流行りのオモチャを買わされたら、そのオモチャが擬人化しました!

読み方は自由

文字の大きさ
20 / 61
第一章 日常ラブコメ編

第18話 来い。来い、来い、来い、来い!

しおりを挟む
 もう、アレだ。絶望する余力も無い。ただ、無気力な空気が流れる。俺のやる気、根気、生きる気を無くす空気が。周りの空気に溶けて、綺麗さっぱり消えてしまった。残っているのは、「仲間との約束を果たさなきゃ」と言う現実のみ。

 ……はぁ。今日の俺は、なんてついていないんだろう? 昨日の夜に書いたプロットモドキは、没になるし。ラミアが女子達と楽しげに帰ったのは救いだが(今日も一緒に帰る約束をしたらしい)、それ以外は文字通りの地獄、地獄を超えた大地獄しかなかった。仲間の挑戦に付き合うのも正直、かなり億劫だし。面倒くさい事この上ない。

「はぁ……」

 俺は憂鬱な顔で、仲間の所に向かった。

「オッス」

 仲間は、俺の登場に喜んだ。

「よぉ。待っていたぜ、親友」

 お前の親友になったつもりはないが。
 まあいい。今は、そう言う事にしておいてやろう。
 
 俺は仲間の導きに従って、町のホビーショップに向かった。ホビーショップの中は、混んではいないものの、それなりに人が入っていた。俺達よりもずっと若い小学生から、見るからにそれらしいおっさんまで。おっさんの近くには、それを嘲笑う女性客達が立っていた。
 
 俺はそれらの光景を無視しつつ、仲間と連れ立って「キューブマニア」のある売り場に向かった。売り場は、会計所の近くにあった。売り場の前には、たくさんの客が並んでいて。会計所の前も、オモチャを買う客達の姿で溢れていた。
 
 俺はその光景に呆れたが、仲間の方は冷静に……いや、気合い十分にキューブマニアの袋を持つと(あまりに人気の為、お一人様一個までになっている)、会計所の列に並び、自分の順番が来るのをじっと待ちはじめた。

「来い。来い、来い、来い、来い!」

 仲間は、自分の選んだオモチャに願掛けした。

「モノフルに選ばれた奴と一緒に買いに来たんだ。俺だって」

 俺は、その発言に溜め息をついた。

「当たるかどうかは、分かんねぇだろう?」

 いくら、俺と一緒に来たからって。
 お前も、「選ばれた人間」になれるとは限らない。
 
 俺は内心でそう思いつつ、仲間の挑戦をそっと見守りつづけた。だが……現実は、そんなに甘くない。袋を開けた所までは良かったが、そのオモチャを取り出した瞬間、仲間の顔が絶望に、見るも哀れな状態になった。
 仲間が引き当てたのは、みんなの憧れるスペシャルレア(金色だ)だったのに。今のそいつには、それがゴミ屑以下の、単なる物体でしかなかった。
 
 気まずい空気が流れる。俺もどう反応して良いか、分からない空気が。
 
 俺はその空気に苦笑したが、「とりあえず励ました方が良いだろう」と思って、彼の背中をそっと(できるだけ優しく)叩いた。

「ま、まあ、仕方ねぇよ。挑戦には、失敗が付き物だし」

 仲間は、俺の声に応えなかった。

「うううっ」と唸った声が、何とも痛々しい。ついでに「ちくしょう!」と叫んだ声も。
 
 彼は俺の目を睨むと、悔しげな顔で俺にキューブを渡した。

「はい」

「え?」と、驚く俺。「い、良いのか?」

「良いよ」

 仲間はまた、「わんわん」と泣きはじめた。

「美少女にならないオモチャなんて。たとえ、レアでもスペシャルゴミだ」

 スペシャルゴミに少し笑いかけたが、ギリギリの所で押しとどめた。

「やるよ」

「え?」

「それを貰って、うううっ。また、女の子とイチャコラすれば良いんだ!」

 仲間は俺の制止も聞かず、まるで子どものように、店の中から出て行った。

 俺は、右手のキューブを見つめた。

 金色に輝く、スペシャルレアのキューブを。

 俺はそのキューブをしばらく眺めたが、周りの小学生達が「あっ! スペシャルレアだ」と騒ぎはじめたので、鞄の中に「それ」を仕舞い、急いで自分の家に帰った。

「た、ただいまぁ」

「おかえりなさい」と、母ちゃん。「今日も、帰りが別なんだね?」

 母ちゃんは、俺から弁当箱を受け取った。

 俺は制服のワイシャツを脱ぐと、いつもの調子で、洗濯機の中に「それ」を放り込んだ。

「ああ、クラスの女子に気に入られたみたいで。帰るのも、昨日と同じくらいだと思うよ?」

「ふうん。そっか」

 母ちゃんは、嬉しそうに笑った。俺もそれに笑いかえし、自分の部屋に行った。
部屋に行った後は、近くのハンガーに制服を掛けて、いつものジャージに着替えた。

 俺は鞄の中からキューブを取りだし、机の上に「それ」を置いた。

「まさか、な」

 二人目も出現するなんて。

「そんな」

 事は、どうやらあり得たようだった。突然光り出す、机のキューブ。キューブは部屋の真ん中くらいまで飛んで、その姿をゆっくりと変えて行った。

 ラミアとはまた違う、金髪の美しい少女に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...