世紀末新鋭霊滅隊 ― 巨大女郎蜘蛛アリアドネ掃討戦 ―

SilentNoise

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第一章 人類の後退

隕石落下

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 最初の抵抗は、あまりにも無力だった。
 米欧の連合軍は最新鋭の兵器を総動員し、落下地点を囲い込んだ。弾頭は大地を揺るがし、戦車は鋼鉄の雨を降らせた。
 ――しかし、敵は「死ななかった」、むしろ全く通ってないといった方がいい。

 弾丸が貫くたび、奴らは「影」に姿を変えて抜け、すぐに別の場所で形を取り戻した。火炎は胞子の群れを焦がしたが、黒煙は電線を伝い、都市全体へと拡散していった。
 通信網を介して、怪異は逆に人間の中枢へ侵入する。
 指令室のスクリーンが一斉に歪み、将校の頭上に“誰かの顔”が浮かんだ。戦闘データは改竄され、兵器の照準は味方へとねじ曲げられた。
 敵は物理だけでなく、情報そのものを蝕んだのだ。

 やがて兵士たちは恐怖に囚われた。
 照準器越しに見えたのは、死んだ家族の顔。
 無線から響いたのは、かつての恋人の声。
 兵士たちは引き金を引けなくなり、隊列は崩れ、軍は自壊していった。

 こうして「ゴーストホロウ」の勢力は、瞬く間に拡大した。
 街は夜ごとに沈黙し、翌朝には繭に覆われていた。
 学校や病院、駅や商業施設――すべてが白い糸の中に取り込まれ、人々の記憶ごと“異形の書庫”へと変貌した。
 残された人間は、光の届かぬ地下へと潜った。

 地下都市。
 それは人類最後の砦であり、同時に墓場の入口でもあった。
 瓦礫の下に無理やり掘られたシェルターには、疲弊した市民と兵士がひしめき合い、腐った空気を吸い合っていた。
 地上は失われた。地下に残されたのは、怯え、飢え、そして「抗う手段を探さねば全滅する」という焦燥感だった。

 科学者たちは考えた。
 ただの火器では敵に触れることすらできない。
 ならば――人間の内側にある“霊的な因子”を武器へと転化するしかない、と。

 やがて狂気の研究が始まった。
 旧教会の残骸から古い祈りの断章を掘り起こし、数値化された霊力と人工知能の演算を組み合わせる。
 兵器の内部に“人間の精神”を装填し、祈文を弾丸として撃ち出す。
 そうして生まれたのが――**霊葬(れいそう)**である。

 霊葬は、銃であり、呪具であり、祈りの残骸だ。
 発射と同時に使用者の精神を燃やし、敵の存在を「否定の言葉」で削り取る。
 代償は大きい。使い手は精神を蝕まれ、長くは生きられない。
 だが、それでも。
 ゴーストホロウに届く唯一の刃は、これしかなかった。

 この兵器を担う者たちが、やがて呼ばれることになる。
 新鋭霊滅隊。

 科学と呪術を併せ持ち、戦場を駆ける人類最後の牙。
 彼らは後退する人類の「最後の一歩」を支える存在であり、同時に“最前線で死ぬこと”を宿命づけられた影だった。
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