世紀末新鋭霊滅隊 ― 巨大女郎蜘蛛アリアドネ掃討戦 ―

SilentNoise

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第一章 人類の後退

隕石落下

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 かつての地球は、誰もが「進歩」という言葉で説明できた。
 AIは人間の欲望を読み取り、仕事も政治も学問も、最適化された答えを提供した。
 ニューラルネットワークは空間を圧縮し、秒単位で情報を届け、言語の壁は全世界言語秒訳機能により消えていた。
 都市は透明な壁のように天を突き、太陽を模倣した照明が夜を追放した。宇宙の謎も少しずつ剥がされ、月も火星も庭先のように思われた。
 飢えも戦争も、時代遅れの記憶に過ぎない――人々はそう信じていた。
 だが、それはある日、唐突に終わった。

 巨大な隕石が大気圏を破り何の前触れもなく落下したのだ。レーダーにも写らず観測されることなく。
 直径はわずか百メートル。だが、その内部には未知の「細胞群」が眠っていた。衝突の瞬間、黒煙は風に乗って世界へ散布された。胞子は呼吸に紛れ、雨に混じり、川を伝い、そして――電流に溶け込んだ。
 人々は最初、ただの気象異常だと笑った。
 しかし、電気に宿った“何か”は違った。街の灯が点滅し、モニターに影が走り、やがてその影は人の姿を取った。亡き者の顔、恐怖の象徴、誰も知らぬ異形。霊視は具現化し、ゴーストホロウと呼ばれる幻影は日常に溢れ出した。
 銃弾は効かなかった。
 ミサイルは爆煙を突き抜けても、怪異をかすめることすらできなかった。
 逆に通信網を通じて、化け物は人間の生活に侵入した。
 軍の司令室が一夜で沈黙し、避難民キャンプが丸ごと“糸”に呑まれるのは珍しくもなくなった。

 ――人類は後退を余儀なくされた。
 かつての国家は、瓦解した都市の跡地でかろうじて命脈を保ち、廃墟を越えた先には必ず巣窟が広がっていた。
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