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添い寝
為純がシャワーを浴びている間、バスタオルと大きめの服、新しい下着を持って目立つところに置いておく。服は一回り大きいサイズを買うことがあったし、下着は過去に友達からもらったものだが、サイズが大きくて使えないものがあったので、これなら為純にも大丈夫だろう。
食器を洗い終えて、鍋やフライパンを洗い終えた頃、為純が出てきた。
勇吾以上に引き締まった上半身裸の姿を見た瞬間顔が赤くなる。「服を着ろ、服を」と言い、それから水滴を滴らせながら歩く為純に「これ使え」とドライヤーを差し出した。
ところが為純は悪戯っぽい顔で「やるか?」とドライヤーを突き返した。
乗せられた気はしないでもないが、すぐに「やる」と言ってドライヤーを構える。上半身にはちゃんとシャツを着てもらい、座った為純の後ろに膝をついて立った。
どうすればいいのか悩みながら、まずはタオルで髪を挟んで優しく水滴を拭き取る。後頭部も髪を撫でるようにしてタオルを滑らせる。それから弱の温風にして頭から髪先にかけてゆっくりと吹きかけた。
指で梳くと濡れた髪は時折ひっかかる。ドライヤーを止め、針に糸を通すような繊細さで髪を解してから、再びドライヤーを当てる。前髪や耳の辺り、うなじの生え際まで、丁寧に指で梳いて髪を乾かした。
ドライヤーを止めた後も何度も梳いて指通りを確かめる。乾かした後でヘアオイルとかつけたりするのか訊こうとして、為純の首が前に傾いているのに気づいた。
横から覗けば、よほど気持ちがよかったのか、目を閉じて眠っている。こんなにも無防備な姿は珍しいと思いながら「おーい」と控えめに声をかけた。
瞼が震えた後「あ?」と小さな声が漏れて、為純が顔を上げる。
「もしかして眠っていたのか?」
顔を撫でて掠れた声で呟く。
「うん」
「信じられない。なかなか眠れないのに……」
「疲れてんじゃないか? 運転して帰れそう?」
「ああ、帰れる」
立ち上がろうとした為純の足が縺れたのを俺は見逃さなかった。
「ちょっと待て。心配だから少し寝ろ。なんなら泊まっていってもいいし」
為純の腕を引いて引き留める。
「明日も仕事だから……」
目を擦り、欠伸をしながら言う為純の背をくるっと反対側に向けて、無理やり寝室のほうへと向かわせる。ドアを開けて、為純の背中を押してベッドに座らせた。
「いいから寝ろ。ほら、横になって休め」
為純は何度か瞬いていたが、肩の力を抜いてベッドに横になる。
「ここは狭いが……居心地がいい」
「狭いのは余計だ。これでも一人なら十分なんだよ。ほら、寝ろ」
「行理の匂いがする……」
その言葉を最後に、為純は完全に目を閉じて眠ってしまった。
俺は音を立てないようにそっと寝室を出る。浴室に行くと、ちょうど俺の洗濯物が終わったので、かわりに為純が脱いだものを入れて洗濯をする。
為純が眠っているのを見たら、俺も眠くなってきた。
ただ、ベッドは一つしかないし、ソファもないから、今夜は床で寝ることになる。
まだ暖かいから床で寝ても寒くはないが、硬い床の上で眠れるだろうか?
考えても仕方がない。無理なら為純の脇にでもお邪魔させてもらおう。
洗濯が終わるのを待ちながら、ぼうっとこれからのことを考え、携帯電話でスケジュールの確認をする。
来月も順調に仕事が入っている。個人での仕事も増え、今では一人一人にマネージャーがついて行くことも多くなった。一番多いのは、明るくて話しやすく、人当たりがいい勇吾だが、俺にもなぜか雑誌の撮影が入ってある。
発情期は来月、ちゃんと休みも入れてあるし、今回は為純が京都に行くので言い訳を探さなくて済む。また一週間休むのでその後は忙しいだろうが、以前もなんとか乗り越えたので、今回もなんとかなるだろう。
喉が渇いたのでキッチンに行き、冷たいお茶を飲みながら、シンクの上に置かれた食器に目を留める。
前も思ったが、為純のまめさには本当に感心する。俺の誕生日も知っていてプレゼントもくれて手料理も食べさせてくれるなんて、友人の範疇を越えている。普通なら俺の誕生日なんて、ファンとかよほど親しくない限り知らないだろう。メンバーですら覚えているかどうか曖昧だし、現に俺は為純の誕生日を知らない。
本当に付き合っているならまだしも、付き合っているふりをしているだけの相手にここまでするだろうか?
一緒にいて飽きないとか言われたから、嫌われてはいないだろうし……というか、なんなら好意まで感じる。あくまでも友人としての範囲だが、嬉しいと感じてしまうのは、それだけ俺も為純を嫌がっていないということだ。今ではもう会うのが面倒とか思わない。逆に会いたいとすら思うのだから不思議だった。
リビングに戻ると今日買ってきた雑誌をめくって為純の誕生日を確認する。確か冬だったような気がしたが、過ぎていたらどうしようと思っていれば、まだまだ先だった。
為純からプレゼントをもらったのだから、当然渡さないといけないが、俺より稼ぎがよくて、なんでも持っているだろう彼に、何を贈れば喜んでくれるのかまったくわからない。
多分為純も悩んで、俺の部屋に食器とかないのを思い出して、自分も使えるものを選んだのだ。
冬なら定番のマフラーとか? それよりも消耗品がいいだろうか? 携帯電話で色々と検索するが、喜んでくれそうなものがない。
そうしているうちに為純の洗濯が終わった。日付も変わり、本当に眠くなってくる。
試しに床の上で横になってみるが、やはり硬すぎて眠れそうにない。寝室に行くと為純は気持ちよさそうに寝息を立てていた。静かにベッドに腰をかけて暫くその寝顔を見ていたが、眠くて隣に転がった。
狭いスペースではあるが、床よりは断然いい。せめてもう少し奥に詰めてほしいところだが、起こすわけにもいかず目を閉じる。
俺は瞬く間に眠りに落ちていた。
食器を洗い終えて、鍋やフライパンを洗い終えた頃、為純が出てきた。
勇吾以上に引き締まった上半身裸の姿を見た瞬間顔が赤くなる。「服を着ろ、服を」と言い、それから水滴を滴らせながら歩く為純に「これ使え」とドライヤーを差し出した。
ところが為純は悪戯っぽい顔で「やるか?」とドライヤーを突き返した。
乗せられた気はしないでもないが、すぐに「やる」と言ってドライヤーを構える。上半身にはちゃんとシャツを着てもらい、座った為純の後ろに膝をついて立った。
どうすればいいのか悩みながら、まずはタオルで髪を挟んで優しく水滴を拭き取る。後頭部も髪を撫でるようにしてタオルを滑らせる。それから弱の温風にして頭から髪先にかけてゆっくりと吹きかけた。
指で梳くと濡れた髪は時折ひっかかる。ドライヤーを止め、針に糸を通すような繊細さで髪を解してから、再びドライヤーを当てる。前髪や耳の辺り、うなじの生え際まで、丁寧に指で梳いて髪を乾かした。
ドライヤーを止めた後も何度も梳いて指通りを確かめる。乾かした後でヘアオイルとかつけたりするのか訊こうとして、為純の首が前に傾いているのに気づいた。
横から覗けば、よほど気持ちがよかったのか、目を閉じて眠っている。こんなにも無防備な姿は珍しいと思いながら「おーい」と控えめに声をかけた。
瞼が震えた後「あ?」と小さな声が漏れて、為純が顔を上げる。
「もしかして眠っていたのか?」
顔を撫でて掠れた声で呟く。
「うん」
「信じられない。なかなか眠れないのに……」
「疲れてんじゃないか? 運転して帰れそう?」
「ああ、帰れる」
立ち上がろうとした為純の足が縺れたのを俺は見逃さなかった。
「ちょっと待て。心配だから少し寝ろ。なんなら泊まっていってもいいし」
為純の腕を引いて引き留める。
「明日も仕事だから……」
目を擦り、欠伸をしながら言う為純の背をくるっと反対側に向けて、無理やり寝室のほうへと向かわせる。ドアを開けて、為純の背中を押してベッドに座らせた。
「いいから寝ろ。ほら、横になって休め」
為純は何度か瞬いていたが、肩の力を抜いてベッドに横になる。
「ここは狭いが……居心地がいい」
「狭いのは余計だ。これでも一人なら十分なんだよ。ほら、寝ろ」
「行理の匂いがする……」
その言葉を最後に、為純は完全に目を閉じて眠ってしまった。
俺は音を立てないようにそっと寝室を出る。浴室に行くと、ちょうど俺の洗濯物が終わったので、かわりに為純が脱いだものを入れて洗濯をする。
為純が眠っているのを見たら、俺も眠くなってきた。
ただ、ベッドは一つしかないし、ソファもないから、今夜は床で寝ることになる。
まだ暖かいから床で寝ても寒くはないが、硬い床の上で眠れるだろうか?
考えても仕方がない。無理なら為純の脇にでもお邪魔させてもらおう。
洗濯が終わるのを待ちながら、ぼうっとこれからのことを考え、携帯電話でスケジュールの確認をする。
来月も順調に仕事が入っている。個人での仕事も増え、今では一人一人にマネージャーがついて行くことも多くなった。一番多いのは、明るくて話しやすく、人当たりがいい勇吾だが、俺にもなぜか雑誌の撮影が入ってある。
発情期は来月、ちゃんと休みも入れてあるし、今回は為純が京都に行くので言い訳を探さなくて済む。また一週間休むのでその後は忙しいだろうが、以前もなんとか乗り越えたので、今回もなんとかなるだろう。
喉が渇いたのでキッチンに行き、冷たいお茶を飲みながら、シンクの上に置かれた食器に目を留める。
前も思ったが、為純のまめさには本当に感心する。俺の誕生日も知っていてプレゼントもくれて手料理も食べさせてくれるなんて、友人の範疇を越えている。普通なら俺の誕生日なんて、ファンとかよほど親しくない限り知らないだろう。メンバーですら覚えているかどうか曖昧だし、現に俺は為純の誕生日を知らない。
本当に付き合っているならまだしも、付き合っているふりをしているだけの相手にここまでするだろうか?
一緒にいて飽きないとか言われたから、嫌われてはいないだろうし……というか、なんなら好意まで感じる。あくまでも友人としての範囲だが、嬉しいと感じてしまうのは、それだけ俺も為純を嫌がっていないということだ。今ではもう会うのが面倒とか思わない。逆に会いたいとすら思うのだから不思議だった。
リビングに戻ると今日買ってきた雑誌をめくって為純の誕生日を確認する。確か冬だったような気がしたが、過ぎていたらどうしようと思っていれば、まだまだ先だった。
為純からプレゼントをもらったのだから、当然渡さないといけないが、俺より稼ぎがよくて、なんでも持っているだろう彼に、何を贈れば喜んでくれるのかまったくわからない。
多分為純も悩んで、俺の部屋に食器とかないのを思い出して、自分も使えるものを選んだのだ。
冬なら定番のマフラーとか? それよりも消耗品がいいだろうか? 携帯電話で色々と検索するが、喜んでくれそうなものがない。
そうしているうちに為純の洗濯が終わった。日付も変わり、本当に眠くなってくる。
試しに床の上で横になってみるが、やはり硬すぎて眠れそうにない。寝室に行くと為純は気持ちよさそうに寝息を立てていた。静かにベッドに腰をかけて暫くその寝顔を見ていたが、眠くて隣に転がった。
狭いスペースではあるが、床よりは断然いい。せめてもう少し奥に詰めてほしいところだが、起こすわけにもいかず目を閉じる。
俺は瞬く間に眠りに落ちていた。
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