当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる

蒼井梨音

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淡き春の夢②

それからしばらくして、僕たちの家族が王宮に出向いた。

僕は王宮に行くのは初めてで、緊張。
馬車の中ではずっと兄さまと手を繋いでいた。

兄さまは
「エリアスは誰よりも美しいから大丈夫だよ」 

母さまも
「そうよ。エリアスはとても聡明なのだから、母さまの自慢なのよ」

兄さまも母さまも大好き。

公爵家の馬車を降りると、春の風がやさしく頬を撫でて、僕は少しくすぐったかった。

王宮の侍従に案内されて、華美ではないが上品に誂えた装飾が施された廊下を歩いていった。

春の陽光が差し込んで、キラキラしている。

僕はこれからお会いする殿下に期待と不安の入り混じった感情でいっぱい。

それから通された謁見室には、国王陛下と妃殿下と並んでアンドリュー王太子殿下がいた!

アンドリュー王太子殿下は僕が思ってたような美しい容姿で、姿勢がきれいだった。
僕と視線が合うと、王子様のようなスマイルをしてくれた。

国王陛下と父さまが挨拶をかわす。

今日は顔合わせまでなので、両親は国王陛下と王妃陛下とご歓談となり、僕は王太子殿下と一緒に中庭の方に歩いていった。

僕は前を歩く殿下に遅れないようについて歩いた。

王宮の庭はとても美しくて、色鮮やかだった。
花々が咲き誇る中を歩いて薔薇の生垣を抜けたところにガゼボがあった。
自然にそこへと向かって、僕は立ち止まったタイミングで、

「あ、僕はエリアス・アーデントです。エリアスとお呼びください」 

やっと言えた、とちょっと安心。

「あ、あぁ。私はアンドリュー・リシェルだ」

僕は殿下に促されて、ガゼボのベンチに座った。
殿下も隣にお掛けになった。

「エリアスは回復の魔法が得意と聞いたが…」

「はい。でも他は生活魔法が少ししか使えないんですが」

魔力を持って生まれた人間は魔術を学んで、魔法を覚える。
高位の身分のものほど強い魔力を持っているといわれている。
魔力には属性があって、得意な魔法も人それぞれで、僕は光の属性が強いみたいで、回復が得意。 

「殿下は風と水の魔法が得意と伺いました」 
「ああ、そうだ。まぁ私も実戦では使ったことはないんだがな」

殿下は僕の話をにこやかにお聞きになり、ご自身のこともお話しになった。

それから殿下と談笑しながら父さまたちの待っているところへ戻り、帰宅した。
 

「エリアス、王太子殿下とはどうだい」

夕食の時に父さまから切り出された。

夕食は父さまと母さま、兄さまと四人でいただくのが我が家のマイルール。
みんな、今日のことを聞きたそうにしてる。 

「はい。殿下はとても穏やかに僕の話をお聞きになり、たくさんお話してくださいました」

僕は本当に楽しかったんだ。
王太子殿下が僕のために時間を作って、僕の目を見て話をしてくれた。
僕を楽しませてくれた。
この出会いをこれから育てていけたらいいな、と強く思ったんだ。 

そして僕は婚約者候補を正式に受諾することになった。
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