男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎

文字の大きさ
10 / 18

9話

しおりを挟む



「魔道具を自分で決めたい?」
「えぇ!その方がこう、成功する確率が高い気がしますわ」

断られたら、どう切り返して丸めこもう、と握りこぶしで返すエレノアに、意外とあっさり、リアンは承諾をした。

 エレノアが喜色を満面に浮かべると、さっそく魔道具を選ぶために城下町へ出ようということになった。貴族や富裕層がよく訪れる魔道具屋へとお忍びで訪れる。初めて王女殿下がくるということで、店内は貸し切りになったようだ。

 リアンと店内へ足を踏み入れた瞬間、どこかから感嘆の声が漏れる。まぁ、それはそうだろう。リアンの容姿は本当に目を惹く。先日の抱きかかえられた時も、メイドはリアンと一言二言でも言葉を交わせただけで嬉しそうに頬を染めていた。

 中身はこんなに鬼畜なのに

周囲に訴えられないことが本当に悔しい。万一言おうものなら過去の自分の所業も芋づる式にバレてしまうのだ。リアンと争ったところで国に必要なのは自分より優秀なリアンだろう。つまり、体よく理由をつけて他国にでも嫁がされたらたまらない。

 エレノアとしては出来れば国内の適度な有力貴族と婚姻を結んで今まで通りダラダラと過ごしたいのだ。

 店の中は貴族や宮廷魔術師御用達ということで格式ある上品な佇まいだ。内装も床には絨毯が敷かれており、壁一面に商品を並べる棚は茶褐色のウォールナットで出来ている。店内は暖色系のオレンジの色で統一されており、上品な雰囲気だ。

 エレノアは思わず目を輝かせてきょろきょろと見回す。様々な魔道具が、綺麗に陳列されていた。

 なんだかんだ言いつつも、リアンに習うようになって魔道具へ興味がわき始めたのは事実だった。

 あれは何かしら。双眼鏡のようだけれど……。

じっと見つめていると、店主が笑顔で話しかけてくる。

「ようこそ、いらっしゃいました。尊きお方のご来訪を一同大変光栄に感じております」

ハッとしてエレノアは扇子で口元を隠す。視線だけリアンに送れば、彼は人当たりの良さそうな笑みを浮かべて店主に答える。

「この度は突然の申し入れ、ご快諾ありがとうございます」
「いえ、いえ、お得意様であるリアン様のお頼みでしたらいつでも!」

どうやら店主とは顔なじみのようだ。

「王女殿下、その双眼鏡は魔力を流すとあらかじめ決めた場所の様子をうかがうことが可能になります」
「……どういうこと?」

どうぞ、と手にとると、繊細な細工を施された小さめの双眼鏡を覗く。すると、そこには店内ではなく街の様子が映し出された。

「街が見えるわ!」

驚くエレノアに、店主は気をよくしたようで、声を弾ませて説明を続ける。

「こちらは、皆様が例えば遠出した折に、留守を任せている子供やペットを見守るために使用いたします。観られる場所は一箇所のみ。その場所の登録は魔道具省にて行いますので、覗きといったことには利用できませんのでご安心を」

なるほど、確かに自分が不在の時に家の中の様子を確認できるのはとても便利かもしれない。本当に魔道具とは人の生活に根付いているらしい。

 エレノアが世間知らずだと呆れたユリウスの言葉を思い出して、少々むっとするが、確かにこの事態を抜け出すために、苦手だった勉強をやり直したり、こうして街へ出かける機会が増えるのは良い傾向なのかもしれない。おかげで今まで気にしたことのなかった魔道具の話を聞くのを楽しいと感じる。

 エレノアは気になる魔道具の使い方を店主に一つ一つ聞いていく。リアンはその間後ろに控えて、口を出すことはない。本当にエレノアに選ばせてくれる気があるようだ。

「その……子供でも扱えるようなものはありまして?」
「えぇ、ございますとも」

店主はそう言うと、ある一角にまとまっているコーナーへエレノアを案内する。そこには少し先ほどまで見ていたものよりもカラフルな魔道具が並んでいる。子供心を掴むために明るい色を取り入れているのだろう。

「最近、人気があるのはこちらの玩具ですね」

そう言って店主が見せてきたのは、綺麗な透明の瓶。その中には、透けるような青い水が入っている。

 水が、玩具?と首を傾げるエレノアに、店主はふふふ、といたずらっ子のように笑い、瓶のふたを開けると、魔力を流し込む。すると水だった液体がゼリー状に変化し、ぐにょんと瓶から飛び出した。

「!」

驚くエレノアの目の前で、そのゼリーは形を変えて、伝説上の生物ユニコーンを象った。そのままくるくるとエレノアの周りを飛び回る。

「素敵……!」

可愛らしいユニコーンが光を受けてキラキラと輝きながら空中を飛ぶ様は、確かに子供たちの心を掴みそうだ。さらにユニコーンは形を変えて、今度はドラゴンになる。かと思えば可愛らしい兎になったり、とどうやら形は変幻自在のようだ。

 ワクワクさせるような仕掛けに、エレノアはすっかり夢中になって。子供用の魔道具だし、作りは単純で、危険もないだろうと判断した。

「マクガフィン卿、私、これがいいわ!」

まるで新しい玩具を前にしたような輝かんばかりの笑顔をエレノアが見せると、リアン以外のその場にいた全員がなんだか胸を押さえた気がするが、まぁ気のせいだろう。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男装令嬢、深い事情により夜だけ王弟殿下の恋人を演じさせられる

千堂みくま
恋愛
ある事情のため男として生きる伯爵令嬢ルルシェ。彼女の望みはただ一つ、父親の跡を継いで領主となること――だが何故か王弟であるイグニス王子に気に入られ、彼の側近として長いあいだ仕えてきた。 女嫌いの王子はなかなか結婚してくれず、彼の結婚を機に領地へ帰りたいルルシェはやきもきしている。しかし、ある日とうとう些細なことが切っ掛けとなり、イグニスに女だとバレてしまった。 王子は性別の秘密を守る代わりに「俺の女嫌いが治るように協力しろ」と持ちかけてきて、夜だけ彼の恋人を演じる事になったのだが……。 ○ニブい男装令嬢と不器用な王子が恋をする物語。○Rシーンには※印あり。 [男装令嬢は伯爵家を継ぎたい!]の改稿版です。 ムーンライトでも公開中。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

女性執事は公爵に一夜の思い出を希う

石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。 けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。 それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。 本編4話、結婚式編10話です。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~

如月あこ
恋愛
 宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。  ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。  懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。  メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。    騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)  ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。 ※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

処理中です...