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【セツ】の決意
しおりを挟む「旦那様、お考え直しくださいませ。
なぜに今の安泰を壊そうとなさるのです。よりによってあの堤金次郎と手を組むなどと、危険にございます」
「ええい、黙れ兵吾。もとはといえばお前がしくじったのがそもそもの原因ではないか。あの者をさっさとここへ連れてきておれば良かったのじゃ。口を開けば危険、危険、危険。もう聞き飽きたわ」
「ですが旦那様、あの者はもう探しようが無いのでございます。
あの強い薬を体の奥深くに入れて、動ける人間などおらぬのでございます。それが忽然といなくなったのでございますよ。まこと神隠しにあったか、誰かに攫われたとしか」
「だからといってあの者の顔を知る奴らを早々に始末する必要は無かったであろう。
もう少し探させておれば見つかったかも知れぬものを」
「あの男達を生かしておいては危険でございます。
もしも旦那様が『山ノ内桜』の堀端にいた若い少年を攫ったことが知れたら、一大事でございますよ」
屋根裏で聞き耳を立てていたセツの肌が粟立った。
「しかしあの者が手に入らないからといってあの堤金次郎と手を組むなど」
「あの者が手に入らぬのだ、致し方なかろう。わしはどうしてもあの紫苑を手に入れたいのじゃ。今度こそ、今度こそじゃ。
あの者が手に入らぬ今となっては。
山ノ内のあの者とよく似た雰囲気、どのおなごどもより美しい容姿、華奢で滑らかな肌をした紫苑がどうしても欲しいのじゃ」
「それにしても、連判状までお書きになるなど危険極まりありませぬ」
「あやつが連判状を書かねば紫苑を渡さぬと聞かぬのじゃ。
なに、ことが上手く運べば良いだけの事。
案ずることは無い、利はこちらにある」
(『堤金次郎』『紫苑』『連判状』。おまえらがみ空を。
全てを明らかにしたら、真っ先にお前たちを殺す。それまで首を洗って待っていろ)
屋根裏の暗闇に紛れる冷徹な瞳が、射るように二人を見ていた。
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