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18.祝勝会を抜け出して
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青年兵に囲まれていたリュカを奪い返し、ゼファールはリュカの手首を掴んだまま、祝勝会の喧騒からゆっくりと離れた。
外の空気が触れる静かな部屋の隅に来ると、リュカはようやくぷいと顔をそむける。
「……べ、別に困ってなかったし」
リュカの尻尾はばっさばっさ揺れている。
ゼファールは思わず口元を緩めた。
「嘘が下手すぎる。尻尾が喧嘩売ってるぞ」
「う、うるせー……!」
真っ赤になって反論するリュカの肩に、ゼファールがそっと手を添えた。
「……こっちへ来い」
それだけ言うと、リュカの返事も待たず、
そのまま魔王の私室へとゆっくり導いていった。
騎士も侍従も、魔王さまに連れていかれる少年を止める者はいなかった。
誰もが下がり、道を開けた。
ゼファールの部屋の重い扉が閉まると、外の喧騒は一気に消えた。
リュカは少しだけびくっとする。
「……ここ、ゼファの部屋じゃねぇか」
「そうだ。お前を落ち着かせる場所くらい、俺の部屋でいいだろう」
「別に落ち着いてるっつーの!」
と言い返すリュカの尻尾は、さっきよりさらに強烈に揺れている。
ゼファはため息をつきながら、リュカの額に指先で触れた。
その瞬間だった。
ふっと、リュカの魔力がゼファールの魔力に呼応した。
金色と紅の混ざる小さな光が、リュカの瞳に浮かぶ。
「……リュカ?」
リュカは息をのんだ。
「あ……な、なんか、胸の奥が、あつ……」
狼の耳がぴん、と立っている。
尻尾だけがゼファの腰にそっと巻きつき、リュカ本人は何が起こっているのか、わからない。
ゼファールは一瞬だけ驚いたけど、すぐにリュカの肩を両手で抱えた。
「大丈夫だ。怖いものじゃない」
「こ、怖くねぇって!」
震えているのに、言葉はツンツンしている。
ゼファールはその震えごと抱き寄せる。
胸に押し付けられたリュカの体から、微かに脈打つ魔力。
ゼファールの魔力を吸い寄せるように揺れていた。
──魔力の同調……
魔王だけが感じ取れる、特別な気配。
ゼファールはゆっくり息を吐いた。
「……お前は、俺の魔力に反応している。
どうしてかはまだ分からないけど……」
そして、リュカの耳元で低く続けた。
「――お前に触れられるのは、俺だけでいい」
リュカの体がびくっと跳ねた。
「はっ……!? なに言って……!」
リュカは、顔を真っ赤にして後ろに下がろうとするが、尻尾がゼファに絡んだまま離れない。
ゼファはそれに気づき、くすっと笑った。
「尻尾が嘘をつかせてくれないな」
「ち、ちがっ……これ勝手に……!」
リュカは完全にしどろもどろだ。
ゼファールはその可愛さに、胸の奥が強く疼くのを自覚しながら、そっとリュカの頭に手を置いた。
「……祝勝会は、もう十分だ。行かなくていい。疲れただろう?」
リュカは黙ってうなずき、
そのままゼファールの胸に額を押しつけた。
「……あいつら、なんでおれに構ってくんだよ。
……ゼファの、側にいたかっただけなのに……」
ぼそっと漏らされたリュカの小さな本音。
ゼファールはその言葉に、はっきりと胸が熱くなるのを感じた。
「そう言うなら、最初から俺から離れるな」
低く、静かな声で囁いた。
リュカは真っ赤なまま文句を言おうとしたけど、言葉に詰まり、ただ尻尾だけがゼファに巻きついていた。
外の空気が触れる静かな部屋の隅に来ると、リュカはようやくぷいと顔をそむける。
「……べ、別に困ってなかったし」
リュカの尻尾はばっさばっさ揺れている。
ゼファールは思わず口元を緩めた。
「嘘が下手すぎる。尻尾が喧嘩売ってるぞ」
「う、うるせー……!」
真っ赤になって反論するリュカの肩に、ゼファールがそっと手を添えた。
「……こっちへ来い」
それだけ言うと、リュカの返事も待たず、
そのまま魔王の私室へとゆっくり導いていった。
騎士も侍従も、魔王さまに連れていかれる少年を止める者はいなかった。
誰もが下がり、道を開けた。
ゼファールの部屋の重い扉が閉まると、外の喧騒は一気に消えた。
リュカは少しだけびくっとする。
「……ここ、ゼファの部屋じゃねぇか」
「そうだ。お前を落ち着かせる場所くらい、俺の部屋でいいだろう」
「別に落ち着いてるっつーの!」
と言い返すリュカの尻尾は、さっきよりさらに強烈に揺れている。
ゼファはため息をつきながら、リュカの額に指先で触れた。
その瞬間だった。
ふっと、リュカの魔力がゼファールの魔力に呼応した。
金色と紅の混ざる小さな光が、リュカの瞳に浮かぶ。
「……リュカ?」
リュカは息をのんだ。
「あ……な、なんか、胸の奥が、あつ……」
狼の耳がぴん、と立っている。
尻尾だけがゼファの腰にそっと巻きつき、リュカ本人は何が起こっているのか、わからない。
ゼファールは一瞬だけ驚いたけど、すぐにリュカの肩を両手で抱えた。
「大丈夫だ。怖いものじゃない」
「こ、怖くねぇって!」
震えているのに、言葉はツンツンしている。
ゼファールはその震えごと抱き寄せる。
胸に押し付けられたリュカの体から、微かに脈打つ魔力。
ゼファールの魔力を吸い寄せるように揺れていた。
──魔力の同調……
魔王だけが感じ取れる、特別な気配。
ゼファールはゆっくり息を吐いた。
「……お前は、俺の魔力に反応している。
どうしてかはまだ分からないけど……」
そして、リュカの耳元で低く続けた。
「――お前に触れられるのは、俺だけでいい」
リュカの体がびくっと跳ねた。
「はっ……!? なに言って……!」
リュカは、顔を真っ赤にして後ろに下がろうとするが、尻尾がゼファに絡んだまま離れない。
ゼファはそれに気づき、くすっと笑った。
「尻尾が嘘をつかせてくれないな」
「ち、ちがっ……これ勝手に……!」
リュカは完全にしどろもどろだ。
ゼファールはその可愛さに、胸の奥が強く疼くのを自覚しながら、そっとリュカの頭に手を置いた。
「……祝勝会は、もう十分だ。行かなくていい。疲れただろう?」
リュカは黙ってうなずき、
そのままゼファールの胸に額を押しつけた。
「……あいつら、なんでおれに構ってくんだよ。
……ゼファの、側にいたかっただけなのに……」
ぼそっと漏らされたリュカの小さな本音。
ゼファールはその言葉に、はっきりと胸が熱くなるのを感じた。
「そう言うなら、最初から俺から離れるな」
低く、静かな声で囁いた。
リュカは真っ赤なまま文句を言おうとしたけど、言葉に詰まり、ただ尻尾だけがゼファに巻きついていた。
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