左足に激痛を覚えた。

「ぐぁ……っいってぇ……っ!」

 その場に倒れ込むと、そのまま動けなくなった。
 あまりに痛すぎて、痛い以外のことが考えられない。

 銃で撃たれるって、むちゃくちゃ痛いのな。
 鉛玉なまりだまが高速回転しながら、秒速で発射されるんだ。
 体を貫かれてんだし、痛くないはずがない。

 撃ち抜かれた傷からは、生ぬるい血があふれ出した。
 傷口を押さえた手が、真っ赤に濡れた。
 うわぁ、こんなに大量の血を見たのは生まれて初めて。
 血って、本当に血生臭いんだと、当たり前のことを考えてしまう。

 俺を取り囲む黒服達と、勝ち誇った笑みを浮かべて俺を見下ろすボス。
 ボスは、笑いを含んだ声で楽しげに言う。

「明日の朝刊の見出しは、『ブレイカータイガー、巨悪の犯罪組織との死闘しとうの末、はかなる』なんて、どうです?」
「そりゃ、特番ドラマスペシャルのテレビ欄みてぇに、ムダに長ったらしいタイトルだな……」

 痛みで引きつる顔に、無理矢理笑みを貼り付けて、鼻で笑った。
 服がぐっしょりと濡れて、体が重くなっていく。
 血が抜けてるんだから体は軽くなるはずなのに、重く感じるなんておかしなもんだ。

 頭がぐわんぐわん痛み出して、目の前もゆがんでグルグル回り出す。
 ボスが高らかに笑って何かを言っているようだが、何かを言っているか聞き取れなかった。
 聞こえているのに、頭に入ってこないって感じ。
 その声は、どんどん遠ざかっていく。

 体が寒くなってきて、眠くなってきた。
 なのに、痛みだけはいつまでもハッキリと感じる。
 どうせなら、痛みも早く感じられなくなってくれたらいいのに。

 猛烈もうれつに眠くて、意識を保っていることが難しくなってくる。
 ああ、俺はもう死ぬのか。
 短い人生だったな。

 俺が死んだら、どうなるんだろう。
 やっぱり財産は、Greatグレート Oldオールド Onesワンに奪われて活動資金として使われるのだろうか。
 こんなことなら、加藤先生に遺言書ゆいごんしょを作ってもらっておくべきだった。

 命が狙われていることは、最初っから分かっていたのだから。
 今更後悔しても、どうにもならないけど。
 めちゃくちゃくやしいけど、死にゆく俺には何も出来ない。

 うらみをのこして死ぬんだから、きっと幽霊になる。
 幽霊になったら、俺がいなくなった後の世界を見てみたい。
 死後の世界がどんな世界なのか、興味もあるし。
 そんなことを考えながら、重くなっていくまぶたに逆らうことなく静かに死を受け入れた。
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