流行りのオモチャを買わされたら、そのオモチャが擬人化しました!

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第一章 日常ラブコメ編

第16話 頼みって、何だよ?

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 女の裸には慣れた、なんて言えたら格好いいよな? 色んな女にモテモテで。そいつの周りには、いつも女達が歩いている。
 学校で一番の美少女から、本当は可愛い隠れ美人まで。そいつは自分が何故モテているのかも分からず、ただ毎日のラッキーイベントに悩みつづけている。

「俺は全然ついていない」とか、ほざいてさ。本当は、誰よりもついているのに。そいつにとっての幸運は、毎日が平凡に、そして、普通に流れて行く事だった。
 それを見ている周りが、どう思っているのかも知らないで。そいつは……うん、もう良いか。そんな奴の事を考えても、俺の人生が変わるわけではないし。考えるだけでも、無駄な事はある。
 
 俺は鞄の中に彼女、キューブ状態になったラミアを仕舞い入れると、いつもやっている朝の準備を終わらせて、庭の自転車に跨がり、憂鬱な顔でいつもの学校に向かった。
 
 だが……なんでまた、注意されるかね? 
 
 学校の校門に入ろうとした瞬間、例の神崎宇美に「待ちなさい」と呼び止められてしまった。

 自転車の上から降りる。
 
 俺は彼女の顔を見ると、憂鬱な顔で右の頬を掻いた。

「何だよ?」

「あの子は?」

 あの子? と訊こうとしたが、その瞬間に「ああ」と理解した。

「ラミアの事か?」

「そう! 今日は、あの子と一緒じゃないの?」

 俺は、背中の鞄を叩いた。

「ああ、この中に入っているよ。家に置いてくるのは、流石に退屈すると思ってさ。それがなに?」

 神崎の顔が歪んだ。

「不純異性行為」

「え?」

「不純異性行為! 学校に関係ない物を持ってくるなんて」

「ああ?」

 俺は、彼女の目を睨んだ。

 今の言葉は、どうしても許せない。

 俺は自転車のハンドルに手(右手だけ放していた)を戻すと、不機嫌な顔でそのハンドルを握り締めた。

「ラミアが神崎に何かしたのか?」

「くっ」

「何もしていないんだろう? なら、良いじゃねぇか? クラスの奴らとも仲良くしているみてぇだし」

 それじゃ……と、俺は、神崎の前から歩き出した。

「自転車停めなきゃいけねぇし。俺、もう行くわ」

「あっ、ちょっと!」

 神崎は、俺の背中に叫んだ。

「私は、絶対に認めないから!」

 俺はその声を無視し、学校の駐輪場に自転車を停めて、それから自分の教室に行った。教室の中には、いつものグループが集まっていた。男子の中でも強いグループは後ろ側に、女子の強グループも教室の前側に集まっている。
 真ん中辺りに集まっているのは、そのどちらにも属さない奴か、グループこそ作っているけれど、彼らよりは目立たない奴らだった。
 
 俺はそれらのグループに挨拶してからすぐ、自分の席に行って、鞄の中から必要な道具を取り出し、教科書は机の中、「彼女」はキューブ状態のまま、昨日彼女が一緒に帰ったグループの所に持って行った(次の日も、一緒に話す約束をしたらしい)。

「先生が来たら、すぐに隠せよ?」

「分かっているって!」と、うなずく女子達。「そこら辺は、抜かりないからさ!」

 女子達は、机の上に置かれた「彼女」と仲良くお喋りしはじめた。

 俺はその様子をしばらく見ていたが、仲間の一人に話し掛けられると、そいつの顔に視線を移して、その仲間がいる所に歩み寄った。

「何だよ?」

 そいつは、俺の耳元に口を近づけた。

「実は……その、お前に頼みがあるんだ」

「頼み?」

 俺も、そいつと同じように喋った。

「頼みって、何だよ?」

 そいつは、俺の言葉に赤くなった。

「放課後、少しで良い。俺の挑戦に付き合ってくれ」

「お前の挑戦に?」

「そう! 俺の挑戦に」

 俺は、そいつの挑戦が何となく察せられた。

「何だよ。お前も、彼女が欲しいのか?」

「うううっ」と、涙目になるそいつ。「だって」

 そいつは、俺の肩を揺らした。

「お前ばっかり狡いじゃないか! あんなに可愛い彼女を手に入れて」

「うっ」

 俺は、「彼女」のワードに動揺してしまった。

「ラミアは、彼女じゃねぇよ」

「でも、彼女に好かれているんだろう?」

「ああ」とうなずいた時は、物凄く恥ずかしかった。「ラミアの話じゃあな」

「うっ」

 そいつは、俺の肩から手を放した。

「俺にも、その幸せを分けて欲しい」

 俺は、そいつの言葉に戸惑った。今の空気から考えて……断るのは、まず不可能だろう。そう言う空気がひしひしと伝わってくるし、(擬人化の特性は知っている筈だが)俺の悪い癖が、今のような空気を断れない性格が、そいつの思いに「分かったよ」とうなずかせてしまった。
 
 俺の言葉に表情が晴れる、そいつ。
 
 そいつは嬉しそうな顔で、俺の背中を何度か叩いた。

「流石、時任君! 空気の分かる男」

 俺はその言葉に呆れつつ、自分の性格に溜め息をついた。
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