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【花色】の不安 R18
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「俺、明日仕事が休みなんだ。良かったら、今夜俺の部屋に来ないか?」
柔が初めて花色の部屋訪れた。
初めて体を繋げてからも、柔の部屋に毎日昼休みに通っていた花色だが、柔といえば花色に膝枕をさせ、消えそうになると赤い印を再び付けるだけだった。
初めて柔に抱かれた後の花色からは、匂いたつばかりに色気が際立ち、よろず屋に戻る途中途中ですれ違う多くの男の目を引き付けた。それを目の当たりにした柔が、その日以降、花色を抱く事はなかった。
女郎屋の女将も花色を未だ諦めてはおらず、花色の姿を見るたびに狙いを定めているようだった。
花色の部屋に初めて入った柔が、ぐるりと辺りを見回すが、特に何かがあるわけではない普通の部屋だった。
「今日は、俺が柔、さんに触れても良い?」
恥じらいながらの花色に、柔が「ああ、お前の好きにしろよ」とぶっきらぼうに言い放った。
「ほんとに?」
どこか低めの花色の声色に引っかかりを覚え、いぶかしむ様な表情を浮かべた柔が深くは考えずに、「いいぜ」と花色に答えた。
柔の許しを得た花色の右手が迷うことなく柔の下肢に触れた、一瞬の出来事だった。
花色が柔のオスを口に含んだ。
予想だにしていなかった柔が驚愕の表情を浮かべた。
突然の花色の口淫に慌てふためいた柔が花色を引き剥がそうとするが、男としての弱い部分を責められ、がっちりと腰をホールドされては、どうする事もできずに花色の与える快楽に身を任せる事しかできないでいた。
「ハナ、いったいどうした、ハナ」
快楽に顔を歪ませながら問いかけるが、花色が柔の言葉に耳を傾けることはなく、いつもの清純さの欠片もないほど必死にむしゃぶりついていた。
「何があった、ハナ」
余裕のない柔の声が花色をますます興奮させたのか、舌のほかにも手も使い始めた。
「ハナ、お前にされたら、出ちまう」
余裕の無い柔の声が静まり返った部屋に響くが、音を立てて吸い付く花色のつたない口淫にかき消され、熱に浮かされた様に花色がぬめる舌をひたすらに動かし続けた。
「ダメだ、出ちまう」
苦しそうな柔の声を聞きながら、花色は口内に断続的に与えられる柔のご褒美を貰う事に必死になって舌を蠢かせた。
「離せ、ク…ッ」
とうとう堪えきれずに柔が花色の口内に快楽の証を放った。
珍しく息の上がった柔が戸惑いの表情を浮かべていた。
花色が柔の快楽の証を余すことなく口に含んだまま、今度は柔に口付けた。花色の意図に気づき、途端に離れようとする柔の頭を、そうはさせまいと花色が強く抱いた。花色の舌先が柔の頑なに閉じた唇を開かせようとするが、柔もそうはさせまいと抵抗する。
「ん、んん、ごくっ」
最終的に根負けした柔が、自分の放った快楽の証を二人で分け合って飲み下した。
「何すんだ、ハナ」
柔が花色の肩を掴んで問い詰ると、見る間に泣き顔になる花色に、再び柔が慌てふためいた。
「待て、泣くな。ハナ泣くな」
柔は嗚咽を洩らしながら泣き始めた花色に、白旗を振るしかなかった。
「どうしたってんだよ、ハナ。なにがあった」
しどろもどろの柔に、いつもの強引さは見られず、花色をただ抱きしめるだけだった。抱きしめられ、少し落ち着きを取り戻した花色が、真っ赤な目で柔を見つめた。
「俺のこと気持ち悪いって思ってるんだろ。
男の癖に女になりたいだなんて言った俺のことを!だからあれから触ってくれないんだろ?
それに柔は綺麗な女の人に人気だし、オコンさんとか」
「女郎屋なんだ、綺麗な女ぐらいはいるし、あのクソ女は綺麗でもなんでもない」
オコンを引き合いに出されたのが不満なのか、不貞腐れたように柔が呟いた。
「でも俺なんかよりずっと若くて綺麗な女の人たちに囲まれたら、きっとそっちが良いって思うんじゃないかって、俺、すっと不安で。
それに、俺の方が柔さんより年上で、たいして取り得もないし、気も強いし」
(お前の方がどんなクソ女よりも綺麗だし、とりえなんか要らねえくらい完璧だろ!)
柔が心の中で悪態をついた。
「ほんとに俺、ずっと不安で。
柔さんが俺なんかで満足できるのかなって、このままいたずらに時間だけが過ぎていくのかなって思ったら居ても立ってもいられなくって」
花色の目にはまた、涙が滲んでいた。
(馬鹿な、お前の方がいろんな奴に狙われてるんだぞ)と言いたい柔だったが、話がややこしくなるので口には出さなかった。
「ばっかやろう。十四年もお前に片思いしてた俺のほうが心配なんだ。
お前の首筋に赤い痕を残すのは『お前は俺のだ』って見せ付けて、他の奴がしゃしゃり出てこないように牽制しなけりゃなんないくらい俺はお前に惚れてんだ」
「でも、あれから…抱いてくれない……」
「--それは…俺に抱かれた後のお前が、色気垂れ流して野郎どもの目を引き付けるし、俺に抱かれるお前見てたら理性なんか吹っ飛んでお前に酷いことしちまいそうになるわで俺も不安で抱けなくなっちまった。
お前が、ハナが誰か他の奴に獲られちまったらって想像したら、益々抱くのが怖くなっちまって。
それがお前を不安にさせたならすまなかった」
「それに、俺は柔さんが始めてなのに、柔さんはなんだか手馴れてるし」
「俺だってお前が初めてだよ。
好きな奴の前でかっこ悪い真似なんかできるか!
だから女郎屋に来るヤブって町医者に聞いてたんだよ。お前の抱き方を。
俺の方が年下だし、お前を気持ちよくさせてえだろ!男としては」
と、不貞腐れた言い方の柔に(かわいいな)と思う花色だった。
「じゃあ、俺の事好き?」
花色の切実な問いかけに間髪入れずに柔が答える。
「俺はこの十四年もの間、お前一筋なんだよ。
じゃなきゃ、とっくに他の奴抱いて紛らしてるぜ」
柔の心の叫びのような告白を聞いた花色がまたしても目に涙を浮かべた。その仕草と表情に、今まで自らの気持ちを花色に伝えていない事に気がついた柔が、ハッとして神妙な面持ちになった。
「悪かった、これからはちゃんと言う。好きだ、花色。
十四年前のあの日から、お前の事が好きだ。
俺の初恋なんだからな、お前は。
お前以外は誰も要らない。そんぐれえ、お前が好きだ、花色」
その言葉を聞いた花色が、再び涙を浮かべた。
「ハナ、好きだ。俺はハナが好きだ」
花色と繋がりながら、柔が愛の言葉を囁いた。
柔にしがみ付きながら、花色が嬉しそうに熱い吐息を溢す。
「柔、柔」
花色が甘く切ない声で柔を呼んだ。
「俺を女にして!
早く柔の女になりたい。
俺の胎内にいっぱい出して」
涙ながらに訴える花色に、「もう、お前はとっくに俺の女だ。出すぞ」と唸るように言葉を搾り出し、柔が息を詰めて動きを止め、僅かに眉をひそめた。
「はあーっ。ああ、ああっ」
花色が気持ちよさそうに喘ぐ。
「俺の種付け、気持ちいいか?」
「うん、気持ちいい。
柔の女なんだって心も体も満たされる、この瞬間が一番気持ちいい」
花色が恍惚とした表情を浮かべたまま、素直な気持ちを言葉に表した。
「今日はお前に侘びを入れねえとな」
息が整い、ニヤリと笑みを浮かべた柔の笑みに、花色がごくりと喉を鳴らした。
柔に促されるようにお互いに起き上がり、布団の上に胡坐をかいた柔に背中を預けた花色が、柔の首筋におでこを擦りつけて体を預けた。
柔が体位を変えて後ろから挿入すると、硬さのない花色の性器がタラタラと精を零し始めた。柔の挿入による、条件反射的な射精行為に花色の体が順応し始めているようだった。しかも、胎内の柔の熱に意識を向けているためか、花色が自ら射精行為をしているという意識もないようだった。ゆっくりとした花色の射精が終わるのを待った柔が花色の性器へと手を伸ばした。
「そこは」
花色が嫌悪する場所に触れられた事で、花色の不安が体を硬直させた。
花色の戸惑う声色に、柔が宥めるように「安心しろ。ここも女にしてやるから」と花色に囁いた。
オスの色香を纏った声色で囁かれた花色の体がゆっくりと弛緩したのを合図に、柔が左手でつるりと皮を被る花色の性器を掴んで優しく剥き始めた。ゆるゆると上下に扱くと、慎ましく奥に潜んでいた亀頭が現れた。その間も柔は律動で花色を女として扱う。
「ここも綺麗だな」
柔の独り言に、柔の視線を感じた花色が羞恥に下肢を捩り始めたが、体の奥深くに楔を打たれ、揺さぶられ、柔の両手が花色の下肢にあっては、それも叶わない。花色の首筋に顔を埋めたままでは、現実逃避するかのように目を瞑るしか出来ないでいた。
柔が露出させた亀頭の裏筋側にたっぷりとワセリンを掬った右の人差し指の腹を宛がうと、捲れた皮を扱いて戻し始めた。花色の包皮が柔の人差し指の爪半分までを包み込んだのを確認すると、準備完了とばかりに皮の中で、花色の亀頭の裏筋側を優しく、持ち上げる様に撫で始めた。
花色が途端に啼き始めた。
「知ってるか?女にもおちんちんがあるんだぜ」
いつもは皮の奥深くで慎ましくしている敏感な部分を優しく擦られ、花色の体が一気に緊張した後、限界とばかりに脱力し、弛緩し、それを何度も繰り返しているうちに柔に支えられ、体を預けなければ、崩れ落ちてしまいそだった。次第にぬめりを伴った汁が、柔の指を銜えている皮の隙間から滲み始めた。いつもは皮に被ったままのため敏感すぎるのか、花色が生理的な涙を零しながら嬌声を上げる。時折、左右に首をふり、過ぎた快楽を逃すように嫌々をする。それでも、柔の指が剥き出しの快楽を引きずり出す動きを止めなかった。柔の下肢の動きと性器の刺激を交互に受ける花色が翻弄される。
初めて体を繋げた時も自慰をした事のない花色を気遣って、『ハナイロ』自身には触れなかった柔に責め立てられながらも、愛おしいように触れるその手つきに、花色の心が歓喜に震えていた。
「女みたいに濡れてきたな」
花色に聞かせるように耳元で囁きながらも、柔が指と下肢を動かし続ける。
「やぁっ、やぁ」
花色の言葉にならない喘ぎを、柔が指の動きに連動するように下肢を燻らせながら受け止める。柔の交わり方はもどかしいほどにゆったりとした動きで、柔の作り出す快楽を常に与え、花色の体の隅々にまで自らを刻みつける、まるで調教するかのようだった。
「俺の手、ぬるぬるにするほど気持ち良い?」
花色の耳朶を甘噛みし、時折舌を捻じ込みながら柔が花色の興奮を煽る。
「ああっ、っやっ」
柔の与える行為を従順に受け入れる花色が、柔に優しく揺さぶられる動きに身を任せ、だらりとした両手が柔の臀部にしがみ付くようにするりと回された。
「たまんねえな」
時折柔の左手が花色の左鼠径部をさわさわと撫で上げる。
「んああっ」
花色が堪らずに大きく喘いだ。
「そんなに俺の締め付けるくらい女のおちんちんが気持ち良い?」
前と後ろからしばらく花色を責め立てた柔の額に汗が滲み始めたころ、「柔、じゅう」と花色が甘く切なく柔の名を呼び始めた。
「柔、でる、漏れる。漏れる」
花色が涙目で柔に弱弱しく懇願した。
「いいぞ、見ててやるから」
柔が言い終わる間もなく、プシュ、プシュ、プシュ。
ビクンと大きく体を硬直させると、花色の亀頭の先端から小刻みに勢い良く何かが吐き出された。
「あっ、あっ、あっ」
吐き出すタイミングと同じリズムで花色も小さく喘ぎ、「んー」と最後に体を硬直させた。
すると柔が慌てたように下肢を打ちつけた。
花色の胎内の痙攣に引きずられた柔が花色の胎内で快楽の証を放ち、より奥深くに潜り込ませるように身を屈ませていた。
「クッ…持ってかれちまった…、あ…やばっ」
荒く息を吐き、今度は柔が花色の首元で独り言を呟いて下肢を断続的に打ち付けた。
「ああっ」
柔の雄の色香を纏う声と、突然の突き上げに感じた花色が、一際大きく啼いた。
「くっ、んっ、腰止まんねえ」
花色にしがみ付きながら、意思とは無関係に腰を振らされてしまった柔が、「また出る」とつぶやいて快楽に眉を顰め、あっという間に再び快楽の証を放った。
落ちるようにゆっくりと弛緩する花色の体を片手で抱き、もう片方の手で残渣を搾り出す柔の手の動きに反応してカクンカクンと花色の体が揺れ、「やあっ」と今度は反動で花色がブルリと体を震わせた。
強すぎる快楽のためか、花色が覚醒するのにしばらくの時間を要した。
花色の息が整うのを待った柔が、ぼんやりとしている花色を嬉しそうに覗き込む。
「上手に潮、噴けたな」
「しお?」
「女は気持ち良いと潮を噴くらしいんだが、やっぱりお前は俺の女だ。気持ち良かったか?」
「気持ちよかった、けど…もうアレはしたくない。俺のに、触るの禁止」
プイッと横を向いてしまった花色に「可愛かったんだけどな。でも暫くは封印しとくか」とためらいもなく柔が答えた。
長かった事後の余韻が引いた頃合を見計らって、柔が花色の手ぬぐいで花色の体を清め始めた。
「そんな大切な手ぬぐいでなんて、もったいない」
花色が申し訳なさそうにした。
「いいんだよ、一番大切なのはお前なんだから。ハナは黙って俺に世話されておけ」
口ぶりは乱暴だが、柔は花色をとても大事にしていた。そして『面倒くせえ』が口癖のわりに、花色には甲斐甲斐しく世話をした。
「ごめんな、勝手に不安になって」
「それは俺のせいだ、お前じゃねえ。俺の責任だ。
十四年も好いたお前を不安にさせた俺が悪かったんだ。
俺を、許してくれるよな」
心細そうな少年の眼差しで花色を見つめた柔に、花色が柔らかく笑って頷いた。
「良い子だ」
包む込むように抱きしめながら、おでこに口付けた唇はしばらく離れる事はなかった。
柔が初めて花色の部屋訪れた。
初めて体を繋げてからも、柔の部屋に毎日昼休みに通っていた花色だが、柔といえば花色に膝枕をさせ、消えそうになると赤い印を再び付けるだけだった。
初めて柔に抱かれた後の花色からは、匂いたつばかりに色気が際立ち、よろず屋に戻る途中途中ですれ違う多くの男の目を引き付けた。それを目の当たりにした柔が、その日以降、花色を抱く事はなかった。
女郎屋の女将も花色を未だ諦めてはおらず、花色の姿を見るたびに狙いを定めているようだった。
花色の部屋に初めて入った柔が、ぐるりと辺りを見回すが、特に何かがあるわけではない普通の部屋だった。
「今日は、俺が柔、さんに触れても良い?」
恥じらいながらの花色に、柔が「ああ、お前の好きにしろよ」とぶっきらぼうに言い放った。
「ほんとに?」
どこか低めの花色の声色に引っかかりを覚え、いぶかしむ様な表情を浮かべた柔が深くは考えずに、「いいぜ」と花色に答えた。
柔の許しを得た花色の右手が迷うことなく柔の下肢に触れた、一瞬の出来事だった。
花色が柔のオスを口に含んだ。
予想だにしていなかった柔が驚愕の表情を浮かべた。
突然の花色の口淫に慌てふためいた柔が花色を引き剥がそうとするが、男としての弱い部分を責められ、がっちりと腰をホールドされては、どうする事もできずに花色の与える快楽に身を任せる事しかできないでいた。
「ハナ、いったいどうした、ハナ」
快楽に顔を歪ませながら問いかけるが、花色が柔の言葉に耳を傾けることはなく、いつもの清純さの欠片もないほど必死にむしゃぶりついていた。
「何があった、ハナ」
余裕のない柔の声が花色をますます興奮させたのか、舌のほかにも手も使い始めた。
「ハナ、お前にされたら、出ちまう」
余裕の無い柔の声が静まり返った部屋に響くが、音を立てて吸い付く花色のつたない口淫にかき消され、熱に浮かされた様に花色がぬめる舌をひたすらに動かし続けた。
「ダメだ、出ちまう」
苦しそうな柔の声を聞きながら、花色は口内に断続的に与えられる柔のご褒美を貰う事に必死になって舌を蠢かせた。
「離せ、ク…ッ」
とうとう堪えきれずに柔が花色の口内に快楽の証を放った。
珍しく息の上がった柔が戸惑いの表情を浮かべていた。
花色が柔の快楽の証を余すことなく口に含んだまま、今度は柔に口付けた。花色の意図に気づき、途端に離れようとする柔の頭を、そうはさせまいと花色が強く抱いた。花色の舌先が柔の頑なに閉じた唇を開かせようとするが、柔もそうはさせまいと抵抗する。
「ん、んん、ごくっ」
最終的に根負けした柔が、自分の放った快楽の証を二人で分け合って飲み下した。
「何すんだ、ハナ」
柔が花色の肩を掴んで問い詰ると、見る間に泣き顔になる花色に、再び柔が慌てふためいた。
「待て、泣くな。ハナ泣くな」
柔は嗚咽を洩らしながら泣き始めた花色に、白旗を振るしかなかった。
「どうしたってんだよ、ハナ。なにがあった」
しどろもどろの柔に、いつもの強引さは見られず、花色をただ抱きしめるだけだった。抱きしめられ、少し落ち着きを取り戻した花色が、真っ赤な目で柔を見つめた。
「俺のこと気持ち悪いって思ってるんだろ。
男の癖に女になりたいだなんて言った俺のことを!だからあれから触ってくれないんだろ?
それに柔は綺麗な女の人に人気だし、オコンさんとか」
「女郎屋なんだ、綺麗な女ぐらいはいるし、あのクソ女は綺麗でもなんでもない」
オコンを引き合いに出されたのが不満なのか、不貞腐れたように柔が呟いた。
「でも俺なんかよりずっと若くて綺麗な女の人たちに囲まれたら、きっとそっちが良いって思うんじゃないかって、俺、すっと不安で。
それに、俺の方が柔さんより年上で、たいして取り得もないし、気も強いし」
(お前の方がどんなクソ女よりも綺麗だし、とりえなんか要らねえくらい完璧だろ!)
柔が心の中で悪態をついた。
「ほんとに俺、ずっと不安で。
柔さんが俺なんかで満足できるのかなって、このままいたずらに時間だけが過ぎていくのかなって思ったら居ても立ってもいられなくって」
花色の目にはまた、涙が滲んでいた。
(馬鹿な、お前の方がいろんな奴に狙われてるんだぞ)と言いたい柔だったが、話がややこしくなるので口には出さなかった。
「ばっかやろう。十四年もお前に片思いしてた俺のほうが心配なんだ。
お前の首筋に赤い痕を残すのは『お前は俺のだ』って見せ付けて、他の奴がしゃしゃり出てこないように牽制しなけりゃなんないくらい俺はお前に惚れてんだ」
「でも、あれから…抱いてくれない……」
「--それは…俺に抱かれた後のお前が、色気垂れ流して野郎どもの目を引き付けるし、俺に抱かれるお前見てたら理性なんか吹っ飛んでお前に酷いことしちまいそうになるわで俺も不安で抱けなくなっちまった。
お前が、ハナが誰か他の奴に獲られちまったらって想像したら、益々抱くのが怖くなっちまって。
それがお前を不安にさせたならすまなかった」
「それに、俺は柔さんが始めてなのに、柔さんはなんだか手馴れてるし」
「俺だってお前が初めてだよ。
好きな奴の前でかっこ悪い真似なんかできるか!
だから女郎屋に来るヤブって町医者に聞いてたんだよ。お前の抱き方を。
俺の方が年下だし、お前を気持ちよくさせてえだろ!男としては」
と、不貞腐れた言い方の柔に(かわいいな)と思う花色だった。
「じゃあ、俺の事好き?」
花色の切実な問いかけに間髪入れずに柔が答える。
「俺はこの十四年もの間、お前一筋なんだよ。
じゃなきゃ、とっくに他の奴抱いて紛らしてるぜ」
柔の心の叫びのような告白を聞いた花色がまたしても目に涙を浮かべた。その仕草と表情に、今まで自らの気持ちを花色に伝えていない事に気がついた柔が、ハッとして神妙な面持ちになった。
「悪かった、これからはちゃんと言う。好きだ、花色。
十四年前のあの日から、お前の事が好きだ。
俺の初恋なんだからな、お前は。
お前以外は誰も要らない。そんぐれえ、お前が好きだ、花色」
その言葉を聞いた花色が、再び涙を浮かべた。
「ハナ、好きだ。俺はハナが好きだ」
花色と繋がりながら、柔が愛の言葉を囁いた。
柔にしがみ付きながら、花色が嬉しそうに熱い吐息を溢す。
「柔、柔」
花色が甘く切ない声で柔を呼んだ。
「俺を女にして!
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「そこは」
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花色の戸惑う声色に、柔が宥めるように「安心しろ。ここも女にしてやるから」と花色に囁いた。
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「ここも綺麗だな」
柔の独り言に、柔の視線を感じた花色が羞恥に下肢を捩り始めたが、体の奥深くに楔を打たれ、揺さぶられ、柔の両手が花色の下肢にあっては、それも叶わない。花色の首筋に顔を埋めたままでは、現実逃避するかのように目を瞑るしか出来ないでいた。
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花色が途端に啼き始めた。
「知ってるか?女にもおちんちんがあるんだぜ」
いつもは皮の奥深くで慎ましくしている敏感な部分を優しく擦られ、花色の体が一気に緊張した後、限界とばかりに脱力し、弛緩し、それを何度も繰り返しているうちに柔に支えられ、体を預けなければ、崩れ落ちてしまいそだった。次第にぬめりを伴った汁が、柔の指を銜えている皮の隙間から滲み始めた。いつもは皮に被ったままのため敏感すぎるのか、花色が生理的な涙を零しながら嬌声を上げる。時折、左右に首をふり、過ぎた快楽を逃すように嫌々をする。それでも、柔の指が剥き出しの快楽を引きずり出す動きを止めなかった。柔の下肢の動きと性器の刺激を交互に受ける花色が翻弄される。
初めて体を繋げた時も自慰をした事のない花色を気遣って、『ハナイロ』自身には触れなかった柔に責め立てられながらも、愛おしいように触れるその手つきに、花色の心が歓喜に震えていた。
「女みたいに濡れてきたな」
花色に聞かせるように耳元で囁きながらも、柔が指と下肢を動かし続ける。
「やぁっ、やぁ」
花色の言葉にならない喘ぎを、柔が指の動きに連動するように下肢を燻らせながら受け止める。柔の交わり方はもどかしいほどにゆったりとした動きで、柔の作り出す快楽を常に与え、花色の体の隅々にまで自らを刻みつける、まるで調教するかのようだった。
「俺の手、ぬるぬるにするほど気持ち良い?」
花色の耳朶を甘噛みし、時折舌を捻じ込みながら柔が花色の興奮を煽る。
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「たまんねえな」
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「んああっ」
花色が堪らずに大きく喘いだ。
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花色が涙目で柔に弱弱しく懇願した。
「いいぞ、見ててやるから」
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ビクンと大きく体を硬直させると、花色の亀頭の先端から小刻みに勢い良く何かが吐き出された。
「あっ、あっ、あっ」
吐き出すタイミングと同じリズムで花色も小さく喘ぎ、「んー」と最後に体を硬直させた。
すると柔が慌てたように下肢を打ちつけた。
花色の胎内の痙攣に引きずられた柔が花色の胎内で快楽の証を放ち、より奥深くに潜り込ませるように身を屈ませていた。
「クッ…持ってかれちまった…、あ…やばっ」
荒く息を吐き、今度は柔が花色の首元で独り言を呟いて下肢を断続的に打ち付けた。
「ああっ」
柔の雄の色香を纏う声と、突然の突き上げに感じた花色が、一際大きく啼いた。
「くっ、んっ、腰止まんねえ」
花色にしがみ付きながら、意思とは無関係に腰を振らされてしまった柔が、「また出る」とつぶやいて快楽に眉を顰め、あっという間に再び快楽の証を放った。
落ちるようにゆっくりと弛緩する花色の体を片手で抱き、もう片方の手で残渣を搾り出す柔の手の動きに反応してカクンカクンと花色の体が揺れ、「やあっ」と今度は反動で花色がブルリと体を震わせた。
強すぎる快楽のためか、花色が覚醒するのにしばらくの時間を要した。
花色の息が整うのを待った柔が、ぼんやりとしている花色を嬉しそうに覗き込む。
「上手に潮、噴けたな」
「しお?」
「女は気持ち良いと潮を噴くらしいんだが、やっぱりお前は俺の女だ。気持ち良かったか?」
「気持ちよかった、けど…もうアレはしたくない。俺のに、触るの禁止」
プイッと横を向いてしまった花色に「可愛かったんだけどな。でも暫くは封印しとくか」とためらいもなく柔が答えた。
長かった事後の余韻が引いた頃合を見計らって、柔が花色の手ぬぐいで花色の体を清め始めた。
「そんな大切な手ぬぐいでなんて、もったいない」
花色が申し訳なさそうにした。
「いいんだよ、一番大切なのはお前なんだから。ハナは黙って俺に世話されておけ」
口ぶりは乱暴だが、柔は花色をとても大事にしていた。そして『面倒くせえ』が口癖のわりに、花色には甲斐甲斐しく世話をした。
「ごめんな、勝手に不安になって」
「それは俺のせいだ、お前じゃねえ。俺の責任だ。
十四年も好いたお前を不安にさせた俺が悪かったんだ。
俺を、許してくれるよな」
心細そうな少年の眼差しで花色を見つめた柔に、花色が柔らかく笑って頷いた。
「良い子だ」
包む込むように抱きしめながら、おでこに口付けた唇はしばらく離れる事はなかった。
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冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
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