嚆矢

山吹レイ

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10 交尾

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 あれからスライムはずっと俺の側にいるようになった。
「んっ……あっ……そこに……」
 下半身を探られて、俺はスライムを掴まえようとする。
 だが、片手では柔らかくて持つことができないスライムは、溶けながら尻の割れ目に入ってきて穴を探る。
 あの日から毎日なんどもスライムと淫靡な情事に耽っている。
 スライムは俺が喘ぐと喜んでいると感じているらしく、積極的に溶けた体を擦りつけて俺をもっと喜ばせようとする。
 最初に感じていた魔物との背徳感なんてものは、監禁されて何もできない、行き場のない状態の前では縋るしかない快楽でしかなく、いつしか俺も気持ちよさを甘受するようになった。
 陰茎を擦って射精したりしたのは序の口で、俺の尻の中から体内へ入ってくるようになった。それが堪らなく気持ちがいい。
 はあはあ言いながら四つん這いになった俺は、ゆっくりと冷たいものが体内に入ってくる感覚に、勃起した前を微かに震わせた。
 頭が痺れて、腰から体が崩れるほどの快感が体中に広がっていく。
 体内に侵入したスライムが膨らみ、中を擦っているのだ。
 スライムが体内で蠢くたびに腹が膨れたりしたが、奥の方まで入り込まれると、俺は悲鳴に似た声をあげて達した。
 陰茎はパンパンに膨らんでいるのに出るものはなく、とうとう後ろの快感だけでいってしまった。中にじんわりと冷たいものがしみこむ感覚がして、スライムがぬるりと後ろの穴からでてくる。
 仰向けになり、苦しい息を整えていると、スライムは体をのぼり、顔まで来て俺の口の中を動き回って唾液を舐めとっていく。
「んふっ……あ……」
 鼻の中まで入ろうとしていたので、慌てて首を横に振る。
 むちゅむちゅと音が鳴りそうなほど、唇に吸い付いたスライムは、自らのしている行為がどういうものか理解しているのだろうか。スライムに感覚はあるように思えるから俺と一緒で気持ちよさそうに見えるが、それがどういう意味かわかってないと思う。
 そんなことを考えながら、解放されていない張りつめた部分を右手で擦った。
 呆気なく迸って、手を汚す。スライムは右手や萎えた下半身を移動して、綺麗にしてくれた。
 スライムを撫でながら、俺は空が見える天井を見上げる。
「お前、ずっとここにいていいのか……?」
 スライムはぼんぼんと腹の上で飛び跳ねる。会話はできないので意志の疎通は難しいように見えるが、嬉しかったり同意するときはその場で数回飛び跳ね、悲しかったり否定的なときは、体をぐでっと溶けさせたり、ない首を傾げるように体を折り曲げる。
 いつのまにか仕草から感情を読み取れるようになった俺は、今の飛び跳ねは、一緒にいる、という意味だと理解し嬉しくなった。
 ずっと一人ぼっちで寂しかった。毎日蝋燭に火をつけてくれる従者は一言も喋らないし、一週間経てばサージャが来るが、彼も言葉少ない。用が済めばすぐに出て行く。
 だから、魔物であれ、側にいてくれるスライムの存在は癒しであり、慰めだった。
 このままずっとスライムと一緒に神殿にいるのだろうか? いや……一緒にいられるのだろうか?
 俺の腹はなんの変化もない。
 もしこのまま孕まずにいたら……役に立たない俺に何が待ち受けているのか、考えたくもなかった。
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