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しおりを挟む女神レプスの神殿のある山へ入る入口にある町は、山林の麓とあって山の幸が豊富だ。冬の間は民芸品などを作って生計を立てているらしく、可愛らしい玄関飾りや置物なども並んでいる。お土産に良さそうな、木彫りの女神像なんかも見かけた。
物珍しさに、莉奈は沈んでいた気持ちが浮上する。
異世界に来た心細さや、帰れないという不安はあれど、こうやって異国情緒あふれる町を見て回るのは、純粋に楽しい。
どうせ帰れないのなら、役目を終えたら自分もこんな風に生活してみたい。この町は女神の神殿のお膝元という加護があるのか、比較的瘴気の被害も少ないそうだ。そのため、町の人々にも笑顔が溢れ、活気がある。
最初はスマホも使えない世界で暇を持て余すのではと思ったけど、新しいことが新鮮に毎日飛び込んでくるので、そういう意味では目まぐるしい。
人間って電子機器がなくても生きていけるんだなぁ、なんて感慨深くなってしまう。スマホが無くなったら生きていけないって思ってたのに。
物珍しさにきょろきょろしていると、一軒のおしゃれな雑貨屋さんを見つけた。色々な雑貨は見ているだけで心が躍る。日本にいた頃も、友人と放課後寄り道して買いもしないのに眺めて楽しんだことを思い出す。
誘われるように店に入ると、本の紙とインクの匂いが鼻孔を擽る。よくよく見れば、ここはどうやらこの世界の雑貨兼文房具屋のようだった。
装飾の美しいガラスペンやインクペンなどが、並んでいる。文化として日本には及ばないが、まるきり中世ヨーロッパというわけでもないようで、インクが内蔵された万年筆と思われる物も揃っていた。
様々な商品を見ていく中で、莉奈は一つの本に目を止めた。そこそこ厚みはあるが、タイトルも背表紙もない。サイズ感は少し小さめで、その表紙は革で手触りが滑らかだ。この世界の本だろうか、と手に取ってぱらりとめくってから、理解する。
そこにあるのは真っ白な紙の束。書き込まれるのを待っているその温もりのある羊皮紙に、莉奈は何故か強く惹かれた。
あぁ、そうか。これ……日記帳だ
莉奈がそう理解した直後に、後ろに控えていたフィグルドが店主に声をかけた。
「……主人、これと……万年筆を一つ」
「はい、ありがとうございます」
莉奈は驚いてフィグルドを振り返る。莉奈はこの世界のお金など持っていない。つまり、プレゼントしてくれるということだろう。
フィグルドは読めない表情のまま、万年筆はどれにしますか?と莉奈に促した。
買ってもらうなんて申し訳ない。
そう思ったけれど、この世界での体験を綴ってみたいと感じた莉奈の想いを、彼は汲んでくれたことがわかる。
その気遣いに感謝しつつ、莉奈は金褐色の美しい色をした万年筆を指さしたのだった。
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