ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

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第63話 バッドエンドは見せられない

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 目を覚ますと、知らない天井てんじょうが目に入った。
 俺は仰向あおむけで、キングサイズのベッドに横たわっていたようだ。
 かざのない白い天井。
 天井に埋め込み式のエアコンと、ダウンライト(天井に埋め込み式の丸い照明器具)。

 俺から見て左側に、点滴てんてきれ下がっている。
 窓の外は明るく、窓にはシンプルな白いカーテンが掛かっていた。
 壁には、巨大な壁掛け式薄型しきうすがたテレビが設置せっちされていた。
 さらに、視線をめぐらせると、木製のテーブルセットやクローゼットが見えた。
 見覚えのない部屋だ。
 ここは、どこだ?

 俺が寝ているベッドを執事達が囲み、心配そうな顔で俺を見下ろしていた。

「あれ……俺? って、痛ぇ……っ!」

 身じろぎすると、左肩と右脇腹みぎわきばらと左太ももに、引きつるような激痛げきつうが走った。
 小さくうめき声を上げると、そばにいた桜庭さくらば気遣きづかう。

「ご主人様、お気付きになられましたか。ですが、まだ動いてはいけませんよ。銃でたれた傷が、えておりませんから」
「あ、俺、撃たれたんだっけか」

 そうだ、思い出した。
 逃げようと走り出したところを、後ろから撃たれたんだ。
 丸腰まるごし(武器を持っていない)の一般人いっぱんじんを後ろから撃つなよ、卑怯者ひきょうもの

 撃たれた箇所かしょから、大量の血が流れ出した。
 あんだけ出血して、よく助かったもんだ。
 絶対死んだと、思っていた。
 どうやら、俺はまたしても死にそこなったらしい。

 横たわったまま桔梗ききょうを探し、笑い掛けて助けてくれた礼を伝える。

「また、桔梗が助けてくれたんだろ? ありがとな」
「いえ、今回はぼくではありません。ぼくは内科医ないかいですから、外科手術は出来ません。力及ちからおよばず、誠に申し訳ございません」
「あれ? 違うの?」

 桔梗は残念そうに、首を横に振った。
 内科医も応急処置おうきゅうしょちくらいは出来るだろうけど、手術は無理だもんな。

「桔梗は、何も謝ることはないよ。じゃあ、誰が助けてくれたんだ?」
「救急車で、有数《ゆうすう》の病院へ搬送はんそうし、外科手術の権威けんいである外科医師様に執刀しっとうして頂きました」
「じゃあ、あとで、その外科医さんにお礼言わないとな」

 執事達の話によると、ここは病院の個室らしい。
 それも、金持ちだけが入院出来る、一泊何万円もする「特別個室」
 病室とは思えないくらい広くて、高級ホテル並みに贅沢ぜいたくな部屋。
 うちのムダに贅沢ぜいたくな寝室と比べると、質素しっそに感じた。
 最近、豪邸に慣れすぎて、感覚がおかしくなってきたような気がする。

 そういえば、俺が拉致らちられた後、観客達はどうなったんだろう?
 まさか、怪我したり、死んだりしてないよな?
 俺は執事達の顔を見回して、誰ともなく問う。

「あのさ……スタジアムにいた、観客達は? みんな、無事なのか?」
「もちろん、ご主人様が無抵抗で条件を飲んだので、観客は全員無事です。死傷者は、ひとりもいません」

 桜庭がなだめるような口調で答えると、俺はホッとして力なく笑った。

「そっか……良かった、死傷者は出なかったんだ……」
「何をおっしゃっているんですか! ご主人様は、危うく死ぬところでしたのにっ!」

 ボロボロと、男泣きする田中が、必死に訴えてきた。
 うぉう、ビックリしたぁっ!
 毎回、ビビらせんなよ。
 毎回ビビっちまう、俺も俺だけどさ。

 でもさ、考えてもみてくれよ。
 自分より十㎝以上デカいガチムチのオッサンが、男泣きしながらせまってくるんだぞ。
 普通に、ビビるだろ。

「え? 俺、そんなにヤバかったの?」
「ヤバかったも何も! 失血死寸前しっけつしすんぜんで、意識不明いしきふめいの重体でしたよっ!」

 やっぱ、あの出血量はヤバかったのか。
 意識がある時点じてんで、相当、血ぃ吹いてたもんな。
 失血死寸前ってことは、死に掛けたってことか。
 止血が間に合わなかったら、死んでたのか。

 危うく、マジで『ブレイカータイガー、巨悪きょあくの犯罪組織との死闘しとうの末、はかなる』になるところだった。
 ヒーローが、悪に負けて死ぬバッドエンドなんて、子供達には見せられない。
 だってヒーローは、みんなの憧れなんだから。
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