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噂の利用
しおりを挟む一豊が連判状に名を連ねている家臣たちを一堂に呼び出した。
「みなに集まってもらったのは他でもない」
上座に座る一豊が、おもむろに懐から連判状を取り出して、家臣の前に広げた。
一同がいっせいに息を飲んだ。
「既にみなも知っておろう。この連判状に名を連ねておるもののうち、首謀したと思われる二名はこの世にはおらぬ」
家臣たちが一斉にざわついた。
なぜなら常田大勇及び堤金次郎は、謀反の発覚により一豊による制裁が行われたと、巷では専らの噂になっていたからであった。
「両名に関する死の真相は、わしの口からは何も言わぬ。
また、お主らの件も今回だけは特別に処罰はせぬ。
だが、今後不穏な動きがあらば真偽に拘らず首を刎ね、お家取り潰しの後、領地没収とする。わかったか」
あり得ぬほどの寛大な処置を一豊が施した。
連判状に名を連ねる全ての家臣の首を刎ねれば、たちまち混乱が起き、他国に攻め入る隙を与えることは必死であった。また、家臣らの土地に住む全ての民のことを考えれば、争いの種を蒔きたくはないとの一豊の平和主義の一面も表していた。一豊の制裁という噂が町中に拡散された事を、一豊は逆手にとって利用したのであった。
謀反の首謀者である常田大勇の娘の美代には表立った罪はないが、大勇の犯した罪を考慮すると、何らかの処遇が必要だったため大勇の屋敷に幽閉される事になった。従って母子は離れ離れになり、一豊が豊千代を引き取る事になった。
ようやく全ての決着をつけた一豊が、数日振りに紫苑の部屋へと向かった。
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