流行りのオモチャを買わされたら、そのオモチャが擬人化しました!

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第一章 日常ラブコメ編

第17話 ラブコメに必要なのはね、ルール無用の争奪戦なんだ

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 放課後の約束も大事といや大事だが、俺にはそれ以上に大事な事があった。「自分の作品を書き上げる」と言う。昨日の夜に頑張った成果は……「作品」とはまで行かないまでも、人に見せられる(かも知れない)プロット、その骨組みを書き上げる事ができた。 
 
 骨組みの内容は、本当に雑だけど。内容の最初は、俺がラミアと出会って、その総称を聞いた所から始まった。「私は、モノフル。流行の作りだす力が集まって、キューブが擬人化した存在」と。その言葉が、今の不可思議な日常を作りだし、俺に「恋人(みたいなモノ)」と言う物をもたらした。

 今まで彼女すらできなかった俺に。絶世の美女もとへ、美少女を与えてくれたのだ。俺の意思は、まったく無視して。それこそ……まあいい。今は、文芸部に行かなくては。ノートに殴り書きしたプロットモドキを持って、文芸部の部室に向かう。部室の中ではやはり、藤岡がパソコンの画面に文字を打っていた。
 
 俺はいつもの席に座り、鞄の中からプロットモドキを取り出した。

「作品はまだ、書いていないけど」

 から数秒ほど黙る、俺。

「プロットは、作った。あとで作品が書きやすいように」

「そ、そう」とうなずいた藤岡の顔は、今まで見てきたどんな表情よりも可愛かった。「な、なら、あとは書くだけだね?」

「ああ? うん。だけど」

「ん?」

「これだけで書けるかな?」

 藤岡は俺の顔に視線を移し、パソコンも脇に置いて、俺に「見せてみて」と言った。

「プ、プロットを見れば、大体の事は分かる」

「そ、そう?」

 俺は、彼女にプロットモドキを渡した。

「こんな感じだけど?」

 彼女は、俺の書いたプロットを読みはじめた。まるでプロの……マジで現役の編集者だ。確認の集中力が違う。
 それを読んでどう思っているかは分からないけど、時折聞こえる「ふんふん」の声には、作家の心臓をビビらせる、脅しのようなモノが含まれていた。

 その脅しに生唾を呑む。
 
 俺は不安な顔で、目の前の少女に「ど、どうだ?」と訊いた。

「つまんない?」

 ここは、「面白いだろう?」ってツッコミはなしだ。だって、まったく自信ないし。「つまんない?」って聞く方が自然だろう? だからその感想を聞いた時も、がっかりはしないが、「マジで!」と嬉しがる事もなかった。

 藤岡は机の上に「それ」を置いて、俺の顔に視線を戻した。

「ふ、普通……って言うより、ちょっと一本調子かな?」

「一本調子?」

「うん」

 彼女は、俺の目を見つめた。

「時任君」

「ああん?」

「時任君が書きたいのは、ラブコメ……主人公とヒロインがただイチャイチャする話なの?」

 彼女の質問に固まる。自分では、そんなつもりはなかったけど、うーん。確かに……俺とラミアの日常を書き殴っただけでは、そう思われても仕方ない。俺達には(特に)恋の障害も無いし、二人の仲を引き裂く好敵手もいないのだ。
 
 障害も、好敵手もいないラブコメは、単なる作者の妄想、ほのぼの系のラブコメに過ぎない。俺としては、そう言う話でも良いけど。文章に魂を込めている藤岡には、そう言う話はお気に召さなかったようだ。
 
 藤岡は不満げな顔で、俺にプロットモドキを返した。

「ラブコメを書くなら、もっとヒロインを増やさなきゃ」

「ふぇ?」

 斜め上の答えに思わず驚いてしまった。

「ヒ、ヒロインを増やす?」

「そうだよ! たった一人の主人公を奪い合う。ラブコメに必要なのはね、ルール無用の争奪戦なんだ。ヒロイン達は、あらゆる手段を使って」

「ちょ!」

 俺は、(何故か興奮気味の)彼女を落ち着かせた。

「お前の趣味を否定するつもりはないが。俺は、そう言う話は苦手だぞ?」

 そりゃ、「モテたい」って願望はあるが。それだって!

「俺は、一人の女と真剣に付き合いたいんだ」

「時任君の趣味は、聞いていない!」

 藤岡は、机の上を叩いた。ヤバイ! 理由は良く分からないが、今日の藤岡は(って言うか、そう言うキャラだったのね)、これまでにないくらい荒ぶっていた。

「読者は、修羅場を求めているんだよ? 別に付き合っているわけじゃないのに……そう言う展開は、説明しなくても分かるよね?」

「あ、ああ、何となく。全員、何故か彼女面するんだろう? 『私の男を盗るな!』ってさ」

「そう! 時任君の話には、その修羅場が足りません! 読者のみんながドキドキするような」

 彼女は、椅子の上から勢いよく立ち上がった。

「時任君!」

「は、はい!」

「部長命令です! 来週までにこのプロットを書き直して下さい!」

「えぇええ!」

 俺は彼女の命令に反論しようとしたが……ここから先はもう、言わなくても分かるだろう? 例の悪い癖が出て、反論するどころか、その言葉に「分かったよ。書き直します」とうなずいてしまった。
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