流行りのオモチャを買わされたら、そのオモチャが擬人化しました!

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第一章 日常ラブコメ編

第3話 結局、空気には逆らえなかった

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 な、何を言っているんだ? こいつは! 「俺の恋人になってあげる」って……くっ! 舐めているにも程がある。こいつは、俺の事をバカにしているんだ。ただの人間である、俺を。まるで神様みたいに、上から「クスクス」と笑っているに違いない。

 俺の中で殺意が芽生える。
 
 俺はその殺気を抑えながら、相手の目を鋭く、そして、乱暴に睨みつけた。

「どうして?」

「ん?」

 の声にまた、苛立った。

「俺なんかの恋人になろうとするんだ?」

 彼女は優しげな顔で、俺の目を見かえした。

「あなたに一目惚れしたから」

「ふぇ?」

 お、俺に?

「まさか! 俺は、ただの」

「男子高校生?」

「ああ」とうなずく自分が、悔しかった。「本当に何処にでもいる。なのに」

 彼女は、俺の言葉に首を振った。

「それでも、あなたの事が好きになった。モノフルの特性に影響されて。モノフルは、その擬人化に関わった人を」

「う、うっ」

「無条件で好きになる」

 を聞いた瞬間、俺の気持ちが暗くなった。何だよ? 「無条件で好きになる」とか言ってさ、そんなのは単なる本能じゃないか? 
 人間が飯を食うのと同じように、俺の事を好きになったのも。真っ黒な気持ちが広がっていく。ぶっちゃけ(俺も年頃の男子だからさ)異性からの告白には憧れていたけど……くっ! こんな告白はあんまりだ。

 俺は、机の上を叩いた。

「出て行け!」

 と言ってから、彼女にいくらかの金を渡す。

「その金は、自由に使って良いから」

 俺は部屋の床に座ると、まるでガキのように、「う、ううう」と唸りつづけた。

 彼女は、その姿を見下ろした。

「お金は、要らない」

 返す、と言ってから、彼女は、俺に金を返した。

「私は、あなたを愛するだけだから」

 一瞬、息が止まりかけた。彼女の言葉が、俺の胸にグサリと刺さったからだ。

 俺は拒めば良いのに、周りの空気に流される(逆らえない)……例の悪い癖が出て、目の前の彼女に「他の奴は、どうでも良いのか?」と訊いてしまった。

 彼女は、その質問に「ええ」と答えた。

「『友情』は芽生えるかも知れないけど、あなた以外に恋する事はない」

 俺は、その答えに折れた。「これ以上は、何を言っても無駄だ」と。さっきまで「絶対に追い出す」と決めていた気持ちは、彼女の笑顔と共にすっかり消えてしまった。

 俺は、ベッドの側面に寄り掛かった。

「分かったよ。もう、好きにして良い」

 彼女の顔が華やいだ。

「ありがとう」

 彼女は俺の隣に座り、その手に(そっと)自分の手を乗せた。

 俺はその感触にドキッとしたが、ふとある事を思い出すと、不安な顔で彼女の顔に目をやった。

「な、なぁ?」

「なに?」

「お前って……その、一応人間なんだよな?」

「基本的には。でも、一部の機能は違う」

 彼女は、俺の目を見つめた。

「私……いえ、私達は、食事をしなくても生きていける。人間のように」

「水はもちろん、食い物も要らないってわけか?」

「睡眠は、流石に必要だけど。それに」

 彼女は、俺の目をまた見つめて……。彼女の唇が触れたのは、それからすぐの事だった。俺の唇に残る、「甘美」に似た感触。

 俺は、その感触にドギマギした。

「なっ、えっ?」

「こっちの欲求もある。あなたが望むなら」

 と言っている間に、彼女の顔が近づいてきた。

「今すぐ、一線を越えても良い」

 頭の冷却装置が壊れた。本能のそれもオーバーヒート。唯一残っていたのは、「待て(汗)!待て(汗)!」と抑える制御装置だけだった。
 
 俺はその制御装置に縋りつつ、彼女の体を少しだけ離し、自分の気持ちを何とか落ち着かせた。

「い、一線はダメだ! 俺、まだ高校生だし。そう言うのは、金を稼げるようになって」

「分かった。それまでは、待つ」

「ふうっ」と安心する一方、「これってチャンスだったのでは?」と思ったのは内緒だ。

 俺は、彼女の目から視線を逸らした。

「これからどうするんだ?」

「この家にいる」

「この家に?」

「ええ」

「それは、いくら何でも無理だろう。家には、親もいるんだぜ?」

「大丈夫」

 彼女は、床の上から立ち上がった。

「これに戻れば良いんだから」

 と言ってからすぐ、彼女の体が光り出した。まるで彼女の体を包み込むように。光は彼女の体を数秒ほど照らすと、その光をゆっくりと消していった。

 俺は床の上に転がる、一個のキューブを見下ろした。

「こ、これは?」

「私の元の形。一度擬人化したモノフルは、いつでも元の姿に戻る事ができる。その姿からまた、擬人化する事も」

「へ、へぇ。それは、便利だな」

 俺は床のキューブを拾い、机の上に置いた。

 彼女は、俺に話しかけた。

「時任君」

「なんだ?」

土曜日あした、私とデートしましょう」

「なっ!」と驚いたものの、返事の方は既に決まっていた。

 俺は彼女の正面(だと思う。たぶん)を見つめると、真面目な顔で自分の頭を掻いた。

「ああ、良いよ。俺と一緒にデートしよう」

 彼女が「クス」と笑った、気がした。
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