魔王さまに抱かれるもふもふツンデレオオカミの僕

蒼井梨音

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47.王都での最後の夜

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荷造りを終えた部屋は、妙に静かだった。
窓の外から届く王都の気配は、どこかよそよそしい。

ゼファールは、少しだけ視線を伏せてから言った。

「……リュカ。
王都に連れてきて、嫌な思いをさせてしまったな。
寂しい思いもさせた。……すまなかったな」

「ちがう。僕が、ついてきたかったんだ」
リュカは驚いて顔を上げ、すぐに首を振る。
「……ゼファと、離れたくなかったから」

その言葉に、ゼファールは一瞬だけ目を見開き、すぐに小さく息を吐いた。

(……ゼファにとっても、王都は心休まる場所じゃないんだ)
リュカは、そう思うと、胸の奥が少しだけきゅっとなる。

「……早く、辺境に帰ろうな」
ゼファールはそう言って少し笑うと、リュカの方を見る。

リュカは、黙って頷いた。
ゼファールは歩み寄り、リュカの耳元に、囁くように言う。

「初めて会ったときは、こんなに大事な存在になるなんて思ってなかった。
でも、一生懸命に頑張ってるお前を見てると……心が、勝手に動くんだ」

ゼファールは、少し照れたように、でも逃げない声で続ける。

「守りたくて、そばに置きたくて……俺のものにしたいって思ってしまったんだ。
……イグナーツから守ってやれなくて、ごめんな」

ゼファールの腕が、そっとリュカに伸びる。

「遠ざけられて、やっとわかった。
お前が、どれだけ大事か」
ゼファールの手がリュカの頬に触れる。

「……俺は、お前が好きだ。ずっと、一緒にいたい」

その瞬間。

リュカの尻尾が、ぼふっと大きく膨らんだ。
リュカの顔が真っ赤になる。

(……あ)

胸が、どくんと跳ねる。

森に逃げ出して、戻ってきた夜、
「魔力を吸い出すため」と言われて、触れられた唇の感触が、不意に蘇る。

顔が熱くなるのをごまかすように、リュカは視線を逸らしながら、正直な気持ちを口にした。

「……ゼファとさ。ずっと、こうやって一緒にいたかった。
なのに、体が勝手に拒絶するんだ」
ぎゅっと、服の裾を握る。
「くっつきたいのに。
……ゼファが、俺を遠ざけてるんだって、思ってた。

だんだん気持ち悪くなってくるし……本当に、本当に、怖かったんだ」

リュカは顔を上げる。
もふっとした尻尾は、ぱたぱた揺れている。

「でもさ、それでも……ずっと、ゼファにくっつきたかった。
だから、離れていったのが、すごく悲しかった」
リュカの声が、少しだけ震える。
「……もう、俺はいらないって言われたみたいで」
一拍、置いて、もふっとした尻尾がおとなしくなる。
「だから……もう、離れていくなよ」

ゼファールは答えの代わりに、リュカを強く抱きしめた。
逃がさないように、でも壊さないように。

額に、そっと口づける。

「もう、離れない」

短く、確かな声だった。
リュカは、何も言えずに、ゼファールの胸に顔を埋めた。
もふっとした尻尾は、またぱたぱた動き出した。


……うん。
言葉にならなくて、リュカはぎゅうぎゅうに顔を押しつけていた。


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