27 / 182
春告げの宴⑤
報告会の翌日。
王宮の廊下は祝賀の準備で慌ただしかった。
花飾りと紋章旗が並び、春の風が吹き抜ける。
その中で、僕は一人、回廊の影に立ち止まっていた。
マルクに促されて祝賀会の支度をしていたはずが、胸がざわついて落ち着かない。
「……僕が、殿下の隣に立つなんて」
思わず口に出ていた。
「その自信のなさ、あなたらしいわね」
ふいにかかった声に振り返ると、レイナ様がそこに立っていた。
光をまとったような薄桃色のドレス。
レイナ様は笑みを浮かべながら近づく。
「お怪我の具合はいかが?」
「え、あ……はい。もう大丈夫です」
「よかった。あの戦いのあと、ずっと目が覚めないって聞いて、気になっていたの」
やさしい声だった。
それでも、僕は緊張して手をずっと握りしめてた。
「……僕、レイナ様に、謝らなくては」
「謝る? 何を?」
「で、……殿下のことを……」
言葉が続かない。
レイナはふっと笑って首を振った。
「ああ、やっぱり。——ねぇ、あなたが“殿下”を好きだって、みんな気づいてるわよ」
「えっ!?」
「隠せてると思ってたの?
殿下と目が合うたびに顔に出てたわよ」
僕は顔が熱くなって真っ赤になった。
レイナ様はそんな僕を見て、やさしく言葉を続ける。
「でもね、エリアス様。私はね、殿下を恋の相手としては見ていないのよ」
「……え?」
「殿下は尊敬すべき人。
殿下のお手伝いはしようと思うけれど、私が誰かを愛するとしたら——殿下ではないのよ」
レイナ様は遠くを見ていて、その眼差しはとても愛おしい。
エリアスは驚いて言葉を失った。
「だからね、エリアス様」
「……はい」
「あなたが殿下のことを想うのは、もう誰にも遠慮する必要なんてないの」
「でも……僕は——」
「大丈夫。自信を持って、ね」
レイナ様はまっすぐに言った。
優しくも、逃げ場を与えない言葉だった。
「恋をして傷つくのは、恥ずかしいことじゃないわ。
誰かを心から想える人は、強いの。
……あなたは、強い人よ」
その言葉に、胸の奥が熱くなった。
目の奥がじんわりと滲む。
「……ありがとうございます、レイナ様」
「いいえ。もう“様”なんて呼ばないで。私たち、もう仲間でしょ?」
「……はい」
レイナ様が笑う。
その笑顔が、春の日差しのように温かかった。
王宮の廊下は祝賀の準備で慌ただしかった。
花飾りと紋章旗が並び、春の風が吹き抜ける。
その中で、僕は一人、回廊の影に立ち止まっていた。
マルクに促されて祝賀会の支度をしていたはずが、胸がざわついて落ち着かない。
「……僕が、殿下の隣に立つなんて」
思わず口に出ていた。
「その自信のなさ、あなたらしいわね」
ふいにかかった声に振り返ると、レイナ様がそこに立っていた。
光をまとったような薄桃色のドレス。
レイナ様は笑みを浮かべながら近づく。
「お怪我の具合はいかが?」
「え、あ……はい。もう大丈夫です」
「よかった。あの戦いのあと、ずっと目が覚めないって聞いて、気になっていたの」
やさしい声だった。
それでも、僕は緊張して手をずっと握りしめてた。
「……僕、レイナ様に、謝らなくては」
「謝る? 何を?」
「で、……殿下のことを……」
言葉が続かない。
レイナはふっと笑って首を振った。
「ああ、やっぱり。——ねぇ、あなたが“殿下”を好きだって、みんな気づいてるわよ」
「えっ!?」
「隠せてると思ってたの?
殿下と目が合うたびに顔に出てたわよ」
僕は顔が熱くなって真っ赤になった。
レイナ様はそんな僕を見て、やさしく言葉を続ける。
「でもね、エリアス様。私はね、殿下を恋の相手としては見ていないのよ」
「……え?」
「殿下は尊敬すべき人。
殿下のお手伝いはしようと思うけれど、私が誰かを愛するとしたら——殿下ではないのよ」
レイナ様は遠くを見ていて、その眼差しはとても愛おしい。
エリアスは驚いて言葉を失った。
「だからね、エリアス様」
「……はい」
「あなたが殿下のことを想うのは、もう誰にも遠慮する必要なんてないの」
「でも……僕は——」
「大丈夫。自信を持って、ね」
レイナ様はまっすぐに言った。
優しくも、逃げ場を与えない言葉だった。
「恋をして傷つくのは、恥ずかしいことじゃないわ。
誰かを心から想える人は、強いの。
……あなたは、強い人よ」
その言葉に、胸の奥が熱くなった。
目の奥がじんわりと滲む。
「……ありがとうございます、レイナ様」
「いいえ。もう“様”なんて呼ばないで。私たち、もう仲間でしょ?」
「……はい」
レイナ様が笑う。
その笑顔が、春の日差しのように温かかった。
あなたにおすすめの小説
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!
竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。
でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。
何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。
王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。
僕は邪魔なんだよね。分かってる。
先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。
そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。
だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。
僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。
従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。
だけど、みんな知らなかったんだ。
僕がいなくなったら困るってこと…。
帰ってきてくれって言われても、今更無理です。
2026.03.30 内容紹介一部修正
【2部開始】人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型)
※無断利用をお断りします
美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。
竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。
男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。
家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。
前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。
前世の記憶チートで優秀なことも。
だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。
愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
【完結】少年王が望むは…
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。
15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。
恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか?
【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム
愛され方を教えて
あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。
次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。
そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…