(新章開始)当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる

蒼井梨音

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淡き春の夢①

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ルヴァニエール王国は代々精霊の加護を持つという女神様のご加護により、四季を通して温暖な気候であり農産物の恵み豊かな平和な国である。

女神様のご加護に守られた国で文化的な国。

人々は女神様のご加護が齎されるよう、愛に満ちた穏やかな生活を送る……
そんなルヴァニエール王国で両親にも年の離れた兄にも大切に育てられているのは、箱入り公爵令息の僕、エリアス・アーデント。

いつも女神様にお祈りを欠かさない家族思いな性格なんだ。


僕は、長い銀髪と紫の瞳をした色白で中性的な顔立ち。
兄には似ずに背は高くなくて体型も痩せ型。

十二歳で王立学園に入学はしたものの、過保護な両親になかなか通学は許してもらえなかった。

幸い家庭教師により、勉学は遅れをとることはなく成績は常に優秀だったけど。
でも僕も十八歳になり、この春、漸く通学できるようになった。

僕が通学し始めると、物珍しいのかたくさんの同級生や上級生、下級生まで集まってきた。
今までほとんど屋敷から出たことのなかった公爵令息ってことで、みんな興味あったんだろうな。 
なにせ、授業出てないのに主席なんて珍しいよね。

それから僕は、父さまと母さま、兄さまと一緒にそして社交の場に少しずつ姿を見せるようになった。

いきなり社交会とか無理だから、小さなホームパーティみたいな集まりとかから。
それでも貴族たちの間では、あのアーデント公爵家の次男がって、話題になったようだけど、僕にはあんまり実感ないかな。


そんなある日、アーデント家に国王陛下の名で書状が届いた。

「エリアス、この度アンドリュー王太子殿下の婚約者候補に選ばれたようだよ」

父さまから声がかかった。

アンドリュー王太子殿下は十七歳、金糸の美しいブロンドで碧い眼をした整った顔立ち。
高貴な微笑みと立ち居振る舞いで誰からも愛される完璧な王子様。

僕はご尊顔を拝見したことはないけど、その麗しさだけは存じ上げていた。

「父さま、それは僕が王太子殿下と年が近いことや公爵家の者だからでしょうか」

僕の問いに父さまは「そうだ」と頷かれた。 

この国では、愛する二人には女神の精霊の加護により、たとえ同性でも子をなすことが可能と言われている。
でも王族や魔力の高い高位の貴族じゃないと難しいとは言われているけど。

「エリアス、無理はしなくてはいいんだよ。」

「お断りしてもいいのよ」

父さまも母さまも心配そうに僕のことを諭すように話しかける。

そうだよね、箱入り息子の僕に王太子妃なんて務まるのかな。
父さまも母さまも兄さまも心配そうに僕を見てる。
過保護なんだから。

でも、王太子殿下にお会いしてから考えてもいいのかな、とも思ってしまう。

「父さま、殿下とお会いして、お話をすることはできますか?」

僕の言葉に父さまはたくさんの心配と少しの安心感をないまぜにしたような顔をして

「おお、エリアス。殿下とお会いになられるのだな……」

父さまは僕が無碍に断るのも良くないし、かといって話を受けて僕が苦労するのも良くないし…、葛藤が見てわかったが、

「大丈夫だよ、エリアス。私も一緒に行くよ」

父さまは、自分自身も僕も安心させるように言うと、母さまも兄さまも一緒に行くと言ってくださる。

「ありがとうございます、父さま。母さま。兄さま」
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