13 / 19
変化の兆し
しおりを挟む勝三と豊二が世話をすることになったからか、二人は初めて粥を全て平らげた。
久しぶりの満腹感からか、きはだは勝三に、柑子は豊二の体に支えられながらウツラウツラと船をこぎ始めた。勝三と豊二はお互いに顔を見合わせた。その満たされた表情を見たみ空は、心から好きあっているのだと思った。
深い眠りについた二人を横にさせた後、み空が看病とここでの生活について一通りを説明するために、勝三と豊二と連れ立った。
まずは厨房へと向かった。
料理長の萱草(カンゾウ)は「紅さまから聞いております」といって、食事を取りに来る時間、使用済みの器は自分で洗うこと、そして棚へと戻しておくことなど、食についての説明をした。
次に厠、手洗い場、風呂場と使用できる時間、そして出入りできる場所のみを説明した。
最後に、「布団の貸し出しはしないそうです」と、紅に言われたとおりに伝えると、二人は「畳の上に寝れるだけでもありがたいです」といって頭を下げた。
まるで迷路のように広い敷地を説明しながら、次の角を曲がると部屋に通じる真っ直ぐな廊下になるあたりで、すすり泣く声が聞こえた。何かを感じ取ったのか、勝三と豊二が走って廊下の角を曲がると、はきはだと柑子の泣いている姿があった。目がさめて勝三と豊二がいなかったためか、きはだが勝三を探して部屋からかなり離れたところまで這ってきたものの、体力を使い果たしたらしく、蹲って泣いていた。柑子は部屋を出て直ぐのところで膝を抱えて泣いていた。
二人の姿に勝三と豊二が血相を変えて駆け寄り「すまない、すまない」とこれまた泣きながらそれぞれを胸に抱いた。「いなくならないで」「傍にいて」と泣くきはだと柑子に勝三と豊二はひたすら謝り続けた。
泣き続ける二人を部屋に運びそれぞれの布団に寝かせると、きはだと柑子がかつて二人で眠っていたように布団の端に寄り、上掛け布団を上げて勝三と豊二を誘った。
勝三と豊二が戸惑いの表情を浮かべて苦笑するが、きはだと柑子にとっては真剣そのものだった。それを察してか、ちらちらとみ空に視線を送る勝三と豊二に、み空が口を開いた。
「紅さまはきはだと柑子が早く直るためには何でもするとおっしゃいました。ですから、二人の気の済むようにしてあげてください。
僕は、隣の間で寝泊りすることになりましたから」
み空がにっこりとそれだけを伝え、部屋を出てた。
勝三と豊二が看病を始めると、見る間に二人はも元気を取り戻し始め、傷の治りも早くなっていると医者も感嘆の声を上げた。
医者は柑子に顔を濡らさず、体に負担をかけない程度になら、風呂に浸かっても良いと診断を下した。ただし、長きに渡り床に臥せっていたため、必ず誰かを付き添うことを付け加えた。
柑子は豊二と顔を見合わせて喜びを露にした。
そして、きはだには傷口は膿むことなく順調に塞がりつつある。きちんと傷が塞がるまで、暫く待つようにと告げた。
勝三はきはだを慰めるように背を擦り続けた。
み空は初日の出来事も、その後の二人の献身的な付き添いも事細かく紅には報告をしていた。
「夫のセツに会いという顔をしているな」
「…はい。勝三様も豊二様もきはだと柑子をとても大事にしていて、それを見るたびにセツのことを思い出します」
「もう少しだけ辛抱して欲しい」
「わかっています。二人が大変な時期ということは、傷つけられたことがある僕が一番知っています。
でも、好いた人が傍にいれば必ず乗り越えられると信じています。
僕が、経験者ですから」
「そうだな。お前は、あの悪趣味に救われたのだったな」
「前から思っていたのですが、紅さまはなぜセツのことを『悪趣味』と呼ぶのですか?」
「…まあ、なんだ。なんとなくその呼び名が板についてな」
紅が鼻を掻いた。
「言いたくないなら別に良いです。気にしませんから。では、僕はこれで」
お辞儀をし、立ち上がろうとしたみ空に、紅は一つ頼みごとをした。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる