ある日突然、知らないおじいちゃんから莫大な遺産を相続させられて、全裸の執事と地獄がもれなくセットでついてきた

橋元 宏平

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第67話 全裸が正装

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 退院して屋敷に戻ったら、執事達は全裸に戻った。
 入院中はずっと服を着ている姿を見ていたから、全裸の執事達を見るのは久し振りかも。
 いや、別に見たくないし、全裸の男達。

 かといって、全裸の女でも、目のやり場に困るんだけど。
 そういえば、この屋敷でmaid女の使用人さんって、見たことないな。
 この屋敷では、メイドさんも全裸なのかな?
 ミッチェルルールだったら、全裸だよな。

 全裸だから、俺の前に出て来られないのかな?
 堂々と、出て来られても困るけど、全裸メイド。
 メイド服を着た普通のメイドさんなら、会ってみたい。
 メイドさんは、男のロマンだよな。

 でもなぁ、ミッチェルの趣味がアレだから、メイドさんは雇っていない気がする。
 footman男の使用人なら、いるかもしれないけど。
 この豪邸ごうていを、執事5人で管理しきれるとは、到底思えない。

 執事たちは全員、俺が入院中、ずっと病室で俺の警備をしていた。
 だから、豪邸の管理をしている使用人が必ずいるはずなんだ。
 きっとフットマンは、以前の俺と同じ、裏方うらかたとして仕事をしているんだ。
 俺とは出会わない場所で、掃除や洗濯などの業務をこなしているのだろう。
 やっぱり、フットマンも全裸なのかな?

 ☆

「なぁ、お願いだから、屋敷の中でも服着てくんない?」

 俺がいくら頼み込んでも、全裸の執事達は理解りかいを示してくれない。

「何故でしょう? これが、我々の正装せいそうでございますが?」
「いやいや、おかしいだろ、全裸が正装って! 裸族らぞくじゃねぇんだぞっ?」

 俺が指摘してきすると、椿つばきが困ったように体をクネらせる。

「あらぁん、そんなことおっしゃられましてもねぇ。先代のミッチェル様のお決めになられたことを、アタシ達は忠実ちゅうじつにお守りしているだけですわ」
「いやまぁ、先代の言い付けを守り続ける君らは、偉いとは思うけどね。今の主人は俺だよ? 俺の言うことを聞いてくんない?」

 苦笑しつつ訴えると、桜庭さくらば熱弁ねつべんを振るう。

「何をおっしゃいますか。執事として、全てをさらけ出すことにより、主人の前では という証明なのです! それすなわち、全裸っ!」

 さらに桔梗ききょうが、言葉を重ねていく。

「確かに、今のご主人様は虎河たいが様です。ですが、ミッチェル様はこうもおっしゃったのです。『全裸こそ、生まれたままの真実!』『全裸こそが純然じゅんぜんたる美であり、真の芸術であるっ!』と」
 
 うん……まぁ、そうだね。
 誰しも、生まれた時は全裸だよね。
「主人に何も隠し立てしない」っていう、その心意気こころいきは買うよ。
 でも、全裸での証明はいらなかった。

 名高い芸術品は、全裸率高いよね。
「ミケランジェロのダビデ像」とか「ミロのビーナス」とかは、全部全裸。
 古代彫刻や絵画は、全裸が多い。
 きたえ上げられた肉体美にくたいびは、俺もカッコイイと思うよ。

 でもさ、それは芸術の話じゃん。
 常識的に考えて、全裸はマズいよね?
 だって執事が、ちんちんブラブラしてるって、おかしいよね?
 一般的な執事は、ちんちんブラブラしないよね?

 その格好で、表出てみ?
 警察が、すっ飛んでくるぜ?

「外へ出る時は、ちゃんと服着てるよね?」

 俺が指差しながら言うと、執事達は一斉にうなづく。
 さもおかしげに、桜庭が笑い出す。

「もちろん、着るに決まっています。着なかったら、警察に捕まってしまうではありませんか」
「当たり前だよ! 全裸、真っ裸まっぱ穿いてないんじゃ、猥褻わいせつ(けしからん)罪だっ! 分かってんじゃねぇかっ! だったら、屋敷ん中でも服着とけよっ!」
「……そうは、おっしゃられましても……」

 執事達は動揺した様子で、顔を見合わせる。
 何故だ?
 何故、分かり合えない?
「服着ろ」って、ただそれだけのことなのに。

 言葉は通じているのに、意思の疎通そつうが取れない。
 それとも何?
 お前らは「全裸」って、言葉が理解出来ないの?
 お前らにとって、全裸って何なの?
 全裸は、どうしてもゆずれないの?

 マジなんなの?
 そのくなき(あくなき=どこまでもやむことがない)全裸へのこだわり。
 ひょっとして、ミッチェルに「全裸は正義」と、洗脳教育せんのうきょういくされた?
 その洗脳の呪縛じゅばくからは、一生逃れられないの?
 俺らは、永遠に分かり会えないの?

 もう究極、パンツだけ穿いてくれたら許す。
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