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美人姉妹の豹変 R18※暴力表現あり
しおりを挟むお夏と冬子は、毎晩離れを覗きに行くのが日課になっていた。
本宅が直ぐ隣にあるにも拘らず、それぞれの夫は愛人と体を繋げた後、そのまま愛しむように抱いて眠りにつく。その姿を見届けてから本宅に戻り眠りにつくお夏と冬子は、店の店子の噂の的になっていった。
知ってか知らずか、二人の美しい姉妹は気にする風でもなく、夕刻になると離れへと向かった。
お夏は障子の隙間からいつものように二人を見ていた。
すでにことが済んだ後のようで、裸のまま二人で抱き合い語らっていた。
「僕、豊二さんに出会えて幸せだよ」
「わたしもだよ、柑子」
「僕ね、豊二さんに出会う少し前に好きだった人に裏切られて、人攫いに売られそうになったんだ。それで誰も信じられなくなっちゃったんだけど、店の裏で泣いてた僕に、『世の中悪い人間ばかりじゃないよ』って、頭を撫でてくれたの。覚えてる?」
「すまない、そこのところは良く覚えてない」
「それで、つい勢いで豊二さんを押し倒しちゃったんだけど、僕とこうなったこと、後悔してない?」
豊二の腕の中で、いつもは強気の柑子が少し不安げに豊二を見上げた。
「いや、後悔などするものか。それよりも、お夏と祝言をあげる前に出会っていたらという気持ちのほうが大きいよ。
そうしたら、お夏とは祝言はあげなかった。二人きりでどこか遠くでひっそりと暮らしたであろうな。悔やむとすればお夏との祝言であろうな」
この豊二の発言が、ようやく均衡を保っていたお夏の正気を失わせた。
部屋の中に飛び込んだお夏は、懐にある小刀を抜き、二人の下へと駆け寄った。
「よくもわたしを蔑ろにしてくれたな」
お夏は豊二の左のわき腹に迷わず小刀を突き刺した。
うめき声とともに豊二は傷口を押さえて倒れこんだ。
お夏は再び豊二に刃を向けた。
「やめて、やめて」
お夏は凶器染みた眼差しで柑子を捉えると小刀の切っ先を柑子に向けた。
「豊二さんを傷つけるのはやめて。憎いのは僕でしょう。僕が、豊二さんの代わりに死ぬから、豊二さんを殺さないで」
「ダメだ、止めろ、柑子。お夏、わたしを殺せ。柑子は悪くない。お夏」
柑子を庇う豊二の姿に、お夏の嫉妬の炎はますます燃え上がり、正気を失わせた。
豊二の静止も聞かず、柑子は小刀を握ったお夏の手を両手で包み込むと、小刀の切っ先を自らの左目に近づけた。
「ダメだ、柑子。止めろ、止めるんだ」
「ゆっくりと僕をなぶり殺すといいよ。まずは僕の左目をあげる」
柑子はまっすぐにお夏を見据えたまま、ゆっくりと左目に突きたてた。
左目に突き刺さる時の肉の感触が、お夏の手を震えさせた。
柑子は叫び声も上げず、小刀を抜くと、閉じた瞼から鮮血が流れ始めた。
柑子は笑みを浮かべると、
「次は右目だね」といって今度はお夏の手の中の小刀の切っ先を右目に宛がった。
柑子の凶器染みた行為と、お夏を見据えたままの柑子の視線に、急速に正気を取り戻したお夏がしゃがみこんで泣き始めた。
その場に崩れるように倒れこんだ柑子が豊二を呼ぶ。
「豊二さん。豊二さん。死なないで」
その切ない声が次第にか細く、そして徐徐に途切れていった。意識のない柑子の左目は血を流し、右目は涙を流し続けていた。
同じころ、冬子も離れで二人の様子を見ていた。
二人はことの真っ最中であった。
「きはだ、なんて可愛いんだ。お前の胎内に出すよ。お前も一緒に極めておくれ」
冬子は自分の夫が自分には見せたことのない表情で、自分ではない誰かを抱くのが悔しく、気に入らなかった。
「気持ち良いよ、きはだ。わたしはもう、冬子に対してはお前のように抱くことが出来ぬ。
心が拒むのだ。冬子を見てもわたしは、もう何も反応はせぬ。
息子の手前、形ばかりの夫婦というのは悲しいものよ」
それを聞いた冬子の堪忍袋の尾が切れた。
懐にいつも忍ばせている、お夏とおそろいの小刀を抜くと、きはだのもとへと走った。
突然のことで驚いた勝三はとっさにきはだをかばうように背に隠したが、狂気に我を忘れた冬子に突き飛ばされた。
一瞬の間に、冬子は『キハダ』自身を小刀で切り取り、外れた黄色の石を握り締め高々と掲げた。
「これはわたしのものよ。お方さまがわたしに下さるはずだったものよ」
なおもきはだに小刀を向ける冬子から守るように、勝三はきはだを抱きしめて冬子から守った。冬子は勝三の背を何度も切りつけた後、声高らかに笑いながら部屋を出て行った。しっかりときはだの下肢に嵌っていたブレスレットを握りながら。
「きはだ、すまぬ」
何度も勝三はきはだに謝りながら、背中から血を流したまま崩れ落ちた。
性器を切り取られたきはだも酷い出血に朦朧としながらも、勝三の名を呼び続けた。
深夜に血相を変えてよろず屋に駆け込んできた豊穣屋の番頭 大吉に事情を聞いた紅は、すぐさま二人を連れ帰り、医者に手当てをさせた。
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