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第二章 廃都ロドリネ
逆坂道からの落石奇襲 ― 第二団
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正面の坂が炎と血で覆われたその裏で、もう一方の坂は闇に沈んでいた。
瓦礫と折れた石柱が積み重なり、まるで「通るな」と言わんばかりに崩壊した聖堂の残骸が散乱している。
風は止み、空気は重く湿っていた。腐敗した水の匂いと、霊力が凝縮した金属的な臭気が入り交じり、鼻孔を突き刺す。
第二団は音を殺して潜んでいた。
団長、ラバロ=クシェルの目は氷のように冷たく澄み、手には小さな水晶板を握っている。
そこに映し出されるのは、地形を簡易的に描き出した霊葬地図。
「……支柱は三本、狙撃位置を修正。射角、三度下げろ。」
静かな声が耳に届いた瞬間、団員たちは息を合わせ、銃口を支柱へと向ける。
闇の中から現れたホロウの群れは、まるで異形の蟻の行列だった。
人の腕を何本も束ねて脚に変え、頭部は面のように歪んでいる。
呻き声が重なり合い、不協和音のような「祈り」が坂を満たしていった。
その異形の列が聖堂の裏口へと向かうその時――。
「今だ。」
ラバロの声が響いた。
数発の霊葬弾が放たれ、支柱が砕け散る。
瞬間、瓦礫が軋みを上げ、崩壊の連鎖が坂全体を揺らした。
轟音。大地が裂けるような音と共に、巨岩が次々と転がり落ちる。
坂道を埋め尽くしていたホロウたちは逃げる暇もなく押し潰され、呻き声が悲鳴に変わり、やがて骨を砕くような破砕音だけが残った。
「やっば、スカッとするニャン!」
崩れた瓦礫の上で、霊葬ライフルを抱えたおにゃんこ=ランコが飛び跳ねる。
猫耳をぴんと立て、目を輝かせながら岩の合間に潜む残骸を狙撃する。
「ほらほら! 動いたら蜂の巣だニャ! ……って、ほんとに蜂みたいなの出てきた!」
黒い殻を持つ小型ホロウが岩陰から飛び出した瞬間、彼女の弾丸が正確に頭部を貫いた。
「ランコ、戯れるな。次の群れが来る。」
ラバロは冷徹に告げる。
彼の目は戦況を一点の揺らぎもなく追い、仲間たちの動きすら将棋の駒のように制御していた。
「俺たちは影だ。正面の炎に気を取られている今、この奇襲こそが均衡を保つ。」
足元の瓦礫がまだ熱を帯び、押し潰されたホロウの残滓が黒煙を上げていた。
そこに立つ第二団は、派手さを見せない。
だが確実に、戦況を裏から操る存在だった。知将ラバロはミスをしない。
確実な方程式を持ち、緻密な戦略が戦場を圧倒的に凌駕する。
坂道を覆う霧の向こう、正面突撃の炎が遠くに揺らめいて見える。
――第一団が惹きつけ、第二団が削ぐ。
その連携の中で、戦場は少しずつ聖堂という巨悪の心臓部へと近づいていった。
そして、ラバロとランコは目標地点にたどり着いた。
坂道の先の地点、大聖堂の屋根上、かつて煌びやかな大聖堂は見る影もなく、蔦が覆い、赤黒い糸が
巨大な繭を創り、どくんどくんと脈を打っている。
そして三日月形上に切れた裂け目から光が溢れていた。
瓦礫と折れた石柱が積み重なり、まるで「通るな」と言わんばかりに崩壊した聖堂の残骸が散乱している。
風は止み、空気は重く湿っていた。腐敗した水の匂いと、霊力が凝縮した金属的な臭気が入り交じり、鼻孔を突き刺す。
第二団は音を殺して潜んでいた。
団長、ラバロ=クシェルの目は氷のように冷たく澄み、手には小さな水晶板を握っている。
そこに映し出されるのは、地形を簡易的に描き出した霊葬地図。
「……支柱は三本、狙撃位置を修正。射角、三度下げろ。」
静かな声が耳に届いた瞬間、団員たちは息を合わせ、銃口を支柱へと向ける。
闇の中から現れたホロウの群れは、まるで異形の蟻の行列だった。
人の腕を何本も束ねて脚に変え、頭部は面のように歪んでいる。
呻き声が重なり合い、不協和音のような「祈り」が坂を満たしていった。
その異形の列が聖堂の裏口へと向かうその時――。
「今だ。」
ラバロの声が響いた。
数発の霊葬弾が放たれ、支柱が砕け散る。
瞬間、瓦礫が軋みを上げ、崩壊の連鎖が坂全体を揺らした。
轟音。大地が裂けるような音と共に、巨岩が次々と転がり落ちる。
坂道を埋め尽くしていたホロウたちは逃げる暇もなく押し潰され、呻き声が悲鳴に変わり、やがて骨を砕くような破砕音だけが残った。
「やっば、スカッとするニャン!」
崩れた瓦礫の上で、霊葬ライフルを抱えたおにゃんこ=ランコが飛び跳ねる。
猫耳をぴんと立て、目を輝かせながら岩の合間に潜む残骸を狙撃する。
「ほらほら! 動いたら蜂の巣だニャ! ……って、ほんとに蜂みたいなの出てきた!」
黒い殻を持つ小型ホロウが岩陰から飛び出した瞬間、彼女の弾丸が正確に頭部を貫いた。
「ランコ、戯れるな。次の群れが来る。」
ラバロは冷徹に告げる。
彼の目は戦況を一点の揺らぎもなく追い、仲間たちの動きすら将棋の駒のように制御していた。
「俺たちは影だ。正面の炎に気を取られている今、この奇襲こそが均衡を保つ。」
足元の瓦礫がまだ熱を帯び、押し潰されたホロウの残滓が黒煙を上げていた。
そこに立つ第二団は、派手さを見せない。
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確実な方程式を持ち、緻密な戦略が戦場を圧倒的に凌駕する。
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そして三日月形上に切れた裂け目から光が溢れていた。
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