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12話
しおりを挟むエレノアだって気づいていた。リアンがそういう遊びを嫌がっていたこと。だけど、嫌がる顔も可愛いと思ってしまったのだ。
リアンであれば、どんな表情でも、見たいと思った。
あれは……歪んだ執着を覚えてしまった
確かにエレノアにとっての「初恋」だった――――……
そういえば、リアンと遊んだ最後の日はどうしたんだったか……。夢の中で遠い記憶がゆっくりと水面に浮かぶように思い出される。
魔術学院は全寮制だ。きちんと男の子の恰好をしたリアンに、会いにこられなくなると告げられて、それが嫌で、大泣きに泣いた。リアンは困った顔をしながらずっと傍にいてくれて。
そして……。最後にもう一度リアンのあれを触りたいとお願いした。
『それは……。いい、姫様、女の子が男の子のものを触りたいなんて言ったらダメだよ』
『どうして?誰でもいいわけじゃないわ。リアンだから触りたいの。リアンが気持ち良さそうな顔を見たいの』
必死で懇願するエレノアに、結局根負けするのはいつもリアンの方だった。リアンは複雑な顔をしながら、しぶしぶ触れることを許してくれた。いつもは女の子の恰好でスカートに隠れているそれを、そおっと掴み、やわやわと揉むと少しずつ硬さが出て大きくなってくる。
ちらり、とリアンの顔を見れば、頬を紅潮させて、息を詰めている。
あぁ、安心する。こうしている間は、自分はこの距離を許されているのだ、と。多分あの時、エレノアはリアンの特別になりたかったのだ。
そうして、最後、リアンはエレノアの手によって精通した。
目が覚めて、エレノアは絶望の中にいた。
いや、もうリアン少年のプライドをズタズタにした女である己がどの面下げて彼に教えを乞うているのか。
ぽすり、と枕に顔を埋める。
「死んでしまいたい……」
どうして思い出してしまったのだ。ずっと忘れていたかった。
何で自分が彼にここまで恨まれているのかわかったつもりでいたが、わかっていなかった。
うん……傷つくよね……トラウマものよね……
復讐したくなるよね……
こんなひどい女の講師なんて、よく引き受けてくれたものだ。いや、引き受けたのは復讐のためだった。
やっぱりきちんと一度、真摯にリアンに謝ろう。許してもらえないかもしれないけど、彼の輝かしい人生の汚点を作ってしまった罪を償おう。
そうして、大人しく他国へ嫁ごう。きっとリアンは、私の顔なんて本当は見たくないに違いないのだから……。
そうエレノアが決心したけれど、しばらくの間、リアンと顔を合わせる機会がこなかった。大きな功績を残したリアンは、事後処理と、叙勲と、叙爵で忙しくしていたようだった。
そうして最後、国民へのアピールを兼ねた勲章授与式を行うことになった。
「私が……?リアンへ勲章を……?」
「そうそう。ま、式典に出てあいつの胸に勲章付けてあげればいいから。エレノアも十八になったことだし、お披露目かねてね」
難しいことじゃないだろ、と言いながら朝一で自分を訪ねてきたユリウスが紅茶を優雅に飲んでいる。
「お……お断りします」
「……まだ外は怖い?」
ユリウスが心配そうに尋ねてくる。なんだかんだ言いながらも、やっぱりユリウスも自分には甘い。本当は、外が怖いというよりも、リアンの人生の汚点に、これ以上なりたくないからだ。
頷くと、ユリウスは小さくため息をつきつつも、わかった、と言ってくれた。ほっと胸を撫でおろし、それから真っすぐにユリウスを見つめる。
「お兄様、お願いがございます」
いつにない、妹の真剣な表情に、ユリウスも姿勢を正した。
「私――――…」
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