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勝三の真意
しおりを挟むきはだと柑子がいる部屋に戻ったみ空は、紅に言われたことを四人に伝えた。
『そろそろ傷も癒えて、体を動かす練習も必要になる。そのために二人をそれぞれ別の部屋に』というものであった。
急遽決まった紅の采配に、部屋の移動が始まった。とはいえ、荷物を運ぶのは豊二だけであった。きはだはこのまま同じ部屋を使い、柑子が一つ挟んだ奥の部屋。つまり、今、み空が寝泊りをしている部屋の両隣にきはだと柑子がそれぞれ暮らすことになった。
「紅さまもお二人の心の篭った看病に大層喜んでおられました」
み空が勝三と豊二に伝えると、『こちらこそありがたいお言葉です』と謙虚に笑った。
「柑子は今日から湯に浸かれるんですよね。少し早いですけど、行ってきてはどうですか?」
み空の言葉にいそいそと豊二が腰を上げた。
残った勝三に、み空は自らの身の上話をし始めた。
細かいことは割愛し、伝えたいことだけを伝えるつもりのようだった。
「僕は、体を汚された過去を持つんです。
そのせいで僕は、男の機能が働かない体になってしまいました。
その頃の僕は正直なところ、生きる屍になるところでした。
でもその心の傷を癒してくれたのは、今の僕の夫なんです。
その人は僕をとても大事にして、心の支えになってくれました。
その人がいたから僕は、今こうして生きているんです。
僕には分かる、きはだは今とても辛いはずです。
どうか、きはだを支えてあげてください」
み空が勝三に深々と頭を下げた。
「頭を上げてください。わたしは心からきはだを好いています。正直なところ、今はこうしてきはだの傍にいさせてもらっていますが、それを絶たれたとしても、遠くからでもきはだを一生見守るつもりでいます。
わたしはどうなってもいい。きはだにはまた笑っていて欲しいんですよ」
勝三の言葉に、本物を感じたみ空は目頭が熱くなる思いだった。
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