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しおりを挟む「聖騎士は、神の加護を受けて聖騎士となった瞬間から、家族とは離れて暮らし、能力のコントロールを聖騎士団で寮生活しながら体得する。そのせいで家族とはどうしても疎遠になるんだ」
そして、フィグルドが家族と離れて寮に入ったのも八年前だと言う。
「え?!八年前っていったら、フィグルドさんは十五くらいでは?」
驚くリナリアに、そういえば必要性を感じないから、説明していなかったな、と今更ながら気づいた。改めて、フィグルドは聖騎士になった頃の話をする。
「聖騎士は大抵、神の加護を受けるのは十四、五だ。私……、俺は十五、エカルラートは十四だったから、彼とは同時期に聖騎士になったことになる」
「へぇ!確かに、フィグルドさんとエカルラートさんは、互いに気安い感じがします」
今まで感じていた印象の答え合わせのようで嬉しくて、リナリアがぱっと笑顔になる。今朝の顔色が最悪だっただけに、内心少しほっとしながらフィグルドは続けた。
「気安い……?かどうかはわからないが、確かに一番俺の考えを読んでくれてはいる」
なるほど、とリナリアは二人が同期である、と手記に書き込んだ。そうなってくると、他のメンバーはどういう感じなのだろう、と興味がわき出す。どうせなら、とついでに質問を重ねる。
「えっと、ディーさんとノエスさんとイサラさんは?」
「ディーは一番所属が長く、俺とエカルラートの教育係でもあった。ノエスも我々が入る頃にはいたが、教えるのは不得手だと言っていたな」
「……意外」
ノエスは優しそうだし、教えるのも上手そうなのに、と呟くと、フィグルドがすぐに答えをくれる。
「ノエスはああ見えて、見て覚えろっていう感覚派だからな。ディーは意外と理論派だ」
「……意外です……。でもなんとなくわかる気も?」
本日のお散歩で見せた茶目っ気たっぷりなノエスを脳内で思い出しながら、リナリアはこくりと頷いた。
「イサラは……少し特殊で。加護を受けたのが十六と少し遅かった。元々人見知りだったこともあって、なかなか訓練が上手くいかず……経験は一番浅い」
リム王国での失敗を、やけにイサラが気に病んでいた理由がここでわかり、リナリアはあとでいっぱい日頃のお礼を言おう、と心に誓った。
「なるほど……。その……フィグルドさんが団長になったのは?」
今の過去の話だと、フィグルドは初めから団長だったわけではないようだ。当たり前といえば当たり前なのに、団長ではないフィグルドが、もうリナリアには想像がつかない。
「俺が団長の任を賜ったのは、二十の時だから三年前か。前任者が引退したからだ。フォルティアーナ聖騎士団の団長は代々雷神ティガーの聖騎士が引き継ぐと決まっている」
「決まっている?」
どういう意味かわからず小首を傾げると、フィグルドはとんとん、と自身の右の首筋にある聖紋を示した。そこには聖騎士の証と同時に何の加護を受けているかもわかるようになっている。なので一概に聖紋といっても皆違う形をしている。
「特性のためだ。雷神ティガーは真実と光の神。闇神フォグとは対極にあり、最も嫌う属性持ちだからな」
真実と、光。他の神は属性を一つしか持たないが、雷神ティガーの聖騎士だけは二つ持つという。リナリアはなるほど、と頷いた。
「その……聖騎士ってなりたいと思ってなれるわけじゃないんですよね?」
「ああ、そうだな。ある日突然、自分の元へ神託が降りる」
自分の意思とは関係なく与えられる役目。自分と重なって、思わず尋ねる。
「……嫌じゃ、なかったですか?」
リナリアの問いかけに、フィグルドは思案するように顎に手をあてた。
「嫌かどうかを、考えたことはなかった。俺にとっては自然だったというか……。あぁ、でも、女性である君にはピンとこないかもしれないが、攻撃魔法が使えるということに浮かれてしまったことは覚えている」
少年らしく雷魔法をテンションあげて使うフィグルドの姿を想像して、なんだか微笑ましくなる。
何それ……十五歳のフィグルドさん、ちょっと可愛い……
ついつい関係ないのに手記にそのことも書き込んでしまう。リナリアがそんな想像をしているとは露ほども思わず、フィグルドは自分の考えをまとめるように目を細めた。
「それに、今は聖騎士に選ばれてよかったと心から思っている」
(君に、出会えた……)
付け足された言葉に、リナリアは手記から顔をあげるとじっと見つめられていることに気づいて、居心地が悪くなる。そわそわするような、逃げ出したくなるような。
これ……この目……いつもと変わらない表情なはずなのに、なんだか腰がもぞもぞしちゃうんだよなぁ……
緊張をほぐすために、唇を一度舐めてから、リナリアは最後の勇気を振り絞った。
「……えっと……じゃぁ、最後の質問です!結婚のご予定は?」
「ある」
即答されて、リナリアは息を飲んだ。
「……!!」
(君と)
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