寤寐思服(gobi-shihuku) 会いたくて会いたくて

伊織 蒼司

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キョウモ ハカナイ ユメ ヲミル【一度だけでもあの人に触れてもらえたらそれで】R18

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源六の案内で桃源郷にやってきたテツ一行は源五郎のいる部屋へと通された。

「一人で行ってくる」と告げたテツに花色と勝色が「「杏(キョウ)かどうかを確認たい」」と言ってきかず、息子達は嫁が心配だからと首を縦に振らず、こうして全員で出向いてきたのだった。
「ハナちゃんも、カッちゃんも、確認したら直ぐに帰るんだぞ」
テツの言葉に二人は無言で頷いた。


襖が開かれ中に通されたテツ一行が目にしたのは、男の客を取るための化粧を施され、部屋の仕切りの欄間から垂らした縄で両手首を縛り上げられ、身動きできぬ姿の杏だった。

「「杏(キョウ)?」」
花色と勝色が縄で縛られた杏に駆け寄って猿轡を外した。
源五郎の手下が「おいこらっ」といきり立ったが、源五郎の「よさねえか、堅気さんだ」の一言で事なきを得た。

「お二人さん、猿轡は外しても構わねえが、縄を解いてもらっちゃあ困るのよ」
源五郎の言葉に花色が頷いた。

「親分さん、こんな状況で申し訳ないのですが、俺とこっちにいる俺の弟と三人で話をさせてもらえませんか?
俺達同郷の出で、家族同然に暮らしていたんです。
逃がそうとしたり、怪しまれることはしないと誓います」
花色が丁寧に願い出ると、源五郎が「少しだけならいいぜ。こっちも暇じゃあねえからな、早くしてくれよ」と言い残し、子分達を連れて隣室の襖の奥へと消えた。
テツも、剛と柔に目配せをして源五郎の後に続いた。


部屋に残された花色と勝色そして杏がお互いに視線を交錯させる。

「女、孕ませたのは俺じゃねえ。
俺は、橋渡ししてただけだ」
杏が隣室に聞こえないように小声で話し始めた。

「じゃあ、なんで否定しなかったのさ」
勝色がこの状況にそぐわぬ気軽な雰囲気で杏に尋ねた。
「それは、前に紅と裏家業に行った先にいた女だったからだ。
町で偶然会ったんだ。
始めは気がつかなかったが向こうが気づいて、俺に話しかけてきた。
その日はなんとも思わないで分かれた。でも、裏家業で調べに入ったここにあの女がいて。
幸せじゃねえ、って、見ちまったんさ。
その女には好いた男がいて、このままじゃ結ばれねえってわかってんのにさ。
しかも餓鬼が出来たと知ったら親分に腹の餓鬼は殺されるって嘆いてな。
親とか家族なんて希薄なもん、信じちゃいないはずなのに、魔が差しちまった。
柄にも無く何とかしてやりてえって思っちまったのさ。
紅は手を出すなってきっと言うはずだから、言えなかった。
しくじったらよろず屋の名が知れちまう可能性も否定できねえ。
それが、裏家業に、紅に背いて首、突っ込んじまった俺の罪なんだ」

「でも、なんでお父さんなんだよ」
花色が厳しい目を杏に向けると、ポツリポツリと杏が語り始めた。

「十四年前、紅の手伝いを始めたての頃、しくじったことがあってさ。
追われる身になって町外れまで走って川縁を逃げ回ってたらさ、蹲ってる人を見つけたんだ。
立ち去ろうとしたらその人が急に顔を上げたんだ。
…泣いてた、その人。静かに。
ぼんやりとした月明かりに照らされて、何かを抱きしめたまま泣いてたんだ。
俺、それ見たら動けなくなってさ。
追っ手の声が遠くで聞こえたのに気がついてようやく逃げようとしたけど川縁じゃあ隠れる場がなくてさ。
そしたらその人が「こっちこい」って手招きしたんだ。
俺が縋るようにその人に駆け寄ったら、その人は大事そうに抱えてた布に包んで脚の間に匿ってくれてさ。
…その時、その布、死んだ奥さんの着物だってその人から聞いた。
その人が大事なのはその着物の奥さんなのに、俺がすごく大事にされてる気がしてさ。
その人、「生きてるって、あったけえな」って言ったんだ。泣きそうに顔ゆがませてさ。
そして、「今日は俺の女房と腹ん中で死んじまった餓鬼の百日目の日なんだ。ちょうど俺にはおめえ位の餓鬼が二人いてな。母親の他にも産まれて来るはずだった赤ん坊まで死んじまったとは言えなくてな。それがあいつらの運命だったとしてもやり切れねえよ。
だから俺が一人で偲んでたんだ。
この世の中、無駄にしていい命なんて一つも無え。
一つもな」
そう言って辛そうに、寂しそうに微笑んでさ。
俺は家族なんて希薄なもの信じちゃいなかったけど、その人のそんな姿が目に焼きついて、『俺がその人の傍で何か出来たら良いのに。その人の寂しさを軽くしてあげられたらって』って思っちまったんだよ。
それから、たびたび様子見に行ってた。その人のこと」

「それが、テツさんなんだ。だからテツさん『加洲亭羅』(カステイラ)のこと知ってたんだね」
勝色がしんみりと言葉にした。

「ああ。段々荒んで行くテツさん、見ていられなかった。だからこっそり仏壇に上げさせてもらってた」
下を向いた杏が幾筋もの涙を零れ落としながら、しんみりと答えた。杏の涙に花色と勝色が動揺した。

「だからって、お父さんの優しさに付け込むような真似するなんて。杏なら一人でも逃げられたはずだろ。いくら三十までに伴侶を見つけないと里に帰らないといけないからって、だからってこんなやり方」
それでも、テツを守りたいと思う花色が零れ落ちそうなほどに涙を溜めていた。そして、杏を睨み付けながら下唇を噛み締めた。

「わかってるよ、最低だって。でも、紅の意思に背いた俺はもうよろず屋には戻れない。だからせめてあの人が俺のためにここへ来てくれれば俺は満足だった。
せめて一度だけでもあの人に触れてもらえたらそれで」

「でも、それでも俺は絶対に許さない!お父さんを巻き込むなんて、俺は許さない」
感情の高ぶった花色が杏を怒鳴りつけた。それは隣室にいる他の者達の耳にも届いた。そして同郷で家族同然でもある杏に向けざるを得ない敵意に、自らが耐え切れずに花色がとうとう泣き出した。
花色の怒鳴り声に「花色!」と柔が勢い良く部屋に飛び込んだが、その部屋にいた三人の雰囲気で言葉を発することはなかった。

誰一人言葉を発することのできない状況下の中、テツが部屋へと割り行った。

「ハナちゃん、ありがとな。んでもって、すまねえな」
いつもの悪るふざけた雰囲気の微塵もないテツが花色の髪をクシャリと触ると、「おとうさん」と発して花色が大粒の涙を零し始めた。テツが視線を向けた先にいた柔が、テツの意図を察したかのように花色を抱き寄せその場から連れ出そうとしたが、花色が動こうとしなかったため横抱きに抱え部屋から出て行った。

「剛も、カッちゃんも帰れ」
静かにテツが促した。
「でも」
勝色が何かを言おうとしたが、剛が勝色の肩に乗せた手の重みで押し黙り、お互いに見合わせると剛が静かに首を横に振った。
「俺達は帰って寝るよ」
いつもの夜の挨拶のように剛が勝色を連れて出て行った。


「あん…か?」
一人でその場に残ったテツが杏に静かに近づいて、左のこめかみ付近にある古傷を確認するように見た。そして化粧の施された杏に「綺麗になったじゃねえか」と皮肉を込めた含み笑いを向けた。


「源五郎よ。お前、俺の性格知ってて俺を巻き込んだんだよな?」
源五郎が無言のままテツの目を見た。
「俺は昔やんちゃもしたし、こんな性格だが、女房の【夕】(ユウ)しか女は知らねえし男も相手したことはねえんだ。一途なんでな、こう見えて。
だからもし、こいつを抱いちまったら、俺のことだ。きっとこいつを手放したり出来なくなるぜ。それでも良いのか?え?源五郎よ?」

テツの静かな威圧に、負けたとばかりに源五郎がため息をついた。
「ほんと、自分の意思押し通すとこあるよな、テツ兄は。そうなっちゃ昔から俺はテツ兄に叶わねえって、よく知ってるぜ。ほんとそういうとこ、変わってねえな。
女の残した借金立て替えてくれりゃ、文句はねえんだ。俺はな。
ただ、うちの調教師が「こいつはもっと金になるから手放したくねえ」と首を縦に振らねえんだよ。なあ、【清】(せい)」
源五郎が清と呼んだ男は、源五郎のすぐ傍に立っており、怪我をしているのか腕を布で吊っていた。
「これか?そいつを調教しようとして蹴られて骨が折れちまってね、ぽっきりと」
テツの思った疑問を聞かれる前に源五郎が解説した。
「そんな怪我を負わされても諦めきれねえんだと。
俺も困り果てたところに、そいつが「テツ兄が初の客なら従う」ときたじゃねえか。
俺としちゃあ、渡りに船ってことでテツ兄に来てもらったのよ。
そこでだ。テツ兄、清と勝負をしてくんねえか」
二人の視線を集めた源五郎がニタリと笑った。


「ん、んん」
杏が歯を食いしばって不快な何かに一生懸命に耐えていた。
以前、杏の脚蹴りで怪我を負わされた杏が再び暴れぬように、右足首と右大腿部、左足とを左大腿部を縄でそれぞれ括り戒められていた。

清が蜜蝋を塗り込んだ杏の秘部をほぐし始めて暫くの時間が経過したが、一向に開く気配が無く、清の指一本で未だに杏が不快な表情を崩さなかった。

「そろそろ時間の半刻(約一時間)経つぞ、清」
源五郎があくび交じりに退屈そうに呟くと、清も焦り始めたのか、ますます無理やり広げようと意地になり、杏を苦しめた。

源五郎の勝負とは、一定の時間で杏の体が男を受け入れられるようにした方が勝者。というものであった。
「わかりやすいだろ。男の体は正直だ、見りゃ直ぐにわかる。
ここで働くにゃ、男を銜え込まなくちゃ所詮は用無しだからな」
なんでもない事のように源五郎が提案し、自信満々な清と、断ることの出来ないテツが渋々了承した。

「時間だな」清の制限時間が終わりを告げた。
源五郎が杏に近づいて下肢の袷を開いて確認したが、杏の下肢は無反応のままであった。

「んじゃ、テツ兄の番だな」
源五郎がニタニタと笑いを浮かべた。

「良い趣味してら」
テツが小声で悪態をついたが、直ぐに杏に近づいて「本当はおめえ、誰とも寝たことねえんだろ。初めてなのに、さっきは痛い思いしたな」と杏を気遣った。そして、「見たい奴には見せてやるのが俺の性分さね」と言うと杏の着物の帯を解き、杏の裸体を目の前にいる源五郎と清の前に晒した。
煌々とした明かりで、杏の体が陰影を作って美しく浮かび上がった。

テツが「綺麗だぜ」と一言言うと杏の背後に周り膝をつき、杏の秘部に舌を這わせ始めた。

「えっ、テツさ」杏がそこで言葉を区切り、歯を食いしばった。
杏の顔が見る間に朱に染まり始め、ついには体全体をも朱に染めるほど、杏が興奮しているのが源五郎と清には見て取れた。

「ああっ」
杏の口から喘ぎがこぼれた。
「テツさん、やめて、そこ汚い」
途切れ途切れに杏が懇願する。
「汚くなんかねえ、綺麗だって言ったろ」
テツが杏の秘部を潤すように、襞の一つ一つに舌をねっとりと絡ませる。
「ん、ああっ。ちが、あいつが、触った、から、汚い」
杏の言葉に清の表情が硬くなり、源五郎がそれを横目で見ながらニタニタと笑い続けた。

「清よ、男の体は正直だ」源五郎が呟いた。
「悔しいですがそうですね」清も呟いた。
「あっと言う間に決着がつきそうだな」源五郎の呟きに下唇を噛みしめた清が無言を貫いた。

「テツさん、もう、俺、もう」
杏が首を横に振り、快楽を逃がしながら切羽詰った声を上げる。

「テツ兄に尻穴舐められるだけであんなになるもんなのかねえ」
源五郎がしみじみと、独り言を漏らした。

杏の狂態に、清がいぶかしむ様にじりじりと杏に近づいて杏の下肢を良く見ようとした。

「ああっ」 
杏が一際大きく喘いだ次の瞬間、そのまま意識を手放した。


その瞬間を見たものは清しかいなかった。

源五郎に背を向けて杏の前に屈んでいた清が、顔に、折れていない方の手を当てた後、その手を見つめたまま源五郎に向き直った。

「清、それ」
源五郎が言葉に詰まった後、大声で笑い始めた。

「杏って言ったか。そいつは大物だ。清に、清に」
源五郎の笑い声に何事かとテツが清に近づくと、清の顔を見たテツも笑い出した。

「あの清の顔に精液ぶっ掛けて失神しやがった」
源五郎とテツの笑い声はなかなか治まらなかった。

ひとしきり笑われながらも手と顔を拭い終えた清に「これで文句はねえな、清」源五郎が最終確認を求めると、清が何も言わずに頷いた。そしてテツには「今回も月賦で良いか。月初めに集金に行かせる」と言った。

縄を解かれてもまだ意識のない杏の頬をテツが軽くぺちぺちと叩くと、杏がようやく気がついた。

「テツさん、テツさん」
杏が口を噤んだままそれ以上は何も言わなかった。
「もういい、済んだことだ」
テツがやわらかく微笑んだ。
「今日からお前は俺んとこに来るんだ、帰るぞ」
テツの言葉で二人は桃源郷を後にした。


帰り道。
「舌噛んで死んでやるって言ったそうじゃねえか」
テツの言葉にその意味を知る杏が「ごめんなさい」と心底反省したように呟いた。
「俺が行かなきゃどうするつもりだった?」
テツが静かにあんに問うた。
「舌噛んで死んでた」
テツが立ち止まってあんを見据えた。
「でも、テツさんは来るって信じてた」
テツのい言いたいことがわかっているあんが抑揚無く答えた。
「ばっかやろうが。だが、忘れてねえならそれでいい。
粗末にしていい命なんか一つも無えんだからよ。
それと、今まで菓子届けてくれてありがとな。

ときに、おめえの名は【あん】なのか?
それとも【キョウ】なのか?
どっちでい?」
テツが思い出したようにあんを見た。

「【杏】(あんず)が元々の名前。でも女っぽいから物心付いたときにキョウにしてもらった。だけどテツさんにはあんって呼んで欲しくなったから」
僅かに顔をほころばせたあんを横目に見ながら、テツは溜飲の下がる思いだった。

静まり返った町から延びる一本道を二人は無言のまま歩いて家路についた。

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