当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる

蒼井梨音

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当て馬にした僕が、当て馬にされた御子さまに救われ続けている件

結婚式と小さな旅①

──幸せとは、誰かの願いに支えられている。

結婚式の準備が最終段階に入り、
王城の一室は華やかな衣装と、花の香りに満ちていた。
衣装合わせもひと段落ついて、感慨に耽っていた。

そんなとき、侍従が静かに扉を叩いた。

「ジュリアン様。ドラヴァール王家より、贈り物が届いております」

ドラヴァール王国。
送り主に思い当たるのは、たった一人だった。

箱を受け取った瞬間、胸の奥で何かが柔らかく波打つ。

──エリアス様。

ゆっくりと包装をほどいて、蓋を開ける。

中には、淡い光を宿したペアのブレスレット。
手を触れただけで、微かに温かさが伝わってくるのがわかる。

そっと添えられた手紙は、とても短くて、エリアス様らしい簡潔さだった。

「結婚おめでとう。
祈りが、お二人を幸せへ導きますように。」

読んだ瞬間、胸がつんと痛んだ。
あの優しい祈りの声が、すぐそばで響いたような気がした。

「……エリアス様は、本当に……」

彼は僕たちの幸せを願ってくれている。
僕が、傷つけてしまったのに。
それでも、こんなふうに真っ直ぐ祝福を送ってくれる。

目を閉じると、じわりと胸の奥が熱くなった。

そのとき、背後からふわりと
温かい腕が僕を包み込んだ。

「どうした、ジュリアン。……泣いているのか?」

アンディ様だった。
最近のアンディ様は、以前よりずっと甘い。
正式に結婚すると決まってから、触れ合う時間も言葉にも、優しさが増している。

「これ……エリアス様から届いたんだ」

そっとブレスレットを差し出すと、
アンディ様は目を細めた。

「エリアスらしいな。……きれいだ」

二人で座り、並んで手首につけてみた。

淡く光り、指先に触れそうなほど近い距離で
アンディ様が微笑む。

「似合ってるよ、ジュリアン」

「アンディ様こそ……よく似合ってる」

その瞬間だった。

二つのブレスレットの間で──
きら、きら、と透明な光が跳ねるように輝いて、
すぐに空気へ溶けるように消えていった。

まるでエリアス様の祈りが
僕たちの行く道を
そっと後押ししてくれたようだった。

「……祝福、してくれてるんだね」

「そうだな、エリアスはそういうことをするやつだよ」

アンディ様は僕の指を絡めて、自分の方へ軽く引き寄せる。

「これからは、二人でルヴァニエールを作っていこう。
……ずっと一緒に」

「……うん。僕も、隣で支えるよ。アンディ様と、一緒に、生きていく」

二人の手首で揺れるブレスレットが、
小さく触れ合って、微かに音を立てた。

祈りの光に包まれながら、僕は改めて強く思う。

──この人と共に歩く未来を、必ず幸せにすると。



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