よろず恋花(こいばな)

伊織 蒼司

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【柑子】のお仕置き R18

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 曇天の下、なんだか気分もどんよりしていた柑子が、よろず屋の厨房で暇をつぶしていた。
 初めて柑子と関係を結んだ日からまったく家に帰らなくなった豊二が、婿養子先である豊穣屋の番頭の大吉に連れ戻されたのである。

 厨房の隅にある背もたれのない椅子に腰掛け、足をぶらぶらさせては料理人たちの様子をなんとなく見ていた。

 昼の時間帯は女客によって占領され、いつものように外まで列を成していた。

 グーー。
 厨房で作られる料理のかぐわしい匂いに、柑子の腹の虫も騒ぎ出す。

 「おい、柑子。ボケッとしてねえで、暇なら店手伝うか、そこで洗い物でもしてろ」
 料理長の【萱草】(カンゾウ)が大きな声で叫んだ。
 厨房は男達が慌しく動いているため、小さな声では聞こえない。従って厨房の人間はみな声を大きく発する決まりになっていた。

 「かーんーぞーー、お腹すいた」
 柑子も負けじと大声で叫ぶ。

 「このくそ忙しいときに、何言ってやがんだ。腹減ったなら、そこの櫃の冷飯でも食ってろ」
 今度は本気で萱草に怒られてしまった。

 「ちぇっ」
 聞こえないように口に出すと、柑子が厨房を後にした。


 豊二が再び柑子の元を訪れたのは、それから三日も経っての事だった。

 「柑子や、柑子。会いたかった」
 豊二が両手を広げて駆け寄ってきた。
 うれしい反面、三日も放っておかれた悔しさに、柑子が冷たい態度をとった。
 「僕のことは忘れたのかと思っていたけど」

 「柑子、わたしはお前に会いたい一心でやっとここへ来たのだよ。
 どうか、冷たくしないでおくれ。
 さあ、美しいお前の顔をもっとよく見せておくれ」
 豊二が柑子の頬を両手で挟むと、うっとりとした表情を浮かべた。

 「今回だけは許してあげる」
 「それはありがたいね。良かった良かった」
 不機嫌を装いながら意地悪く言う柑子に、豊二が真面目に取り合うことはなかった。

 「今回だけだからね」
 子ども扱いに、柑子がムッとして念を押した。


 一組しか用意されていない布団に柑子が豊二を突き飛ばす。
 ごろんと布団に仰向けに横たわった豊二の上にまたがり、豊二の着物の袷を開いていく。
 自分の着物は脱がずに、豊二だけを裸にした。
 豊二が柑子にされるまま、身を任せていた。

 「僕のことを今まで放っていたお仕置きしないとね」
 柑子がとても妖しく、そして美しく笑った。

 柑子が自らの着物の裾を肌蹴させると、下穿きを身に着けていない柑子の素肌がさらけ出された。相変わらず薄桃色の『コウジ』自身を視界に捕らえた豊二が、大きくのどを鳴らしながら唾を飲み込んだ。

 「僕がいい、って言うまで触っちゃだめだからね」
 柑子のさらけ出された薄桃色に釘付けの豊二が、瞬きすら忘れたように凝視しながら首を縦に振った。
 完全に主導権を握った柑子が、豊二の腹の上で自慰をはじめた。
 時折腰を燻らすたびに、豊二の視線もそれを追っていた。
 豊二に見られる興奮と快感を増幅するように、柑子が手を動かしていた。

 「僕の好きなところ、ちゃんと覚えてよ」

 柑子がじりじりと豊二に近づいていく。柑子の可愛らしくも大きく膨らんだ薄桃色がより近くで堪能できることで、豊二の興奮が激しさを増した。

 柑子が薄桃色の切っ先を豊二の下唇に押し付けた。
 豊二のぽってりとした肉厚の下唇を、薄桃色の切っ先から滲んだ蜜が覆う。

 「豊二さん、お口空けて」
 豊二が素直に従った。

 「豊二さんの尖った舌、出して」
 言われるがまま豊二が舌を尖らせて突き出した。

 「僕の好きなところはね、まずここ」
 尖った舌先が、薄桃色の裏筋の、先端から根元までを一直線に辿るように柑子が腰を動かした。

 息の荒い柑子がどこかとろんとした雰囲気のまま、纏っていた着物を脱ぎ、放り投げた。そして、豊二の顔に逆向きに跨ると、腰だけを高く上げたまま豊二の体に自らの体を預けた。

 豊二の目の前には柑子の薄桃色が、可愛がって欲しそうに熱を発して垂れ下がっていた。

 「次はね、豊二さんのお口で僕の『先のとこ』だけ咥えて」
 目の前にある薄桃色の先端だけを、唇で言われるがまま豊二が咥えた。

 「そして、舐めて。豊二さんの熱い舌で、飴玉みたいに舐めて。
 僕も、豊二さんの、可愛がってあげるから」
 柑子に言われるがまま、飴玉をしゃぶるように舐めまわすと、柑子の息遣いがますます激しくなった。

 始めて柑子の口内に誘われた『トヨジ』自身も、喜びのあまり堪えることが出来ずにだらだらと蜜を溢していた。

 「あぁ、ああぁ、気持ちいい。豊二さんのお口、気持ちいい」

 柑子の言葉に触発され、豊二が一心不乱にこの行為を貪った。
 肌を重ねるごとに未知なる快楽に導いてくれる、この年端も行かない少年にすっかり虜になっていた。

 「豊二さん、興奮してるね。
 舐めても舐めてもイヤラシイ蜜、凄くでてくる」

 柑子の巧みな言葉攻めでさらに興奮した豊二が、口内で蜜を滲ませる薄桃色の入り口に舌先をねじ込んだ。薄桃色の切っ先を豊二の唇にしっかりと捕らえられているが、刺激が強かったのか柑子が腰を浮かせようとした。
 しかしそれを許さず、両手で柑子の細い腰をつかみ、先ほどよりも一層奥にねじ込んで、夢中になって抉るように舌を動かし続けた。

 先に果てたのは豊二であった。
 妻にもしてもらったことのない隠避な共同作業に、興奮のあまり長くは持たずにあっけなく終わりを告げた。
 柑子が、豊二の出したものを飲み下すと、今度は淫らに啼きはじめた。

 「あ、あああ。豊二さん、気持ちいい。気持ちいい」

 徐々に慣れてきた豊二がますます大胆になり、唾液で音を立てながら唇と舌で柑子を責めたてた。

 「あ、あ、あ、でちゃう」
 細く甲高い声で叫ぶと、背中を大きく逸らして果てた。
 快楽の証を出し切ると柑子が布団の上に倒れこんだ。

 豊二もまた、柑子の出したものを飲み、布団に寝転ぶ柑子に覆いかぶさった。

 「豊二さん、好き」
 胸の奥がじんわりと暖かくなるのを感じながら、柑子が豊二の首に両腕を伸ばして抱きついた。
 「わたしも柑子のことが好きだよ」
 豊二も気持ちを伝え、柑子を抱き寄せた。

 しばらく二人で見詰め合った後、柑子が色を伴わせた上目遣いで豊二を見た。

 「もう一回したくなっちゃった」
 「今度はお前をたくさん触らせておくれよ」
 豊二が柑子に触れるだけの口づけをした。
 その口付けは次第に深く、濃いものになっていった。

 こうして昼も夜もない、二人の時間がまた始まりを迎えた。
 
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