流行りのオモチャを買わされたら、そのオモチャが擬人化しました!

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第一章 日常ラブコメ編

第38話 面白い事になってきましたね

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 ハーレム系の主人公は、正直に言って嫌いだった。アイツらは特に努力しなくても、魅力的なヒロインにどんどんモテていく。しかも、「ラッキースケベ」と言うおまけ付きで。どんな事をしても、ヒロインに嫌われないのだ。

 それどころか、その行為ですら悦ぶヒロインがいて。奴らは脳内に仕掛けられた装置、あるいは魔法か何かで主人公以外に惚れる事ができなのだ。すべての現象が、主人公にとって都合良く回るように。

 その気持ちすらも、厳しく管理されている。彼女達に「浮気」と言う概念は、存在しないのだ。恋敵になるようなイケメンキャラが出て来ても、その大半がクズ野郎、性格の部分に難がある奴ばかりで、主人公が相対的に善人、あるいはマシに見えてしまう。「本当は、主人公も大して変わらない」って言うのに。

 俺がもし、物語のヒロインなら……って、仮定の話をしても仕方ないか。今、考えるべきは、目の前で起った現実の事。目の前で起った現実は、俺にとって都合良く、ある意味で都合の悪い事だった。「人間とモノフル、その両方から好かれている」と言う。
 
 俺は、その現実に頭を悩ませた。

「う、ううう」

 神崎はその声に驚き、慌てて俺の頬に触れた。

「大丈夫? 何処か具合でも悪いの?」

「い、いや、大丈夫」

 俺は急に愛らしくなった神崎に驚きつつ、あくまで冷静に(を装って)「ちょっと目眩がしただけだからさ」と答えた。

 神崎はその答えにホッとし、俺の頬から手を放した。

「そう。なら、良かったんだけど」

 俺達は、互いの顔をしばらく見つめ合った。

「ホームルームに遅れた理由」

「ああ」と、今更になって気づいた。「ど、どうしよう?」

 俺達は、「うーん」と悩み合った。

「まあ……下手な言い訳を考えるより、素直に謝った方が良いだろう。『ホームルームに遅れてすいません』って。風紀委員のお前が遅れた事には、驚かれるだろうが。俺が上手い具合に誤魔化せば……たぶん、上手くいく筈だ」

「で、でも」

 俺は、彼女の頭を(もう自然に出来てしまう)撫でた。

「大丈夫。俺は、風紀委員に目を付けられた問題児だぞ?」

「う、うん」とうなずいた彼女が少し笑ったので、安心した。「そ、そうね」

「ああ」

 俺は「ニコッ」と笑って、彼女の隣に並び、揃って自分のクラスに向かった。クラスの中に入った時は案の定、物凄く叱られたが、俺が一芝居打ったお陰で、神崎の方は特に怒られずに済んだ。
 
 神崎は先生の説教が終わると、その頬を赤らめて、俺の耳元にそっと囁いた。

「ありがとう」

 彼女はニコニコ顔で、自分の席に座った。

 周りの連中は「それ」に驚いたが、恋愛事情に敏感らしい黒内グループは、その異変から「この事」を察しらしく、一時間目の授業が終わると、まるで異端審問のように「時任君」と言いながら俺を呼び出し、その中心部に俺を座らせた。

「神崎さんのアレ、時任君が絶対に関わっているよね?」

 俺は蛇に睨まれた蛙よろしく、その質問に「あ、ああ」と答えてしまった。

「ちょっと……その、色々あって」

「ふうん」

 黒内達(岸谷は除く)は、楽しそうに「クスクス」と笑った。

「これは、これは」

「面白い事になってきましたね」

「人間とモノフル、どっちが勝つか」

 彼女達はこのハーレム地獄を、恋愛ゲームの何かに思いはじめたようだった。

 俺は、彼女達の神経にただただ呆然とした。

「お前らなぁ」

 溜め息しかでない。岸谷の様子が変なのは気になったが、心身共に疲れて切っていた今の俺には、それを何とかするだけの余力は残っていなかった。

 俺は憂鬱な顔で自分の席に戻り、学校が昼休みになるまでの休み時間、机の上に突っ伏して、ただその時間が過ぎるのを待った。
 学校が昼休みになった時は、自分の弁当をさっさと平らげて、机の中から彼女を取りだし、例の空き教室に向かって歩き出したが、教室の外に出た所で、風紀委員の神崎に「待って」と止められてしまった。
 
 俺は、その声に振りかえった。

「な、なんだよ?」

「私の仕事、手伝って貰えないかしら?」

「え?」

 俺は、ポケットの中にキューブを仕舞った。

「風紀委員の仕事を?」

「ええ」と言いつつ、顔を赤らめる神崎。「所謂、昼休みデートって奴ね」

 そんなデートは聞いた事がないが、とりあえず「で、でも」と応えた。

「昼休みには、先約が」

 彼女の表情が変わった。

「不純異性行為! 学校内での淫らな行動は」

「うっ」

「先生に報告しても良いのよ?」

 俺は彼女の雰囲気に押され、ポケットの中からキューブを取り出すと、その彼女に向かって「ごめん。放課後には、埋め合わせするから」と謝り(反論の声も聞こえたが、何とか押さえ込んだ)、神崎の言葉に不本意ながらも従った。

「分かったよ。お前の仕事に付き合う」

「えへへ」

 神崎は、幸せそうに笑った。
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