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14.調査
しおりを挟むその日、フィグルドの役割は町の治安の確認だった。ディーとノエスが浄化地点の調査、イサラがリナリアの身辺警護をし、街の規模からエカルラートと二手にわかれての治安確認。
この街はリム王国でも五本の指に入る程度には大きく、大勢の人が集まる。そういう街は残念ながら瘴気の汚染関係なく「悪事」を働く人間も引き寄せてしまう。
瘴気汚染とは別に、この世界に住む人間全てが清廉潔白というわけではない。そして、そういう輩は希少価値の高い「聖女」を攫おうとする。
彼らにとって聖女の価値は高値のつく商品でしかない。聖女が浄化を出来なければ世界が滅ぶという単純な現実さえ、理解が出来ない。
ただ、異世界から召喚された聖女という希少価値に値段をつけ、奴隷商人に売りさばくことしか考えていないような下衆の輩達だ。
聖騎士達は闇神フォグからだけでなくこういった危険からも、聖女を守るために存在している。もちろん、聖騎士の能力からいって瘴気相手より、人間相手の方が楽ではあるが、それでも油断は出来ない。
リナリアに、この世界の人々の悪意にさらされることで……失望されたくないからだ。
ひと通り担当区分の街の地形や建物の入り組み具合、治安の悪い場所と情報源などを調査し終わると、フィグルドも宿へ戻る。今回聖騎士は1つのコテージに二人で泊まっている。ノエスは身体が大きいので一人部屋だ。フィグルドはエカルラートと同室だったため、まだ彼が戻って来ていないことに気づく。時間からいって終わっているはずなので、進捗を尋ねようとしたその時、耳にまさにエカルラートから声が届いた。
「フィグちゃん!リナリアちゃんの部屋に来て~!」
ディーがよほど遠くまで行かない限り、聖騎士の仲間内は常に互いの声を意識すれば届けることができるようになっている。
……先に調査報告をしにこいとあれほど……
何故エカルラートがリナリアの部屋にいるのか、と思いながらも呼ばれたので向かう。扉をノックすると、エカルラートが「はーい」と返事をした。
お前の部屋じゃないだろう、と少々むっとしながら。
「失礼します」
律儀に断ってから扉を開けて……目に飛び込んできた光景に、フィグルドは思考と身体を停止させた。
「じゃーん!踊り子リナリアちゃん!」
そこには、異国情緒あふれる上下別れた淡い桃色の衣装を身に着けたリナリアが立っていた。肩と鎖骨と胸の谷間を見せた上衣の裾は短く、リナリアの細い腰と可愛い小さなおへそが丸見えだ。下半身を包むパンツは腰の位置で止まり、バルーンのようなふんわりとした形をしている。その腰回りには向こうが透ける刺繍入りの繊細なレース生地がスカートのように長く垂れている。
さらに、首と腰まわりにはこの国の特徴である煌びやかな装飾品がふんだんに付けられ、額には赤い宝石が一つ付いたティアラが輝いている。
(…………女神か?)
完全に思考停止して固まったフィグルドに、リナリアはおへそが見えているのが恥ずかしいのかお腹を両手でそっと隠した。
(今すぐその手を剥がして舐めたい……)
「ちょっとぉ!フィグちゃん感想!」
エカルラートの声に、一気に現実に引き戻される。
「あ、ああ……。よく似合っている……」
(この姿を、自分以外の男が見たかと思うと腹立たしいくらいには)
リナリアはフィグルドの言葉に、ちょっとだけ目を見開いた後、照れた顔ではにかんだ。
(今すぐ口づけしたい)
フィグルドの脳内が暴走しかけていることも知らず、エカルラートはご満悦顔で、衣装のポイントをつらつらと喋り続けているが、彼の耳には入ってこない。ただただ、リナリアの笑顔に心臓を掴まれながら、フィグルドは欠片ほど残った理性で口を開いた。
「で、エカルラート」
「それでね、この刺繍が~……」
テンション高く喋っていたエカルラートが、ぴたりと止まり、だらだらと冷や汗を流す。フィグルドの声音がいつも淡々としているところに、ひんやりとしたものが混ざったのを察知したからだ。
「調査は、どうした?」
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