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第一章 日常ラブコメ編
第40話 あなたは、どんな物語を書いているの?
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コ、コイツ、印税生活を狙ってやがる……なんて事はもちろん、ないだろう。純粋な将来の夢として。物書きを目指す者は、意外と多い(らしい)。自分の書いた作品が、世に認められる快感は……きっと、女をナンパするよりも気持ちいいのだろう。作家は、自分の知性と感性を売る職業だ。
どんなに読みにくい文章でも、それが却って味になり、人気を博した作品もあるらしい(藤岡曰く)。「○○節」とか「○○ワールド」とか言われながら。
書くのも読みのも嫌いな俺にとっては、本当に未知の世界、理解しがたい難解な世界だった。文章の力で、天下を目指す。
世にいる多くの物書き達は、その野望に震え、そして、その頂きを目指していた。パソコンの画面に何やら文字打っている藤岡も、その世界に憧れを抱いているに違いない。
俺は鞄の中からキューブを出すと、彼女の許可を貰い、チャーウェイに擬人化を促した。
チャーウェイは、その促しに従った。
「ううん! やっと擬人化できたよぉ!」
彼女は俺の腕に腕を絡ませ、子猫のように「ううん」と甘えはじめた。
俺はその感触、特にメロンの感触にドキドキした。
「あ、ああ。その、悪かったな」
「うんう」
彼女の目が輝いた。
「放課後、いっぱいデートできるし! それに」
彼女は(そっと)、俺に耳打ちした。
「今日は、キューブを買わなくても良いよね?」
俺はその言葉に驚いたが、謝罪の意味もあったので、藤岡に聞かれないか警戒しつつ、その声を落とし、彼女の耳元に向かって「ああ、良いぞ。今日は、放課後デートを楽しもう!」と囁いた。
チャーウェイは、その言葉に満足した。
「やったぁ! それじゃ、ファミレスに行こうよ! あたし、パフェが食べたいんだ!」
「了解。俺も丁度、コーヒーが飲みたかったし。それじゃ、ファミレスに行くか?」
「うん!」
俺達がそんな会話をしている間も、藤岡の指は止まらず、パソコンの画面に文字をいくつも打ちつづけていた。
藤岡はキーボードのエンターキーを押し、何やらプロットらしい物に線を引いて、パソコンの画面にまた視線を戻した。
「時任君」
と、呼ばれた時に少しビビってしまった俺。
「な、なんだよ?」
「収集の方は、順調に進んでいる?」
俺は心の動揺を抑え、その質問に答えた。
「あ、ああ、一応な。また、新しい仲間も増えたし」
「そう。なら、良かった。擬人化ハーレムは、決して珍しい物語じゃないけど。それを実際に味わったのなら別。あなたは、世の男性達が憧れる、夢のハーレム王になるんだ」
彼女は何処か嬉しそうな顔で、パソコンのキーボードを鳴らした。
俺は、その音に眉を寄せた。
「キューブの全種類を集めて。それを全部擬人化させたら、面白い話が書けるのかな?」
「もちろん!」と笑った彼女の顔は、驚く程自信に満ちていた。「最強の実体験だもん。オタクの妄想とは、全然違う!」
彼女は「ニコッ」と笑って、パソコンの画面にまた視線を戻した。
俺は、机の上に目を落とした。
「でも……実体験が、フィクションに勝るとは限らねぇだろう? 現に」
「ん?」
「藤岡が書いている話の方が、ずっと面白そうだしさ」
彼女の指が止まった。それに合わせて、チャーウェイが彼女に「ねぇ?」と話し掛けた。
「あなたは、どんな物語を書いているの?」
チャーウェイは浮き浮き顔で、彼女の答えを待った。
彼女の答えは、「ファンタジー」だった。
「一人の少年が、愛する少女を助けるために頑張る……正統派の。主人公はヒロインを助けてして、その想いを伝えるんだ」
「ふうん」
チャーウェイは、彼女の顔をまじまじと見た。
「あなたって、意外とロマンティストなんだね」
「なっ!」
藤岡の顔が赤くなった。
「私は……その、ロマンティストじゃない。『ただ、そう言う話の方がウケる』と思って」
「でも、憧れてはいるんでしょう?」
藤岡は、俺の顔をチラチラ見た。
「ま、まあ。追い掛けるよりは、追い掛けられる方が好きだし」
「ふうん」
チャーウェイは、彼女の表情から何かを読み取った(らしい)。
「あげないよ?」
藤岡の表情が変わった、気がした。
「わたしは、別に。でも、あげるのは嫌かな? 大切な部員が減っちゃうしね」
二人は無言で、互いの顔を見合った。
俺はその雰囲気に脅えなかったものの、二人が一体何を言っているのか、その意味はまったく分からなかった。
二人は互いに視線を逸らし合うと、一方は俺の肩に頭を乗せ、もう一方はパソコンのキーボードをまた打ちはじめた。
藤岡は部活の時間が終わるまで、それから一言も喋らなかった。
どんなに読みにくい文章でも、それが却って味になり、人気を博した作品もあるらしい(藤岡曰く)。「○○節」とか「○○ワールド」とか言われながら。
書くのも読みのも嫌いな俺にとっては、本当に未知の世界、理解しがたい難解な世界だった。文章の力で、天下を目指す。
世にいる多くの物書き達は、その野望に震え、そして、その頂きを目指していた。パソコンの画面に何やら文字打っている藤岡も、その世界に憧れを抱いているに違いない。
俺は鞄の中からキューブを出すと、彼女の許可を貰い、チャーウェイに擬人化を促した。
チャーウェイは、その促しに従った。
「ううん! やっと擬人化できたよぉ!」
彼女は俺の腕に腕を絡ませ、子猫のように「ううん」と甘えはじめた。
俺はその感触、特にメロンの感触にドキドキした。
「あ、ああ。その、悪かったな」
「うんう」
彼女の目が輝いた。
「放課後、いっぱいデートできるし! それに」
彼女は(そっと)、俺に耳打ちした。
「今日は、キューブを買わなくても良いよね?」
俺はその言葉に驚いたが、謝罪の意味もあったので、藤岡に聞かれないか警戒しつつ、その声を落とし、彼女の耳元に向かって「ああ、良いぞ。今日は、放課後デートを楽しもう!」と囁いた。
チャーウェイは、その言葉に満足した。
「やったぁ! それじゃ、ファミレスに行こうよ! あたし、パフェが食べたいんだ!」
「了解。俺も丁度、コーヒーが飲みたかったし。それじゃ、ファミレスに行くか?」
「うん!」
俺達がそんな会話をしている間も、藤岡の指は止まらず、パソコンの画面に文字をいくつも打ちつづけていた。
藤岡はキーボードのエンターキーを押し、何やらプロットらしい物に線を引いて、パソコンの画面にまた視線を戻した。
「時任君」
と、呼ばれた時に少しビビってしまった俺。
「な、なんだよ?」
「収集の方は、順調に進んでいる?」
俺は心の動揺を抑え、その質問に答えた。
「あ、ああ、一応な。また、新しい仲間も増えたし」
「そう。なら、良かった。擬人化ハーレムは、決して珍しい物語じゃないけど。それを実際に味わったのなら別。あなたは、世の男性達が憧れる、夢のハーレム王になるんだ」
彼女は何処か嬉しそうな顔で、パソコンのキーボードを鳴らした。
俺は、その音に眉を寄せた。
「キューブの全種類を集めて。それを全部擬人化させたら、面白い話が書けるのかな?」
「もちろん!」と笑った彼女の顔は、驚く程自信に満ちていた。「最強の実体験だもん。オタクの妄想とは、全然違う!」
彼女は「ニコッ」と笑って、パソコンの画面にまた視線を戻した。
俺は、机の上に目を落とした。
「でも……実体験が、フィクションに勝るとは限らねぇだろう? 現に」
「ん?」
「藤岡が書いている話の方が、ずっと面白そうだしさ」
彼女の指が止まった。それに合わせて、チャーウェイが彼女に「ねぇ?」と話し掛けた。
「あなたは、どんな物語を書いているの?」
チャーウェイは浮き浮き顔で、彼女の答えを待った。
彼女の答えは、「ファンタジー」だった。
「一人の少年が、愛する少女を助けるために頑張る……正統派の。主人公はヒロインを助けてして、その想いを伝えるんだ」
「ふうん」
チャーウェイは、彼女の顔をまじまじと見た。
「あなたって、意外とロマンティストなんだね」
「なっ!」
藤岡の顔が赤くなった。
「私は……その、ロマンティストじゃない。『ただ、そう言う話の方がウケる』と思って」
「でも、憧れてはいるんでしょう?」
藤岡は、俺の顔をチラチラ見た。
「ま、まあ。追い掛けるよりは、追い掛けられる方が好きだし」
「ふうん」
チャーウェイは、彼女の表情から何かを読み取った(らしい)。
「あげないよ?」
藤岡の表情が変わった、気がした。
「わたしは、別に。でも、あげるのは嫌かな? 大切な部員が減っちゃうしね」
二人は無言で、互いの顔を見合った。
俺はその雰囲気に脅えなかったものの、二人が一体何を言っているのか、その意味はまったく分からなかった。
二人は互いに視線を逸らし合うと、一方は俺の肩に頭を乗せ、もう一方はパソコンのキーボードをまた打ちはじめた。
藤岡は部活の時間が終わるまで、それから一言も喋らなかった。
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