13 / 42
お子様
しおりを挟む「ハナ?」
いつものように柔に膝枕をしながら寝顔を見ていた花色が、呼ばれたほうへと視線を向けた。
「カツ?」
そこには双子の弟の勝色がいた。隣には店で一度会った事のある強面の大男、剛の姿もあった。
「あいつ、お前と何度も巴屋に来てるな。どんな知り合いだ?」
眠っていたはずの柔が花色に問いかける。
「俺の双子の弟の、勝色」
「へえ、お前らも双子か。偶然だな、俺たちもだ。
あっちの大男は俺の双子の兄の剛だ」
柔が花色を見上げて笑った。
「剛、こいつが花色だ」
柔がどこか皮肉めいて剛に紹介すると、剛と花色が軽く会釈をした。
「俺は剛の双子の弟 柔だ。よろしくな、勝色」
手をヒラヒラさせて勝色に向かって柔が気だるげに自己紹介をすると、「あんた、あの時の」と柔に指をさして驚きを隠さなかった。
「さてと、これで顔合わせは終わったな。んじゃ、俺はもう少し寝るから」
「ふぁーー」と大きな欠伸をして、柔が眠りにつこうと花色の膝の上で寝返りをうった。その事で勝色と剛の前で手を繋いでいたことを思い出し、急に恥ずかしくなったらしい花色が、柔の手を解こうとした。しかし、柔がそれを許すはずがなかった。
「駄目だ、俺はもうお前の手を離さねえと決めたんだ」
花色の手を強く握ったまま、柔が再び寝息を立て始めた。
気恥ずかしさで頬を染めた花色に、気を利かせた勝色が剛を連れて去っていった。
いつもの如く惰眠を貪った柔が、だるそうに体を起こした。
「ここしばらく剛に痕付けてたのはお前の弟か。独占欲強いな」
柔が暗に示したのは、剛の首筋や前袷で隠すことのできない胸元にあるうっ血痕だったが、花色が言っている意味が分からないとばかりに小首をかしげた。
「お子様だからな」
ボソリと呟いた柔に少なからず不快の念を現す花色だった。
夜の営業の始まるよろず屋の厨房に戻った花色が、勝色にさっそく根掘り葉掘りと詮索くされた。
「やっぱりハナはあいつだったんだ。
なんとなくそんな気はしてたよ。
それで、ハナたちはどこまで?」
「どこまでって?」
「決まってるだろ、あれだよ、あれ。
手は繋いでたけど、まさかそれだけって事はないだろ?」
「何を言っているんだよ。
手を握ったことしかないよ。だいたいそれ以上って…」
花色が顔を真っ赤にして答えた。
「俺たちもう二十七だよ。本当にそれだけ?」
勝色が、信じられないという顔で花色を見ていた。
「そうだよ、悪いかよ」
居心地の悪い会話に、とうとう花色が不快感を露にした。
「ハナって、やっぱりお子様なんだ」
この日、一日に二度も出た『お子様』発言が花色を憤慨させた。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる