寤寐思服(gobi-shihuku) 会いたくて会いたくて

伊織 蒼司

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お子様

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「ハナ?」

いつものように柔に膝枕をしながら寝顔を見ていた花色が、呼ばれたほうへと視線を向けた。

「カツ?」
そこには双子の弟の勝色がいた。隣には店で一度会った事のある強面の大男、剛の姿もあった。

「あいつ、お前と何度も巴屋に来てるな。どんな知り合いだ?」
眠っていたはずの柔が花色に問いかける。
「俺の双子の弟の、勝色」
「へえ、お前らも双子か。偶然だな、俺たちもだ。
あっちの大男は俺の双子の兄の剛だ」
柔が花色を見上げて笑った。
「剛、こいつが花色だ」
柔がどこか皮肉めいて剛に紹介すると、剛と花色が軽く会釈をした。
「俺は剛の双子の弟 柔だ。よろしくな、勝色」
手をヒラヒラさせて勝色に向かって柔が気だるげに自己紹介をすると、「あんた、あの時の」と柔に指をさして驚きを隠さなかった。

「さてと、これで顔合わせは終わったな。んじゃ、俺はもう少し寝るから」
「ふぁーー」と大きな欠伸をして、柔が眠りにつこうと花色の膝の上で寝返りをうった。その事で勝色と剛の前で手を繋いでいたことを思い出し、急に恥ずかしくなったらしい花色が、柔の手を解こうとした。しかし、柔がそれを許すはずがなかった。

「駄目だ、俺はもうお前の手を離さねえと決めたんだ」
花色の手を強く握ったまま、柔が再び寝息を立て始めた。
気恥ずかしさで頬を染めた花色に、気を利かせた勝色が剛を連れて去っていった。


いつもの如く惰眠を貪った柔が、だるそうに体を起こした。
「ここしばらく剛に痕付けてたのはお前の弟か。独占欲強いな」
柔が暗に示したのは、剛の首筋や前袷で隠すことのできない胸元にあるうっ血痕だったが、花色が言っている意味が分からないとばかりに小首をかしげた。

「お子様だからな」
ボソリと呟いた柔に少なからず不快の念を現す花色だった。

夜の営業の始まるよろず屋の厨房に戻った花色が、勝色にさっそく根掘り葉掘りと詮索くされた。

「やっぱりハナはあいつだったんだ。
なんとなくそんな気はしてたよ。
それで、ハナたちはどこまで?」
「どこまでって?」
「決まってるだろ、あれだよ、あれ。
手は繋いでたけど、まさかそれだけって事はないだろ?」
「何を言っているんだよ。
手を握ったことしかないよ。だいたいそれ以上って…」
花色が顔を真っ赤にして答えた。

「俺たちもう二十七だよ。本当にそれだけ?」
勝色が、信じられないという顔で花色を見ていた。
「そうだよ、悪いかよ」
居心地の悪い会話に、とうとう花色が不快感を露にした。

「ハナって、やっぱりお子様なんだ」
この日、一日に二度も出た『お子様』発言が花色を憤慨させた。

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