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35.剣術大会
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ガイルに散々からかわれた日の夜。
リュカはゼファールの姿を見ると、胸の鼓動が変に早くなるようになった。
(ゼファ……嫉妬、してたの?
そんなわけ……ない。……ないけど……)
意識すればするほど、ゼファールの前で普段通りにできなくなる。
そして、ツンとした態度でしか接することができない。
「リュカ、今日も――」
何か言いたげなゼファールの声も聞かずに、
「今日はガイルと練習するから!
ゼファは……その、忙しいでしょ。僕のことなんていいよ!」
自分でも言ってから後悔した。
(なんで、こんな言い方したんだろう……っ)
ゼファールの金色の瞳が、ほんの少し寂しそうに揺れた。
胸が痛んだ。
でも素直に言えない。
(ゼファに見てほしい。
僕、ちゃんと強くなりたい。
でも……それを言ったら……嫌われる気がして)
どんどん、すれ違っていく気がした。
そして、剣術大会の日。
騎士団の訓練場は観客でいっぱいだった。
魔王であるゼファールも観覧席の上段に座り、全選手の戦いを見守っている。
(ゼファ……見てるかな)
リュカは胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
「お前、緊張しすぎ」
控室でガイルが笑う。
「してない!」
「はいツンデレ。いいから深呼吸しろ。
ゼファは他の試合も見なきゃいけないんだから、
ずっとお前だけってわけにはいかねえよ」
わかってる。
わかってるのに――
(ゼファに、褒めてもらいたい)
それだけだった。
試合は順調だった。
持ち前の感覚で相手の動きを読み、勝ち進んでいく。
だが――三回戦目。
リュカは、観覧席を見てしまった。
(ゼファ……どこ……)
その一瞬。
――ガンッ!
横からの不意打ちが入り、リュカは地面に倒れ込んでしまった。
「っ……!」
視界が揺れる。
木剣を落としそうになる。
(ぼく……ゼファに……見てほしかっただけなのに……気がそれて……っ)
涙がにじんだ。
(ゼファ……)
視線が自然と観覧席を探す。
観客の影の中――ひときわ高い位置で、金の瞳がまっすぐ自分を捉えていた。
ゼファールだった。
リュカと目が合った瞬間、ゼファールの口がわずかに動いた。
――立て!
声は聞こえない。
でもその言葉だけは、胸の奥まで届いた。
リュカの呼吸が変わった。
(……ゼファが見てる)
涙が乾く。
膝に力が戻る。
リュカはゆっくりと立ち上がり、剣を構えた。
そして――
相手の隙を読み、一撃で制した。
大会の最終結果、リュカは三位。
騎士団はざわついていた。
「始めたばかりであれはすごい」
「才能の塊だな」
ガイルが頭をぽんと叩く。
「よく頑張ったな、リュカ。胸張っていいぞ」
ゼファールも歩み寄り、静かに言う。
「……よくやった。誇りに思う」
その言葉だけで、リュカの胸はいっぱいになった。
でも、やっぱり素直には言えない。
「べ、別に……!
ちょっと……がんばっただけ…だし…」
ゼファールは目を細め、微笑むようにリュカを見ていた。
リュカの尻尾だけが嬉しそうにパタパタしていた。
夕暮れの訓練場。
試合後の喧噪が遠ざかり、二人だけの時間が訪れた。
ゼファールが口を開く。
「……怖かった。リュカが倒れたとき」
「……ごめん。
ゼファ……に、見てほしくて……
でも、ちゃんと戦わなきゃいけなくて……」
言いながら、胸がきゅっと痛む。
ゼファールは静かにリュカの肩を引き寄せた。
「見てたよ。全部」
「……全部?」
「ああ。お前が立ち上がる瞬間も、勝つ瞬間も」
リュカの喉が熱くなる。
「ぼく……いつか……
ゼファの隣に立って、一緒に戦うよ。
ちゃんと、強くなるから……」
ゼファールの腕が、ぎゅっとリュカを抱きしめる。
温かくて、安心できて――
胸の奥で何かが優しくほどけていく。
「……楽しみにしてる、リュカ」
その声は、誰よりも優しかった。
リュカはゼファールの姿を見ると、胸の鼓動が変に早くなるようになった。
(ゼファ……嫉妬、してたの?
そんなわけ……ない。……ないけど……)
意識すればするほど、ゼファールの前で普段通りにできなくなる。
そして、ツンとした態度でしか接することができない。
「リュカ、今日も――」
何か言いたげなゼファールの声も聞かずに、
「今日はガイルと練習するから!
ゼファは……その、忙しいでしょ。僕のことなんていいよ!」
自分でも言ってから後悔した。
(なんで、こんな言い方したんだろう……っ)
ゼファールの金色の瞳が、ほんの少し寂しそうに揺れた。
胸が痛んだ。
でも素直に言えない。
(ゼファに見てほしい。
僕、ちゃんと強くなりたい。
でも……それを言ったら……嫌われる気がして)
どんどん、すれ違っていく気がした。
そして、剣術大会の日。
騎士団の訓練場は観客でいっぱいだった。
魔王であるゼファールも観覧席の上段に座り、全選手の戦いを見守っている。
(ゼファ……見てるかな)
リュカは胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
「お前、緊張しすぎ」
控室でガイルが笑う。
「してない!」
「はいツンデレ。いいから深呼吸しろ。
ゼファは他の試合も見なきゃいけないんだから、
ずっとお前だけってわけにはいかねえよ」
わかってる。
わかってるのに――
(ゼファに、褒めてもらいたい)
それだけだった。
試合は順調だった。
持ち前の感覚で相手の動きを読み、勝ち進んでいく。
だが――三回戦目。
リュカは、観覧席を見てしまった。
(ゼファ……どこ……)
その一瞬。
――ガンッ!
横からの不意打ちが入り、リュカは地面に倒れ込んでしまった。
「っ……!」
視界が揺れる。
木剣を落としそうになる。
(ぼく……ゼファに……見てほしかっただけなのに……気がそれて……っ)
涙がにじんだ。
(ゼファ……)
視線が自然と観覧席を探す。
観客の影の中――ひときわ高い位置で、金の瞳がまっすぐ自分を捉えていた。
ゼファールだった。
リュカと目が合った瞬間、ゼファールの口がわずかに動いた。
――立て!
声は聞こえない。
でもその言葉だけは、胸の奥まで届いた。
リュカの呼吸が変わった。
(……ゼファが見てる)
涙が乾く。
膝に力が戻る。
リュカはゆっくりと立ち上がり、剣を構えた。
そして――
相手の隙を読み、一撃で制した。
大会の最終結果、リュカは三位。
騎士団はざわついていた。
「始めたばかりであれはすごい」
「才能の塊だな」
ガイルが頭をぽんと叩く。
「よく頑張ったな、リュカ。胸張っていいぞ」
ゼファールも歩み寄り、静かに言う。
「……よくやった。誇りに思う」
その言葉だけで、リュカの胸はいっぱいになった。
でも、やっぱり素直には言えない。
「べ、別に……!
ちょっと……がんばっただけ…だし…」
ゼファールは目を細め、微笑むようにリュカを見ていた。
リュカの尻尾だけが嬉しそうにパタパタしていた。
夕暮れの訓練場。
試合後の喧噪が遠ざかり、二人だけの時間が訪れた。
ゼファールが口を開く。
「……怖かった。リュカが倒れたとき」
「……ごめん。
ゼファ……に、見てほしくて……
でも、ちゃんと戦わなきゃいけなくて……」
言いながら、胸がきゅっと痛む。
ゼファールは静かにリュカの肩を引き寄せた。
「見てたよ。全部」
「……全部?」
「ああ。お前が立ち上がる瞬間も、勝つ瞬間も」
リュカの喉が熱くなる。
「ぼく……いつか……
ゼファの隣に立って、一緒に戦うよ。
ちゃんと、強くなるから……」
ゼファールの腕が、ぎゅっとリュカを抱きしめる。
温かくて、安心できて――
胸の奥で何かが優しくほどけていく。
「……楽しみにしてる、リュカ」
その声は、誰よりも優しかった。
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