よろず恋花(こいばな)

伊織 蒼司

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【トルマリン】R18

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 塩屋の婿養子である勝三が、取引先の集金を終えて店に戻るところであった。

 最近『サーカス』なる見世物小屋が評判になっているらしく、店の使用人たちの話題も、それで賑わっていた。
 少し遠回りだが外観だけでも一目見ようと足を勝三が向けた。
 寄り道がてらきはだに土産でも、そう思い立ち、ふと思い見世物小屋近くの市を眺めて歩いた。


 「旦那、そこのお若い旦那」

 呼ばれたほうを見ると『占』と書かれた古汚い紙を、これまた小汚い机に貼り付けただけの、到底店屋とは思えぬ妖しさをかもし出していた一角に、その男が立っていた。

 薄い布で鼻から首元を隠し、余計に胡散臭さを感じさせた。

 「そう、そこの旦那」
 男が揉み手をしながら小さな会釈を繰り返した。

 「わたしに何か様でも?」
 勝三はスリか置き引きの類ではないかと警戒しながら、怪しい男に近づいた。

 「あっしはね、遠く『インド』ってとこで占いと星見の修行をちょいとしましてね。
 まあ、こう言っちゃあなんですが、かなり腕は確かでね。
 そんでね、つい見えちまったんですわ。

 旦那、災難の相が出てまっせ」
 怪しい男が話を続けた。

 「旦那、身を焦がすほどのめり込んだ相手がおりまっしゃろ?

 近々、揉め事に巻きこまれまっせ、そのお相手。
 しかし、このお守りの『ブレスレット』を贈ればああーら不思議。
 災難からは逃れられる、っちゅう優れもの。
 しかも身に着けたところからじわーーっと熱うなってきて、体の芯からぽっかぽかー。

 それに、なな、なんとブレスレットは本場インドでも滅多に取れない最高級の『トルマリン』っちゅう石からから作られた世界に一つの一点ものでっせ。今ならなんと半額」
 妖しい男がやはり妖しい話をした。

 災難だのなんだのにはまったく関心はないが、男の手にある『ブレスレット』には興味をそそられた。
 向こうまで透ける黄色の透明な石が腕輪のようにくり貫かれて指輪には大きく、腕輪には小さくという大きさであった。
 夕黄によく似合う。勝三は用途も見当たらないままにそれを譲り受けた。


 「あっちゃー、大きさ間違って『メンズリング』売っちまった。
 まあ、ええか。使い方によっては命までは取られんわ」

 勝三が去ったあと、妖しげな男が頭をかきながらもう一つの腕輪サイズの黄色い石を取り出した。



 店に戻った勝三が、すぐさま離れへと向かった。

 「きはだ、きはだ」
 喜々としながら駆け寄ると、さっそく買ったブレスレットを取り出して見せた。

 きはだがいまいち反応の鈍い喜び方をした。

 「勝三さん、このブレスレットは何に使うものなのでしょう?」

 勝三が首をかしげて考え始めた。

 「お守りなのだからいつも身に着けるべき」
 勝三が頭をフル回転させながら、ブレスレットとにらめっこをしていた。

 この大きさに当てはまる、きはだの…。
 きはだの頭の先から足の先までを何度も見比べては、唸った。
 腕組みまでして本気で考え始めた勝三をよそに、きはだがそっと立ち上がった。

 部屋を出てまっすぐに厠へと向かった。すると、なぜか勝三も一緒についてきた。

 「勝三さん、僕は厠に」
 「わたしもついでに」

 「お先にどうぞ」
 「わたしは後からでよい」
 そういうと、勝三がまだ黄色の石を睨んでいた。

 きはだが小さくため息を突くと、用を足すために勝三にはあまり見えないように下穿きをずらした。…その時。

 「待て、待て、きはだ」

 いざいたそうとした瞬間に待ったをかけられたきはだが、驚きよりも羞恥で勝三を見つめた。
 勝三が悪巧みを考えた子供のような顔をすると、きはだの後ろから覆いかぶさってきた。

 「見つけたよ。使い道。
 きはだ、お前にぴったりの使い道がね」
 勝三が黄色い石を、剥き出しの『キハダ』の根元まできっちり嵌めた。
 「んん、ちょいと大きいね」
 用を足したくても足せず、我慢を強いられているきはだが無言の抗議を視線で送った。
 「んん、ああ、わかっているよ。もう少しお待ち」
 勝三がキハダの根元にある小さな膨らみを、大きな手の中で弄び始めた。
 「ここはあまり弄ってあげた事はないね」
 「ん、ふふっ、ちょっとくすぐったいよ」
きはだが下肢をくねらせるが、徐徐に力を込めるように捏ねながら、小さな膨らみの一つを黄色い輪の向こう側に通すように、一気に押し出した。

 「んああっ」きはだが声を上げたと同時に、ビクンと体を震わせた。
 「痛かったかい?」勝三があやすようにきはだの耳元で囁いた。
 「ち、ちょっと、びっくりしただけ」
 痛みがなかったのを由とした勝三が、残りのもう一つの膨らみを弄ぶ。
 「ん、やっ、ああっ」
 やわやわと弄ばれ、きはだがふたたびフワリとした快感に酔いしれた頃合を見計らい、勝三が残る一つの膨らみを輪に押し通した。
 「痛っ」
 その刹那。しょろしょろときはだが驚きのあまり放尿した。
 「痛かったかい。すまないね。でもほら、よく似合う」
 満足そうな顔で嬉しそうに微笑む勝三に、きはだが何も言えないまま羞恥に震えていた。
 しかし、それだけではなかった。
 
 二人で部屋に戻ると、勝三がせっせと布団を敷き始めた。
 「勝三さん?」
 訝しげにきはだが勝三を睨み見た。
 「使い心地、知りたいだろう?」
 勝三がまたしても悪巧みを考えた子供の顔をした。

 「あ、ああ、気持ちいい」
 きはだは勝三に両足首をつかまれ、大きく足を開かれたまま、勝三に責め立てられていた。
 その脚の中心で黄色い石が部屋の明かりを反射していた。

 「きはだ、いいよ、すごくいい。
 とてもお前に似合っているよ。何があっても外れぬように仕込んでおいたからね」
 キハダの二つの膨らみのその奥深くで光る黄色い石をうっとりと見つめながら、勝三がきはだとの繋がりを何度も深めた。

 「勝三さん、ぼくもう」
 いつもよりも早くきはだが胎内を震わせて極めた。

 勝三は、きはだの足を両の肩に担ぎ、細い腰を引き寄せて繋がりを深めた。
 またしてもきはだはあっけなく極めた。

 「ぼく、きょうおかしい」
 きはだが荒く息を吐きながら、幾度も体をびくびくと震わせた。

 「あ、ああ、あ、あっ」

 何度も奥で極めることを繰り返したきはだが、勝三が快楽の証を放つと満足したように薄っすらと笑みを浮かべて眠りについた。


 勝三が一人、何度も奥を震わせて極めるきはだの姿を思い返していた。
 必然的にしまりのない顔になっているだろうが、勝三が気にする様子はなかった。
 いつもきはだには快楽の証を出さぬ様に仕向けて体を繋げている勝三には、不安に思っていることがあった。
 いつか、この美しい少年が女性を抱きたいと思う日が来るのではないか?
 もしくは、ほかに気を許す男が現れて、自分は捨てられるのではないか、と。

 そのためには自分との行為を体に植え付け、誰も抱けなくしてしまえばよい。
 また、ほかの男とでは満足できない体に作り変えればよい。
 勝三はその一心で、男の性である快楽の証を出さぬ繋がりを無理やりにきはだの体に覚えさせた。
 従順なきはだが望みどおり、男の性を捨て勝三に身を委ね、最近では、触れられぬ方が気持ち良いと言い始めていた。
 そんなきはだが、勝三は愛おしくてたまらなかった。


 横たわるきはだに近づくと、勝三は黄色い石と、快楽の証を放っていないため、赤く熟れたままのキハダを愛しむように見つめた。
 快楽の証を放たぬ繋がりは消耗が激しいのか、必ず気を失うように眠りにつく。

 「高い買い物であったが、やはりきはだにはこれが似合っている。
 今日はよい買い物をした。
 ただ、きはだの蜜がいただけぬのは残念だが」

 名残惜しそうに、それでも満足した笑みを浮かべた勝三がきはだを胸に抱いてようやく眠りについた。
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