流行りのオモチャを買わされたら、そのオモチャが擬人化しました!

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第一章 日常ラブコメ編

第15話 私も一緒に入る

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 その作業は、楽しくはなかった。いくら文章の羅列とは、言っても。その一つ一つを書くのは、自分の魂を削るくらい大変な作業だった。
 魂の一部を切り裂いて、それを真っ白な紙に貼り付けるくらい。これを楽しくやれる奴は、本物の変態か、あるいは、相当の馬鹿だろう。
 
 自分の魂を削るなんて、正気の沙汰ではない。その意味では、藤岡は凄い奴だった。毎日、毎日、パソコンの画面に文字を打ちこんで。アイツが何を書いているのかは知らないが、きっと俺よりも上品……いや、高尚な文章なんだろう。
 そこら辺にいる作家志望とは、違って。その一文字一文字に魂を込めている。自分の中にある理想を、そして、これだけは譲れない信念を。余す事なく、その文章に注いでいるのだ。
 
 俺は心の底から、藤岡の事を尊敬した。

「藤岡は、天才だ。それに」

 自分ってヤツをちゃんと持っている。周りの連中から何を言われても(俺の仲間曰く、アイツはクラスで浮いているらしい)。アイツが執筆を止めた事はない。雨の日も、風の日も。決まって部室を訪れては、パソコンの電源を入れ、その画面に文章を打ちこんでいた。
 
 俺は、その姿に胸を打たれた。

「それに比べて」

 俺は一体、何をやっているのだろう? 周りの空気に流されて。
 ラミアと出会えたのも、自分の意思ではなく、偶然がなせる技、「運命」と言う名の糸を引き寄せただけだ。仲間の誘いに促されるように。
 俺がやった事と言ったら、店の会計所にオモチャを持って行って、その代金を払っただけだ。

 真っ黒な感情が心に広がる。
 
 俺はその感情から逃げるように、右手のペンを動かしつづけた。
「はぁ」と、溜め息を一つ。途中で休憩もとへ、晩飯を食べに行ったが、それでも疲れるものは疲れた。

 椅子の背もたれに寄り掛かる。時間の方はもう、夜の十一時を回っていた。
 
 俺は、部屋の天井を見上げた。

「おわ」

「らないの?」

 ラミアは、俺の顔を覗き込んだ。

 俺は、その顔にドキッとした。

「あ、ああ。細かい所まで書こうと思うと」

 どうしても、文章量が多くなる。

「創作って言うのは、本当に大変なんだな」

「確かに。でも」

「でも?」

「だからこそ、やりがいがある。形の無い物に形を与えるのは」

「俺は、別に神様じゃねぇのに」

 彼女は、俺の言葉に首を振った。

「神様なんかにならなくて良い。あなたは、人間の方が似合っているから」

 彼女の言葉に思わず笑ってしまう、俺。

「ラミアが言うと、何だか説得力があるな」

「そう?」

「ああ」

 俺達は互いの目を見合ったが、やがて「フフッ」と笑い出した。

「時任君」

「ん?」

「私も、人間の方が良かった?」

 彼女の質問にドキッとするも、答えの方は既に決まっていた。

「いや。たぶん、人間だと……ラミアは、俺と出会わなかったと思う」

「なぜ?」

 と聞かれるのは意外だが……まあ一応、答えておこう。

「だって、すげぇ美少女じゃん? ラミア」

「え?」と驚いた彼女は、どんなアニメ絵よりも可愛かった。「美少女?」

「うん。美少女って言うのは、ほら? 大抵は、イケメンと付き合うもんだろう?
 だから」

 ラミアは、俺の言葉に俯いた。

「それは、人間の価値観。私達は、人間とは違う」

「ラミア……」

 彼女は「クスッ」と微笑んで、俺の頭を抱きしめた。
 胸の感触が、やっぱり心地よい。下半身のアレが反応しないわけではないけど。彼女の胸には(慣れた部分もあるのか)、俺を安心させる何かがあった。

「もう良いよ」と、彼女の背中を撫でる。

 俺は彼女の腕から離れて、椅子の上から立ち上がった。

「風呂、行って来る」

「そう。なら」

 彼女は、俺の隣に並んだ。

「私も一緒に入る」

「ふぇ!」と、今度は本気で驚いた。「お、俺と一緒に?」

「ええ。私もまだ、入っていなかったから」

 じゃ、ねぇよ!

「ラミア! それは、いくら何でも不味い」

「どうして?」

「『どうして』って?」

 一緒に入るって事は。

「色々と不味いだろう?」

「私は、不味いとは思わない。お互いの身体を見せ合うのは」

「くっ! それが『不味い』って言っているんだよ!」

 俺は彼女の行動を拒んだが、結局は一緒に入る事になった。
 目の前に立つ、彼女の身体。彼女の身体は(何度も言うが)やっぱり美しく、俺が自分のアレを必死に隠しても、それに動じる所か、その裸体をますます見せつけるように、俺の欲望を誘惑し、そして、本能そのものを刺激した。
 普通の男なら、ここで一戦交えてしまう程に。
 
 俺はその誘惑に屈する事無く、彼女の身体をできるだけ見ないようにして、今日の風呂をゆっくりと味わいつづけた。
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