俺の幸せの為に、中二病こじらせた自称天使を堕天させたい。

橋元 宏平

文字の大きさ
8 / 9

第8話 中二病のアポカリプス

しおりを挟む
藍染あいぜんさん、さっき警察が来てたんですけど、何やらかしたんですか?」
「は? 警察?」

 ある日、同僚たちが詰めかけてきて質問責めにされた。
 彼らの話によると、警察が聞き込みに来て黄葉きばくんと俺について詳しく聞かれたという。

 同僚たちを適当にあしらって独身寮へ帰ると、白淵しろふちが俺の部屋の前で待ち伏せしていた。
 何やら楽しそうな笑みを浮かべつつ、軽い口調で話し掛けてくる。

「藍染さん、お帰りぃ~。今日、ここにも警察が訪ねてきてさ。藍染さんと黄葉くんのこと、いろいろ聞かれたよ」
「お前、なんか余計なこと言ってねぇよな?」
「そう言うってことは、何かやましいことでもあるのかい?」
「いや、ないが?」
「そう? だったら良いんだけどねぇ~」

 白淵は意味ありげにニヤニヤ笑いながら、自分の部屋へ入った。
 なんだ? アイツ。
 それを言うだけに、待ち伏せしてやがったのか?
 口の軽いアイツのことだから、きっと余計なことをベラベラしゃべったに違いない。

 ついに、来てしまったか。
 黄葉くんは、因習村いんしゅうむらからひとりで飛び出してきた。
 子供が家出したら、捜索願そうさくねがいを出すのは当たり前。
 居場所を突き止められるのは、時間の問題だったんだ。

 ꒰ঌ♥໒꒱‬꒰ঌ♡໒꒱

 今日は一日中、可愛い黄葉くんとイチャイチャしながら過ごせる幸せな土曜日。 
 思う存分、黄葉くんをでたいところだけど。
 早く堕天だてんさせないと、因習村へ連れ戻される。

 とはいえ、いきなり襲うのは違う気がするんだよなぁ。
 怯えて泣く黄葉くんを無理矢理抱くのは、アリかナシかといったら……。
 うん! アリ寄りのアリだなっ!

「黄葉くん、今日は何かしたいことある?」
「ん~、どうしようかな~。そうだ! いつもワガママ聞いてもらってるから、ぼくが藍染さんの言うことなんでも聞いてあげるっ!」
「なんでも? いいの?」
「ぼくの出来ることだったら、なんでもいいよっ!」

 今、なんでもするって言ったよね?
 これを逃す手はない。

「じゃあ、気持ちいことしようか」
「気持ち好いことって、なに?」
「大丈夫、大丈夫だから。絶対に、痛いことはしないから」
「う、うん。なら、いいよ」
「だったら、こっち来て」

 ふたりでベッドの上に座って、向き合う。
 左手で黄葉くんの頭を撫でながら、右手でほおを撫でる。
 綺麗なサラサラの髪もなめらかな頬も、ずっと触っていたくなる。
 このいとおしい体が、今から俺のものになる。
 そう思うと、胸とチンコが熱くなるな。

 桜色の可愛いくちびるに、そっと自分の唇を重ねる。
 柔らかい唇に触れた瞬間、黄葉くんの体がピクリと小さくねる。
 ちょっと緊張しているのか、体がこわばっている。

 黄葉くんはまだガキだから、俺がファーストキスになるのかも。
 怖がらせないように、チュッチュと軽いキスを重ねた。
 やっぱり、おびえている黄葉くんも可哀想可愛いな。

 そこで、チャイムの音が鳴った。
 思わず、唇を離して舌打ちをする。
 うちには宅配ボックスがあるから、チャイムが鳴らされる時はそれ以外の用事がある時。

「ごめん、ちょっと待っててね」
「うん、分かった」

 黄葉くんの頭を軽く撫でて、ベッドから降りる。
 ドアスコープからのぞき見れば、扉の向こうに5人の男たちが立っていた。
 何故か、白淵と紫牟田しむたもいる。
 大勢で押しかけてきやがって、いったい何の用だ?
 こっちとら、今一番いいとこなんだよ。
 手前にいる警官が、警察手帳を見せつけてくる。

『突然おうかがいしてすみません、警察です。ちょっと、お時間よろしいでしょうか?』

 クソッ、あともうちょっとだったのにっ!
 臨戦態勢りんせんたいせいだったチンコが、一気にえた。

 ꒰ঌ♥໒꒱‬꒰ঌ♡໒꒱

 玄関の扉が開かれると、20代後半くらいの若い男が現れた。
 細マッチョでスタイルが良く、なかなかのイケメンだ。
 その男、藍染は警戒している様子で低い声でボソボソと喋り出す。

「警察が、何のご用ですか?」 
「そちらで、少年をかくまっているのは分かっています。今すぐ、こちらへ引き渡していただけますか?」
「匿っているとは、人聞きが悪い。彼が何をしたって言うんですか?」
「警察で保護すると、言っているんです。悪いことは言いませんから、早くこちらへ寄越よこしなさい」
「嫌ですけど」
「嫌? 公務執行妨害こうむしっこうぼうがいで、逮捕たいほしますよ?」

 赤艸あかくさが問い詰めると、藍染は毅然きぜんとした態度たいどで反論してきた。
 お互い平行線のまま、一歩も引かない。
 すると今度は、紫牟田が藍染に頼み込む。

「藍染さん、黄葉ちゃんに会わせてもらえませんか? 話がしたいんです」
「いや、それが、今はちょっと、出られないっていうか……」

 藍染が言葉をにごすと、天使たちに不穏ふおんな空気がただよう。
 そこでチャリチャリと金属音を立てながら、黄葉が明るい笑顔で駆け寄ってくる。
 
「なんか聞き覚えのある声がすると思ったら、みんなだったか~っ!」
「黄葉くん! 出てきちゃダメだってっ!」
「え? なんで?」

 藍染が止めると、黄葉はキョトンとして首をかしげた。
 黄葉はオーバーサイズのシャツ以外、何も着ていない。
 大きく開いた胸元やスラリと伸びた細い足には、あか所有印キスマークがいくつも付いていた。
 細い首には首輪が着けられ、長い鎖と繋がっていた。 

 黄葉の姿を見て、天使たちは絶句ぜっくした。
 黄葉はこの部屋に監禁され、堕天させられたと確信する。

「よくも、僕の黄葉ちゃんをけがしてくれましたねっ!」
「悪はめっするのみっ!」

 激怒げきどした紺箭は、剣を抜いて突き出す。
 橙木は渾身こんしんの力で、警棒を振りかぶった。
 それらが藍染をとらえる前に、黄葉が前に立ちはだかった。

「藍染さんっ!」
「「「黄葉くんっ?」」」

 剣は黄葉の胸を貫き、警棒は頭を叩き割った。
 崩れ落ちる黄葉の体を、藍染が慌てて抱きめた。
 天使たちもまた、倒れた黄葉を囲んで悲痛な叫びを上げる。
 白淵は慌ててスマホを取り出して、救急車を呼んだ。

 黄葉が負った傷は深く、誰の目から見ても致命傷ちめいしょうだと分かった。
 藍染は取り乱して、泣きじゃくる。

「黄葉くんっ! どうしてこんな……っ?」
「だって……、かばわなかったら、藍染さんが、死んじゃってたでしょ……」
「嫌だよっ! 死なないでっ! 俺を置いて、かないでよっ!」
「大丈夫、天使は死なないから……」

 黄葉はおだやかな笑顔で、藍染を見上げた。
 苦しそうな声で、懸命に言葉をつむぐ。

「ねぇ、知ってる……? 熾天使セラフィムはね、愛の炎と共鳴するんだよ。だから、藍染さんがぼくを愛してくれているって、知ってたんだ……」
「今までずっと言えなかったけど……、会った時から黄葉くんを愛している」
「うん、ぼくも愛してる……」

 黄葉は、自分を見下ろす天使たちを見回して嬉しそうに笑う。

「みんな、会いに来てくれて、ありがとう。ぼく……、藍染さんに愛されて、とても幸せだった。それだけは信じて……」

 そこまで言うと、黄葉は息を引き取った。
 黄葉の体は、光の粒子となって消えていく。
 あとには、黄色く輝く手のひらサイズの球体が残った。

 藍染は球体をつかもうとしたが、手はすり抜けて空を切った。
 球体は音もなく浮き上がり、まっすぐ天へとのぼっていった。 
 空を見上げて、藍染はぽつりとつぶやく。

「あれは……?」
「あれは、黄葉さんの御霊みたまだよ」
「御霊?」
「黄葉さんは、神様の御許みもとへとされたんだ」

 赤艸もまた空を見上げながら、淡々たんたんとした口調で答えた。

「みんなたち、オレたちも帰んぞ」
「そうですね」
「分かった」
「さらばだ、おろかなる人間たちよ」
 
 4人は天使の姿へ戻ると、神々こうごうしい光を放ちながら天へと帰って行った。
 藍染と白淵は、天使たちの姿が見えなくなるまで見送った。
 藍染は呆然と空を見上げていたが、ようやく事態を飲み込めてきた。

「……黄葉くんって、本当に天使だったんだ……」
「えっ? 今さらっ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている

春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」 王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。 冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、 なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。 誰に対しても一切の温情を見せないその男が、 唯一リクにだけは、優しく微笑む―― その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。 孤児の少年が踏み入れたのは、 権謀術数渦巻く宰相の世界と、 その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。 これは、孤独なふたりが出会い、 やがて世界を変えていく、 静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。

つぎはぎのよる

伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。 同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。

魔王さまのヒミツ♡

黒木  鳴
BL
歴代最年少で魔王の地位に就いたレイには隠し通さなければならない秘密がある。それは……「魔王もうやだぁぁぁ~~!!下剋上こわいよぉぉぉーーー!!!」その実態が泣き虫ポンコツ魔王だということ。バレれば即・下剋上を挑まれることは必至!なので先々代の魔王を父に持ち、悪魔公爵ジェラルドが膝を折ったという2枚看板を武器にクールな魔王を演じている。だけどその実力を疑う者たちも出てきて……?!果たしてレイの運命は……?!溺愛腹黒系悪魔×初心な小悪魔系吸血鬼。お茶目なパパんも大活躍!!

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

俺がイケメン皇子に溺愛されるまでの物語 ~ただし勘違い中~

空兎
BL
大国の第一皇子と結婚する予定だった姉ちゃんが失踪したせいで俺が身代わりに嫁ぐ羽目になった。ええええっ、俺自国でハーレム作るつもりだったのに何でこんな目に!?しかもなんかよくわからんが皇子にめっちゃ嫌われているんですけど!?このままだと自国の存続が危なそうなので仕方なしにチートスキル使いながらラザール帝国で自分の有用性アピールして人間関係を築いているんだけどその度に皇子が不機嫌になります。なにこれめんどい。

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

処理中です...