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ⅩⅢ
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朝、俺がオフィスに入ると、桐島課長はすでにデスクで書類に目を通していた。
「おはよう、小国くん」と軽やかに声をかける。
桐島課長は立ち上がると、
「おっ。大丈夫か?疲れた顔してるじゃん。
コーヒーでも淹れてくれるか、俺の分もな」
「え、あ、はい……。淹れてきます」
「まあ、気にすんなって。仕事も大事だけど、俺がいるときくらい楽しめよ」
桐島課長の手が俺の肩に軽く触れた。
「な、こっちの資料もついでに整理してくれる?」
俺は思わずぎくっと肩を引いて、
「え、あ、はい……」
距離が近い……でも断れない……よな。
「それにしても、なんかあった?
ドキドキしてんのか?」
桐島課長がニヤリと笑いながら近づく。
「そ、そんなこと……」
課長といるときは安心できたのに、緊張する。
……やっぱり居心地がよくない。
「いやー、小国くん、可愛い顔してるよね、ほんと。ついイジりたくなるんだよな」
周りの社員も苦笑い。
はぁぁ……
やっぱり、白鷹課長がよかった……
夕方、オフィスの時計が18時を回った。
書類を片付け、心を落ち着けながらスマホを手に取る。
「……今日は迅さんに会えるかな」
とつぶやき、送信ボタンを押す。
数十分後、迅さんが現れた。
いつも通りの落ち着いた表情だが、俺は胸の奥が少し跳ねるのを感じる。
「……課長、迅さん、すみません。
ちょっと、相談したいことがあって……」
「うん、なんだ。……座れ」
小さなカフェの片隅のテーブルに向かいあう。
「えっと……桐島課長のことなんですけど……」
恐る恐る話し始める。
「距離が近いというか……手を出してくるわけじゃないんですけど、なんか、嫌な感じがするし。
俺……どうすればいいのか分からなくて……」
迅さんは俺の顔をじっと見る、
「……やっぱり、そうか」
そして、少し息をつき、視線を柔らかくする。
「……あいつの下で働くのはよくないと思っていた」
「プロジェクト、終わるまでは頑張ってみたいと思ってるんですけど……」
「まあ。直樹はそう言うだろうな、とは思ってた」
手元のカップに触れ、少し俯くようにしてから
「…仕方ない、少し配慮してもらうよう俺から連絡しておく」
……配慮?
よくわからなくて、迅さんの顔を見る。
スマホでメッセージを送信し、すぐに着信があった。
迅さんは、悪い、と言って席を立った。
誰だろ……?
心配になってると、すぐに迅さんが戻ってきた。
「大丈夫、悪いようにはしないから」
迅さんは笑いながら、席についた。
カフェで夕ごはんを済ませて店を出た。
夜風が少し冷たい。
肩を震わせていたら、迅さんが歩幅を合わせながらそっと手を伸ばした。
俺はその手を握り、自然に手を繋いだ。
心臓が高鳴って、照れてしまう。
「……こうしてると、安心するな」
二人の間に静かな空気が流れて、迅さんがそっと顔を近づける。
街灯の下で、ほんの一瞬だけの唇が触れ合う軽いキス。
驚きと甘さで目を見開いていると、迅さんら小さく微笑んだ。
そのままくっついて歩いた。
朝、オフィスに入る前、深呼吸をした。
桐島課長のこと、昨晩の迅さんの手とキスの余韻を思い出す。
今日もがんばんないと。
デスクについて、今日の業務内容を確認して、舟形先輩のとこへ向かおうとしてたとき。
カツカツカツ。
ヒールの音。
えっ?
「桐島課長、いる?」
夕菜さんだった。
夕菜さんは今まで白鷹課長のいた、桐島課長のデスクに向かうと、何やら話し始めた。
桐島課長が笑いながら
「それは誤解だよ」とか「違う違う!」とか何か必死に否定している。
しばらくやり取りをしていて、桐島課長が出ていった。
すると、夕菜さんは俺の方に歩いてきた。
「直樹くん、また桐島課長に困ったら教えて」
俺が「へっ?」て顔をしていると、
「桐島課長は前から少し距離感がねぇ。セクハラ紛いなとこあって。直樹くんだけじゃないから、困ったことがあったら、言ってね」
と教えてくれた。
「……はい」
「ねぇ、直樹くん、昨日は迅と一緒だった?」
また俺が「へっ?」て顔をしてたら
「もう迅がうるさいのよ。俺の直樹が、俺の直樹が、って。しつこいしつこい。これだからアルファの執着は」
夕菜さんが笑いながら言う。
俺はだんだん理解して、だんだん顔が赤くなる。
「もう本当に迅がうるさいから、何かあったらすぐに言ってね」
夕菜さんは去っていった。
迅さん……。
昨日のメッセージと着信は夕菜さんだったんだね。
仕事しなきゃ、と思うのに、ニマニマ止まらなかった。
「おはよう、小国くん」と軽やかに声をかける。
桐島課長は立ち上がると、
「おっ。大丈夫か?疲れた顔してるじゃん。
コーヒーでも淹れてくれるか、俺の分もな」
「え、あ、はい……。淹れてきます」
「まあ、気にすんなって。仕事も大事だけど、俺がいるときくらい楽しめよ」
桐島課長の手が俺の肩に軽く触れた。
「な、こっちの資料もついでに整理してくれる?」
俺は思わずぎくっと肩を引いて、
「え、あ、はい……」
距離が近い……でも断れない……よな。
「それにしても、なんかあった?
ドキドキしてんのか?」
桐島課長がニヤリと笑いながら近づく。
「そ、そんなこと……」
課長といるときは安心できたのに、緊張する。
……やっぱり居心地がよくない。
「いやー、小国くん、可愛い顔してるよね、ほんと。ついイジりたくなるんだよな」
周りの社員も苦笑い。
はぁぁ……
やっぱり、白鷹課長がよかった……
夕方、オフィスの時計が18時を回った。
書類を片付け、心を落ち着けながらスマホを手に取る。
「……今日は迅さんに会えるかな」
とつぶやき、送信ボタンを押す。
数十分後、迅さんが現れた。
いつも通りの落ち着いた表情だが、俺は胸の奥が少し跳ねるのを感じる。
「……課長、迅さん、すみません。
ちょっと、相談したいことがあって……」
「うん、なんだ。……座れ」
小さなカフェの片隅のテーブルに向かいあう。
「えっと……桐島課長のことなんですけど……」
恐る恐る話し始める。
「距離が近いというか……手を出してくるわけじゃないんですけど、なんか、嫌な感じがするし。
俺……どうすればいいのか分からなくて……」
迅さんは俺の顔をじっと見る、
「……やっぱり、そうか」
そして、少し息をつき、視線を柔らかくする。
「……あいつの下で働くのはよくないと思っていた」
「プロジェクト、終わるまでは頑張ってみたいと思ってるんですけど……」
「まあ。直樹はそう言うだろうな、とは思ってた」
手元のカップに触れ、少し俯くようにしてから
「…仕方ない、少し配慮してもらうよう俺から連絡しておく」
……配慮?
よくわからなくて、迅さんの顔を見る。
スマホでメッセージを送信し、すぐに着信があった。
迅さんは、悪い、と言って席を立った。
誰だろ……?
心配になってると、すぐに迅さんが戻ってきた。
「大丈夫、悪いようにはしないから」
迅さんは笑いながら、席についた。
カフェで夕ごはんを済ませて店を出た。
夜風が少し冷たい。
肩を震わせていたら、迅さんが歩幅を合わせながらそっと手を伸ばした。
俺はその手を握り、自然に手を繋いだ。
心臓が高鳴って、照れてしまう。
「……こうしてると、安心するな」
二人の間に静かな空気が流れて、迅さんがそっと顔を近づける。
街灯の下で、ほんの一瞬だけの唇が触れ合う軽いキス。
驚きと甘さで目を見開いていると、迅さんら小さく微笑んだ。
そのままくっついて歩いた。
朝、オフィスに入る前、深呼吸をした。
桐島課長のこと、昨晩の迅さんの手とキスの余韻を思い出す。
今日もがんばんないと。
デスクについて、今日の業務内容を確認して、舟形先輩のとこへ向かおうとしてたとき。
カツカツカツ。
ヒールの音。
えっ?
「桐島課長、いる?」
夕菜さんだった。
夕菜さんは今まで白鷹課長のいた、桐島課長のデスクに向かうと、何やら話し始めた。
桐島課長が笑いながら
「それは誤解だよ」とか「違う違う!」とか何か必死に否定している。
しばらくやり取りをしていて、桐島課長が出ていった。
すると、夕菜さんは俺の方に歩いてきた。
「直樹くん、また桐島課長に困ったら教えて」
俺が「へっ?」て顔をしていると、
「桐島課長は前から少し距離感がねぇ。セクハラ紛いなとこあって。直樹くんだけじゃないから、困ったことがあったら、言ってね」
と教えてくれた。
「……はい」
「ねぇ、直樹くん、昨日は迅と一緒だった?」
また俺が「へっ?」て顔をしてたら
「もう迅がうるさいのよ。俺の直樹が、俺の直樹が、って。しつこいしつこい。これだからアルファの執着は」
夕菜さんが笑いながら言う。
俺はだんだん理解して、だんだん顔が赤くなる。
「もう本当に迅がうるさいから、何かあったらすぐに言ってね」
夕菜さんは去っていった。
迅さん……。
昨日のメッセージと着信は夕菜さんだったんだね。
仕事しなきゃ、と思うのに、ニマニマ止まらなかった。
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